秘密の扉2話
目次
あらすじ 御井の遺体(オジョンのいたい)
夜。図画署(トファソ)の画員(ファウォン)ホ・ジョンウンは大臣と会いました。
「お待ちしておりました。」
ホ・ジョンウンは赤い朝服を来た大臣に言いました。
王宮ではイ・ソン(のちに荘献世子、思悼世子サドセジャとして追尊される)と官僚たちが英祖イ・グムに席藁待罪(ソッコテジェ)をしていました。
「譲位をどうかお考え直しください。」
イ・ソンは白衣姿で筵の上に座り王のいる寝殿に向かって言いました。多数の官僚たちは等間隔に直接石畳の上に正座し声を揃えました。ホン・ボンハンは石に頭を打ち付け血を流し気を失いました。
王の部屋。
「脳震盪?」
英祖イ・グムは寝巻き姿で起き上がり内官キム・ソンイクに聞き返しました。
「ホンジョは何度も気を失っております。」
大殿内官キム・ソンイクは答えました。
「ならば内医院(ネイウォン)に運ぶべきだろう。」
「府院君大監(プウォングンテガム、王と世子の妃の父の尊称)は固辞しており・・・。」
「固辞とは?」
「つまり譲位を撤回なさるまで死も覚悟で訴えると言い続けております。」
王宮内の部屋。
「三時辰(じしん)・・・。我らの気の毒な邸下(チョハ、世子様)のために三時辰までにどうしても決着を付けたかったがかなわなかった。四時辰をとうに超えてしまった。アイゴー。ふう・・・。」
世子嬪(セジャビン)の父世子の義父で老論(ノロン)のホン・ボンハンは布団に仰向けになり頭を布で抑えながらつぶやきました。
世子のイ・ソンは義父を介抱していました。
王の謁見の間。
龍袍(ヨンポ、赤に金の刺繍の王の衣)に着替えた英祖イ・グムは王座に斜めに腰掛け世子イ・ソンを会っていました。イ・グム(英祖)は酒を片手にこう言いました。
「まったく。どうせ頭から血を流すならもっと早くにやればいいものを。そうしたら二時辰で決着がついた。お前が意地を張ったせいで義父がとんだ災難を被ってしまったのだ。」
「民間の出版を許可し貸本の規制を解くのが過ちなのですか?」
世子イ・ソンは父に言いました。
「過ちだ。」
「苦しい生活をしている民のささやかな慰みに好きな本を読むことがどうして罪なのでしょうか。」
イ・ソンが言うとイ・グム(英祖)は王座から降りると世子の前にしゃがみました。
「ソンや。これは民に本を与える与えないの問題ではないのだ。四百年にわたる民の統制が崩れ民が自由に意見を述べるようになる。」
「それがなぜいけないのでしょうか。」
「民が次々と不満をぶつけてくるからだ。民というものはあることないことすぐに信じる。扇動され王室を倒そうとするやもしれぬ。そうなったらお前の力で収集できるのか?」
「悪くお考えではないですか。」
「それが現実だ。」
「不満を公の場で議論し解決する道もあります。王室と朝廷が寛大になれば・・・。」
「ひよっこが何を抜かすか!私が王座をかけて阻止せねば臣下はお前を脅すため登庁を拒んだだろう!臣下すら統率できぬ奴がどうやって民を導くというのだ!志を貫きたければまずは力を付けろ。臣下はもちろん私を上回る力をな!私の国朝鮮の民どもに言路を開くのはそれからでもよいだろう。」
イ・グム(英祖)は息子に怒鳴りました。
都城(トソン)の夜道。
図画署(トファソ)の画員のシン・フンボクは夜道を急いでいました。
「今夜水標(スピョ)橋(ソウルを流れる清渓川・チョンゲチョンにかかる橋)で本を借りてから王宮へ行きます。命運(ミョンウン)を左右する大切な話があるので。眠らずにお待ち下さい。」
世子の部屋。
イ・ソンはシン・フンボクの手紙を読みました。
「なんとおっしゃられたのですか?」
世子付きの内官のチャン・ホンギは世子イ・ソンに言いました。
「命運を左右する大切な話だと。」
「命運を左右する話といいますと?」
「フンボクの奴め。大げさな。私が頼み込んだこととはいえ確約を取るだけなのに何が命運だ。」
イ・ソンはチャン・ホンギを見て言いました。
「確約ですと?」
「会うことにした。本を読んで文才に惚れたから私が頼み込んだのだ。著者に会いたいと。」
「著者というと・・・氷愛居士(ピエゴサ)ですか?」
チャン・ホンギは目を丸くしました。
イ・ソンははにかみました。
書家(ソガ)貸本の地下工房。
「広通(クァントン)橋のキム家へは?」
ソ・ジダムの父ソ・ギュンは忙しそうに帳面に記録しながら言いました。
「ああ私だ。」
「よろしく頼む。」
「必ず貸本札を確認して。新規の客には貸札を渡しといて。」
チダムは従業員に言いました。
「ああ。わかった。」
従業員の男はハングル文字で書かれた木の札を受け取りました。
「さあ。本を届けに行こうか。」
祖・ギュンは皆に言いました。
「イエー(はーい)。」
「カヂャ(行こう)。」
皆は立ち上がりました。
世子の部屋。
「名前からして絶対女ですよぉ。氷愛(ピエ)という名の男などいません。」
内官のチャン・ホンギは世子に言いました。
「目くらましだろう。作中で主人公のグァンムンが人の目を欺くのと同じだ。」
「女ではないならなぜ会いたいと思うのですか?」
「殺人がまた殺人を生む。」
「え?」
「『文会所(ムネソ)殺人事(サリンサ)件』の序文だ。」
「序文はよさそうですが世子様。」
「身分の低い芸人が主人公なのも気に入った。著者はきっと、才能はあっても身分が低く思いを実現できぬ立場にある。」
世子は嬉しそうに両手を広げ語りました。
「そうですか。」
「私は機会を与えたいのだ。」
夜の水標(スピョ)橋。
シン・フンボクは小さな橋の真ん中に立つと何かに驚き本の包みを落としました。
ソ・ジダムは橋の付近を歩いていると、橋から人が落ち黒ずくめの男が立ち去るのを見てしまいました。
「まさか・・・・・・。」
チダムは手持ちの真鍮製の小さな明かりに火付け石で火を付け橋の下で死んでいるシン・フンボクを検べました。
「まさか・・・頚椎をおられて死んだ?」
チダムは役所に通報しました。すぐに武官と兵士がチダムの道案内により出動しました。
「殺人?殺人といったか。遺体の身元は?」
「図画署(トファソ)のシン・フンボクです。」
何者かが橋の上に落ちていた黄色い包みを持ち去りました。
「殺人といったな。ならば遺体はどこだ?」
青い服の従事官(チョンサグァン)ピョン・ジョンインはチダムに問いました。
「あれ・・・さっきまで・・・ここに倒れていたのに。」
チダムは怪訝に思いました。
「おい。遺留品はあるか?」
「何もありません。」
「なぜあるべき遺体がないのだ。」
従事官ピョン・ジョンインは言いました。
事件当日の日中。
「今夜、通報が入ったら水標橋に行き遺体を回収し転落死で処理するのだ。」
町人風の黒の服を着た男は従事官ピョン・ジョンインに言いました。
「ネイニョン!嘘をついたな!またでたらめを言ったら命はないと思え!」
従事官ピョン・ジョンインはチダムに怒鳴りました。
懿陵(ウィルン)、先王、景宗(キョンジョン)の王墓。
英祖イ・グムは祭事の黒の服に着替えた重臣らを連れて歩いていました。
「手水(チョウズ)を。心身を清めて亡き兄上を悼みたいのだ。」
イ・グム(英祖)は後ろを付いて来ている内官キム・ソンイクに命じました。
大殿内官キム・ソンイクは命じると部下の内官は井戸水を引き上げようとしましたが重くて桶が上がりませんでした。
「父上。御井に問題があるようです。」
世子イ・ソンはイ・グム(英祖)に言いました。数人の武官が井戸水の縄を引っ張ると青ざめたシン・フンボクが逆さまに引っ張り上げられました。
「なぜあの者が?」
内官のチャン・ホンギはうっかり声を出してしまいました。
「どうした?早く答えぬか。」
大殿内官はチャン・ホンギに命じました。
「はい。あの者は・・・睿真画師(イェジンファサ、世子の肖像画を描く画員)です。」
チャン・ホンギは答えました。
イ・グム(英祖)は口を半開きにしてシン・フンボクを見て唇を震わせ後ろに並んでいる重臣をきつく睨みました。
「あ~れ~どうして御井に睿真画師が?」
イ・グム(英祖)の視線を感じて察した右議政のキム・サンノはとぼけたように発言しました。
「あってはならぬこと。」
少論派の首領で左議政イ・ジョンソンは静かに言いました。
「信じられん。」
「とんでもないことだ。」
重臣らは口々に言いました。
「いけません。邸下。近づいてはなりません。」
内官のチャン・ホンギはシン・フンボクに近寄ろうとしている世子に言いました。
「殺されたいのか!殺されたいのかと言ったのだ!」
イ・グム(英祖)は世子イ・ソンに怒鳴ると剣を抜き矛先を重臣らに向けました。
「なぜ突っ立っておる。早く捕まえろ。兄上の墓でとんでもない無礼を働いたのだぞ。王室を侮辱したのはどこのどいつだ!犯人を見つけて処罰しろ。さもなくば許さんぞ。あの兄上の墓に誓って言う。お前らの身体を八つ裂きにして墓の隅に、埋めてやるからな。」
イ・グム(英祖)は言いましたが左議政イ・ジョンソンは表情を変えませんでした。
シン・フンボクの遺体は速やかに役所へ運ばれました。
捕盗庁(ポドチョン)。
「シン・フンボク?なぜ奴の遺体が懿陵(ウィルン)に?」
先日の従事官ピョン・ジョンインが仲間に言いました。
図画署(トファソ)。
「懿陵(ウィルン)の御井(オジョン)から遺体が見つかったんですか?」
ソ・ジダムは驚きました。
「そう言っただろ。」
画員のホ・ジョンウンはチダムに言うと行ってしまいました。
「変ね。水標(スピョ)橋で死んだのにどうして?」
「水標(スピョ)橋?どうしてあんたが水標(スピョ)橋を?」
ホ・ジョンウンは振り返りチダムに言いました。
「水標(スピョ)橋に行った理由はご存知ですか?本を借りる以外の理由が?何か教えてください。」
チダムは好奇心が抑えられませんでした。
「知らないよ。左捕盗庁(チャポドチョン、略してチャポチョン)へ行って聞け。私は無関係だ。」
ホ・ジョンウンは立ち去りました。
左捕盗庁。
「遺体をよそへ移送するかもしれん。」
「うちで捜査するのでは?」
従事官ピョン・ジョンインは捕盗大将のホン・ゲヒに言いました。
「ここは懿陵(ウィルン)に近いから一時的に安置しただけだ。捜査は義禁府(ウィグムブ、発音はウィグンブ)がする。」
ホン・ゲヒは部下に答えました。
「義禁府(ウィグムブ)と言えば謀反と断定を?」
「犯行場所が王陵だからな。」
王宮の王の謁見の間。
「燃やしてしまえ!死んだのはあの画員だと?」
イ・グムは上着を脱ぎ捨てました。
「そうでございます。」
大殿内官キム・ソンイクは答えました。
シン・フンボク遺体発見8時間前の午前3時。
老論派の首領で領議政キム・テクは私邸の庭で客を待っていました。
「ようこそ。会いたいと申しましたのに私のために殿下はご足労を。」
両班の服を着たイ・グムはキム・テクに笑顔を見せました。
「旧友に呼ばれたら駆け付けねばならぬからな。」
イ・グムは言いました。
「私めは・・・ただの旧友(チング)ですか?」
「ふ・・・ふふふふふふ。」
しばらくしてイ・グム(英祖)は書状を手に持ち怒りで震えていました。
大一統猛毅(テイルトンメンイ、日本語で大一統会盟と訳)の連判状。
「不安ですか?」
キム・テクは王に言いました。
「当たり前だろう。」
イ・グム(英祖)は顔を歪めました。
「お忘れですか?殿下に王位を譲ったのはこの私です。連判状は動かぬ証拠です。」
「贈ったものなら、揺るがすのもわけないな。」
イ・グム(英祖)は苦笑しました。
「私が王位を揺るがすとでも・・・。」
イ・テクは言いかけるとイ・グム(英祖)は連判状を投げつけました。
「王位をゆるがせば、この国が揺らぐぞ。」
イ・グム(英祖)は皮肉を言うと立ち上がり帰ろうとしました。
「この国を案ずる心は私も殿下に勝ると劣りません。」
「何が言いたいのだ。」
「国を揺さぶるのは私めではないのです。私に連判状を渡した者が姿を消しました。」
「ふっ・・・姿を消した?隠れんぼか?それで、誰から連判状を渡されたのだ?一体誰がこんな大事な物を・・・。」
イ・グム(英祖)は笑いました。
「睿真画師(イェジンファサ)シン・フンボクです。世子様の睿真画を描く画員。背後に誰がついてると思いますか?」
王宮。
イ・グム(英祖)は謁見の間に帰ると真鍮銅器に入れられたやかんの水で口を濯ぎたらいの水で手を洗い耳をほじくりました。
「連判状を知っている者が、もかにもるのだ!でなければなぜ懿陵に?なぜ兄上の墓にいまわしい死体があったのだ!殺してやる。許さん。王である私の弱みを握りけしかけるのか!」
イ・グム(英祖)は傍で控えている大殿内官キム・ソンイクに厳しく言うと水桶をひっくり返しました。
左捕盗庁の検死室。
世子イ・ソンはシン・スンボクの遺体と対面して衝撃を受けました。
「誰だ。お前を、殺したのは・・・。フンボクは姿勢社だ。父王(プワン)と王室(ワンシル)を侮辱し世子(クッポン、国本)である私を苦しめるために、見せしめにされた。・・・。私が傍に置いたからだ。友として親しくしなどしかったら・・・。死は・・・免れたのに。だが今はお前のために涙を流せない。世子の役目を果たしたら友として会いに来る。その時は・・・私の手で・・・墓に・・・酒を供えてやろう。」
イ・ソンは苦しそうに言うと内官のチャン・ホンギも世子に同情しました。
「邸下・・・。」
捕盗庁の前。
「シン・フンボクの遺体があったの?」
ソ・ジダムは先日の従事官ピョン・ジョンインに言いました。
「娘がなぜそれを?」
武官はチダムに言いました。
「図画署(トファソ)で聞きました。なぜ遺体が御井(オジョン)に?」
「そうだ。調べればわかることだ。」
「左捕庁(チャポチョン)で捜査を?」
「まだ決まってない。証言が必要なら呼ぶから名前を教えてくれ。」
「広通(クァントン)橋で氷愛(ピンエ)と言えばわかります。」
ソ・ジダムは言って去ると木陰に隠れていた黒ずくめの男は武官と目配せをしました。
王宮の少論派(ソロンハ)の会議室。
漢城府(ハンソンブ)判尹(パニュン)で少論(ソロン)のチョ・ジェホは宮中の執務室で仲間と話し合っていました。
「犯人は誰だろうか。」
「今注目すべきは犯人ではなく、遺体があった場所です。無念の死を遂げた景宗大王(キョンジョンテワン)の墓ですよ。」
若くして大司諌(テサグァン)のシン・チウンは言いました。
宮中の老論派の会議室。
「一体誰が遺体を御井(オジョン)に投げ入れたのか。」
領議政キム・テクも考えていました。
「捜査権は我ら老論にあります。早速調べましょう。」
右議政のキム・サンノは言いました。
「連判状の存在が露見するおそれがあります。」
副提学(プジェハク)のミン・ベクサンは言いました。
少論派(ソロンハ)の会議室。
「先手を撃ちましょう。環翠亭(ファンチジョン、景宗が死んだ場所)でのことを世子邸下に申し上げましょう。」
シン・チウンは言いました。
「わざわざ言うことはない。今は犯人捜しが先です。我々がすべきなのは事件の真相が隠されるのを防ぐことです。」
右参賛(ウチャムチャン)で世子師のパク・ムンスは言いました。
王宮の一室。
「伏せろ?自殺で処理を?こんな重大な事件を?」
キム・テクの配下の大臣ホン・ボンハンは聞き返しました。
「無理だと?」
キム・テクは髭を撫でました。
「死んだのは睿真画師(イェジンファサ)です。世子邸下が信じるはずがありません。」
ホン・ボンハンは答えました。
「ならばその手で世子様(クッポン、国本)の命を奪え。」
「邸下に対し不忠ですぞ!」
ホン・ボンハンは机を叩いて立ち上がりました。
「そなたが忠義を語るとは驚いた。だが忠誠を尽くす相手を間違えてるぞ。本当に尽くすべきは誰か忘れたのか。王陵の墓守だったそなたを世子の義父にしたのは老論(ノロン)だ。切り捨てることも簡単だ。嘘だと思うか?」
「いいえ大監。」
「ならば言うとおりにしろ。逆らったら・・・その手で婿の命を奪うことになる。」
キム・テクはホン・ボンハンの手の甲をさすりました。
図画署(トファソ)。
画員のホ・ジョンウンは「甲戌(こうじゅつ)年畫(画)帳申興福(シンフンボク)」と書かれた本を手に持ちました。本を開くと人のスケッチと文字が書かれていました。
世子と重臣の会議室。
「懿陵(ウィルン)での事件をどう解決に導いていくのか見解を聞きたい。」
世子イ・ソンは重臣らに問いました。
「我ら義禁府(ウィグムブ)で捜査を始めさせ・・・。」
ホン・ボンハンは発言しかけました。
「なりません。捜査は我々漢城府で行います。」
少論(ソロン)のチョ・ジェホは言いました。
「漢城府で謀反の捜査などはもってのほかです。」
ホン・ボンハンは甲高い声を出して抗議しました。
「まずは殺人として捜査を。謀反と断定して無実の者が犠牲になったら大監は責任を取れるのですか?」
チェ・ジェホは正論を言いました。
王の謁見の間。
「老論(ノロン)と少論(ソロン)が捜査権で争っている?」
イ・グム(英祖)は大殿内官キム・ソンイクに尋ねました。
「はい(イェ)。」
「はっはっはっはっはっは。」
世子と重臣の会議室。
「義禁府(ウィグムブ)です!」
ホン・バンボンは人差し指を立てて主張しました。
「漢城府で捜査をします!」
チェ・ジェホも大きな声で言いました。
「謀反は義禁府(ウィグムブ)の管轄だと何度言ったらわかるのですか!」
右議政のキム・サンノも大きな声でゆっくり言いました。
「懿陵(ウィルン)が汚されたのは遺憾ですが謀反と断定する根拠はありません。」
左議政のイ・ジョンソンは言いました。
「そのような言動を大監は慎まないと逆心(ヨクシン)を疑われますぞ。」
右議政のキム・サンノは言いました。
「逆臣ですと?」
イ・ジョンソンは不快になりました。
「不利になると逆心を疑う癖は党か家柄のせいですか?」
大司諌(テサグァン)のシン・チウンはイ・ジョンソンを口撃しました。
「ネイノン!家柄を悪く言うとはけしからん!」
キム・サンノは怒りました。
「口を慎め!恥をしるがよい!老論派は何を隠しているのだ!」
少論(ソロン)のチョ・ジェホも怒鳴りました。
「隠すだと?とんだ言いがかりだ!」
ホン・バンボンは自分の前に置かれている経卓を叩きました。
「やめよ!」
世子イ・ソンは声を張り上げて立ち上がりました。
「私の目には、お前たち皆が逆徒に見える。今この場で最も重要なことは、民が不審な死を遂げたということだ。その真実に目を向けずに主導権を取ることしか考えていない。そなたたちこそが逆徒と言えるのではないか!」
世子は肩で息をしました。
世子は部屋を出て行くと老論派と少論(ソロン)派は睨み合いました。
屋外の緑茂る大木の下。
イ・グム(英祖)とイ・ソンは弓矢を射って遊んでいました。イ・ソンは十本以上矢を射ましたが、的の動物の鹿の顔には一本も当たりませんでした。
「だめだ。だめだ。だめだ。なんと情けない。無様にも程がある。私の目が悪くなったのか?命中した矢が一本も見えんぞ。雑念があるのか。」
イ・グム(英祖)はイ・ソンに言いました。
「腹立たしいのです。民が死んでも臣下は党利を追い求めるばかりです。」
イ・ソンは父に言いました。
「どうしようもない奴らだ。私が即位してから三十年間。党争はするなと言い続けたがこのざまだ。朝廷が分裂すればこの国の将来が危うい。」
イ・グム(英祖)は弓を手に取り弦を引っ張りました。
「腹立たしいのも、もっともだ。」
イ・グム(英祖)は矢を一本選びました。東宮殿の宮女で世子を育ててきたチェ尚宮はちらりと王と世子の姿を見上げました。
「だがいくら心乱しても、表に出してはいかん。」
イ・グム(英祖)は真剣に弓を射ると鹿の図の眉間に矢が刺さりました。
「王子だからな。」
「父上もそうして生きてこられたのですか?本心を隠してきたのですか?寂しく、なかったのですか?」
「お前が私の心をわかってくれるだけで十分だ。込み入った問題を前にしたら原則に立ち返るがいい。謀反の捜査は義禁府(ウィグムブ)の管轄だ。もっとも御井(オジョン)を汚す行為は王室への侮辱だ。ならば王家の人間が指揮を執るのが筋であろう。お前の義父で義禁府(ウィグムブ)判事(パンサ)のホン・ボンハンが適任だ。そう思わぬか?どうして黙っている。」
「肝に、銘じておきます。父上。」
「ああ。」
イ・グム(英祖)はイ・ソンの肩に手を置いて頷きました。
王宮の一角の庭。
「自殺で処理するにしても事件の全容はつかむべきです。」
恵慶(ヘギョン)宮ホン氏(世子嬪)は父に言いました。
「そのとおりです。領相(ヨンサン、領議政)キム・テクがうやむやにした理由を、探っておかねば。」
ホン・バンボンは答えました。
「大殿の主(王)までもが義禁府(ウィグムブ)で捜査せよと邸下に促したとか。考えてみれば事件には大きな秘密が隠されています。」
「その秘密というのは・・・。」
「大殿と領相大監(ヨンサンテガム)の致命的な弱みでしょう。その弱みをつかんで次期国王の信頼を獲れば我らホン氏一族が最大勢力となるのです。」
「今日は妙な日だ。私の慕っている方が、呼ばずとも二人も訪ねてくれた。父王(プワン)は義禁府(ウィグムブ)での捜査が妥当だとおっしゃった。もっともな理由を並べておられたが、つまりは老論(ノロン)に味方せよということだ。」
イ・ソンは師匠のパク・ムンスに言いました。
「誠に遺憾なことです。」
「先生(サブ)の望みは何ですか?捜査権を少論(ソロン)に渡せと?」
「邸下には失望しました。私が教えは、その程度のものでしたか?」
老論(ノロン)の会議室。
「大監。大監。」
ミン・ベクサンが焦りながら部屋に入ってきました。
「どうしたのだ。」
領議政のキム・テクは言いました。
「邸下が義禁府(ウィグムブ)に捜査させないと。」
「何だと?」
世子と重臣の会議室。
「特別検死ですか?」
捕盗大将のホン・ゲヒは世子に謁見していました。
「この事件は中立な人物が担当すべきと考えた。」
「それが私を選ばれた理由ですか?」
「それだけではない。そなたが捕盗大将(ポドテジャン)になって検挙率が二倍になった。見事な捜査がそなたを起用した理由だ。」
「誰に対しても容赦しない私の頑固な性格が、その結果を導いたとご存知ですか。」
「聖域を作らないという意味か。」
「了承いただけないなら辞退いたします。」
「捕盗大将(ポドテジャン)を信じよう。」
「私めではなく証拠と結果をお信じください。」
「捕盗大将(ポドテジャン)ホン・ゲヒを推した理由は何ですか?」
弘文館修撰で南人派のチェ・ジェゴンは少論(ソロン)のパク・ムンスに言いました。
「不偏不党だからだ。裏表なく中立な男だ。ホン・ゲヒが赴任した地では不正が一掃された。取り締まりが厳しく秩序が見事に保たれていたのだ。」
パク・ムンスは書物を立ち読みしながら言いました。
老論派の会議室。
「パク・ムンスめ。もしやあやつが遺体を御井(オジョン)に・・・。」
キム・テクは両手の拳に自分の頬を乗せて呟きました。右議政キム・サンノとミン・ベクサンは顔を見合わせました。
左捕盗庁に特別検験都監(特別検視所)が設置されました。検死内医院(ネイウォン)が担当しました。
「どう見ても私の出番ね。左捕庁(チャポチョン)に行かなければ。」
ソ・ジダムは御触れを見て思いました。チダムを黒ずくめの男が見張っていました。
シン・フンボクの遺体が検視されました。
「始めてくれ。」
ホン・ゲヒは内医院(ネイウォン)の御医(オイ)ヤン・スンマンに言いました。
「肺に水がない。」
ヤン・スンマンは金属の棒を肺に刺して水が出てこないことに気が付きました。
「溺死ではないのか?」
左捕盗庁の従事官のミン・ウソプは御医に言いました。
「そうなのだ。」
御医は答えました。
「御井(オジョン)で発見されたのに溺死ではない。」
ミン・ウソプはシン・フンボクの死に疑念を抱きました。
都城の町。
ソ・ジダムは数人の男に後をつけられていることに気が付き逃げました。六人の男たちがチダムを袋小路に追い込みました。
「女一人に男が大勢で情けないわね!かかってこい!ぶっ殺す!かかって来い!」
チダムは木の棒を構えて言いました。
「生意気な小娘め!」
男は腹を立てましたが両班風の男、剣契東方(コムゲトンバン)の頭目ナ・チョルチュが現れチダムを助けました。男たちは倒され逃げていきました。
「正体を確かめないと!」
「心配ない。記念品を頂いている。」
夜の剣契東方(コムゲトンバン)の砦。
チダムは砦に連れて行かれました。
剣契西方(コムゲソバン)の砦。
「ナ・チョルチュ?東方の?なぜ奴が現れた。あの女はナ・チョルチュの女?」
剣契西方(コムゲソバン)の頭目カン・ピルジェは部下から報告を受けました。
剣契東方(コムゲトンバン)の砦。
「剣契西方(コムゲソバン)の?」
ソ・ジダムはナ・チョルチュに夜食を食べさせて貰いながら敵方の身分証を手に取りました。
「ああ。最近、何やってるんdな?何か知らんが手を引け。」
ナ・チョルチュはチダムに言いました。
「私の勝手よ。」
「これ以上深入りすると危ない。」
「私は、シン・フンボクの最期の目撃者だから私の出番なのよ。」
「西方は都城最大の剣契(コムゲ)だ。西方(ソバン)も関わっているならお前の命が危ない。」
「捜査って危ないものでしょ。じゃあね。」
シン・フンボクの実家。
「お兄さまが往ってしまわれたことを聞いて気を失いました。」
シン・フンボクの妹は訪ねてきた世子に言いました。シン・フンボクの母は床に伏していました。
「ああ。私の考えが浅はかだった。フンボクはお母さんのことに心を痛めていたのに何の配慮もしてやれなかった。しばらくは女官に世話をさせる。医師もつかわそう。」
チェ尚宮は煎じ薬を作りながら世子の様子を伺っていました。
「あの。犯人が見つからなければお兄さまは逆賊になるのですか?」
「犯人は捕まえる。信頼できる者に捜査を任せた。それゆえお兄さんが逆賊になる心配はない。」
世子が言う様子を東宮殿の別監カン・ピルチェは見守っていました。
王の部屋。
「これは何ですか?」
キム・テクはイ・グム(英祖)に言いました。
「役に立つだろう持っていけ。」
キム・テクの家。
キム・テクはミン・ベクサンとともに王からもらった書状を見ていました。
「壬戌年三月二日(英祖(ヨンジョ)18年1742年)。五月六日。癸亥年(英祖(ヨンジョ)19年)七月二十六日か。」
「それは何ですか?」
「これは最後の切り札だ。」
左捕盗庁。
「終わったか?」
シン・フンボクの検視が終わりました。
「検案書です。」
御医はホン・ゲヒに検案書を渡しました。
「溺死ではなく頚椎骨折。首の骨が折れただと?ならば・・・。」
「自殺です。」
「御医が何を言う。これは明らかな他殺だ。」
「壬戌年三月二日。五月六日。癸亥年七月二十六日です。覚えていないのですか。」
「一体、何のつもりだ。」
「領相(ヨンサン、領議政)の捜査方針文です。」
御医は懐から手紙を取り出しました。
ホン・ゲヒは机の上に検案書を置き、捜査方針文を読むと焦りました。
ソ・ジダムは茶母に扮して左捕盗庁に入りました。
「急用なので必ずミン従事官様に渡すようにと言われました。私はこでで失礼いたします。」
チダムは手紙をミン・ウソプに渡しました。
「待て。お前は、何者だ。茶母にしては見慣れない顔だな。」
「昨日、配属されたばかりなんです。」
「新人か。」
「はい。」
「名は?」
「え?」
「名は何と申す。」
「ソ・チダムです(字幕ではジダムでしたがソ・チダムと発音していました)。」
「わかった。下がれ。」
「あ~いくら慌てたからって本名を教えちゃダメだったのに。」
チダムは自分の頭をこつきました。
ミン・ウソプはホン・ゲヒに匿名の手紙を渡しました。
「自殺ではないだと?」
「匿名の情報です。」
「一体、どういうことだ。」
ホン・ゲヒは長い文書を読みました。
「事実なら水標橋で殺され御井(オジョン)に投げ込まれたことになります。つまり溺死ではありません。この者も死因は頚椎骨折と推定しています。」
「わかった。検討しよう。」
「この者に会えば捜査が・・・。」
ミン・ウソプは乗り気で話しましたが言葉を遮られました。
「わかったから下がれ!」
ホン・ゲヒは怒鳴りました。
ホン・ゲヒの執務室を出たミン従事官は訝りました。
ホン・ゲヒは御医の「捕盗大将(ポドテジャン)の身のためです」という言葉とミン従事官の報告を思い出し天秤にかけていました。ホン・ゲヒは捜査方針文を燃やしました。
世子と重臣の会議室。
ホン・ゲヒは世子に謁見しシン・フンボクの死についての報告文書を渡しました。報告書にはシン・フンボクが王を侮辱するために御井(オジョン)に身を投げたと書かれていました。
「自殺だと?本当にシン・フンボクは自殺したのか?」
「そうでございます。」
ホン・ゲヒは答えました。少論(ソロン)の重臣たちは顔を見合わせました。
王の執務室。
「ホン・ゲヒか。使える奴だ。」
イ・グム(英祖)は呟きました。
「名前からして絶対女ですよぉ。氷愛(ピエ)という名の男などいません。」
内官のチャン・ホンギは世子に言いました。
「目くらましだろう。作中で主人公のグァンムンが人の目を欺くのと同じだ。」
「女ではないならなぜ会いたいと思うのですか?」
「殺人がまた殺人を生む。」
「え?」
「『文会所(ムネソ)殺人事(サリンサ)件』の序文だ。」
「序文はよさそうですが世子様。」
「身分の低い芸人が主人公なのも気に入った。著者はきっと、才能はあっても身分が低く思いを実現できぬ立場にある。」
世子は嬉しそうに両手を広げ語りました。
「そうですか。」
「私は機会を与えたいのだ。」
夜の水標(スピョ)橋。
シン・フンボクは小さな橋の真ん中に立つと何かに驚き本の包みを落としました。
ソ・ジダムは橋の付近を歩いていると、橋から人が落ち黒ずくめの男が立ち去るのを見てしまいました。
「まさか・・・・・・。」
チダムは手持ちの真鍮製の小さな明かりに火付け石で火を付け橋の下で死んでいるシン・フンボクを検べました。
「まさか・・・頚椎をおられて死んだ?」
チダムは役所に通報しました。すぐに武官と兵士がチダムの道案内により出動しました。
「殺人?殺人といったか。遺体の身元は?」
「図画署(トファソ)のシン・フンボクです。」
何者かが橋の上に落ちていた黄色い包みを持ち去りました。
「殺人といったな。ならば遺体はどこだ?」
青い服の従事官(チョンサグァン)ピョン・ジョンインはチダムに問いました。
「あれ・・・さっきまで・・・ここに倒れていたのに。」
チダムは怪訝に思いました。
「おい。遺留品はあるか?」
「何もありません。」
「なぜあるべき遺体がないのだ。」
従事官ピョン・ジョンインは言いました。
事件当日の日中。
「今夜、通報が入ったら水標橋に行き遺体を回収し転落死で処理するのだ。」
町人風の黒の服を着た男は従事官ピョン・ジョンインに言いました。
「ネイニョン!嘘をついたな!またでたらめを言ったら命はないと思え!」
従事官ピョン・ジョンインはチダムに怒鳴りました。
懿陵(ウィルン)、先王、景宗(キョンジョン)の王墓。
英祖イ・グムは祭事の黒の服に着替えた重臣らを連れて歩いていました。
「手水(チョウズ)を。心身を清めて亡き兄上を悼みたいのだ。」
イ・グム(英祖)は後ろを付いて来ている内官キム・ソンイクに命じました。
大殿内官キム・ソンイクは命じると部下の内官は井戸水を引き上げようとしましたが重くて桶が上がりませんでした。
「父上。御井に問題があるようです。」
世子イ・ソンはイ・グム(英祖)に言いました。数人の武官が井戸水の縄を引っ張ると青ざめたシン・フンボクが逆さまに引っ張り上げられました。
「なぜあの者が?」
内官のチャン・ホンギはうっかり声を出してしまいました。
「どうした?早く答えぬか。」
大殿内官はチャン・ホンギに命じました。
「はい。あの者は・・・睿真画師(イェジンファサ、世子の肖像画を描く画員)です。」
チャン・ホンギは答えました。
イ・グム(英祖)は口を半開きにしてシン・フンボクを見て唇を震わせ後ろに並んでいる重臣をきつく睨みました。
「あ~れ~どうして御井に睿真画師が?」
イ・グム(英祖)の視線を感じて察した右議政のキム・サンノはとぼけたように発言しました。
「あってはならぬこと。」
少論派の首領で左議政イ・ジョンソンは静かに言いました。
「信じられん。」
「とんでもないことだ。」
重臣らは口々に言いました。
「いけません。邸下。近づいてはなりません。」
内官のチャン・ホンギはシン・フンボクに近寄ろうとしている世子に言いました。
「殺されたいのか!殺されたいのかと言ったのだ!」
イ・グム(英祖)は世子イ・ソンに怒鳴ると剣を抜き矛先を重臣らに向けました。
「なぜ突っ立っておる。早く捕まえろ。兄上の墓でとんでもない無礼を働いたのだぞ。王室を侮辱したのはどこのどいつだ!犯人を見つけて処罰しろ。さもなくば許さんぞ。あの兄上の墓に誓って言う。お前らの身体を八つ裂きにして墓の隅に、埋めてやるからな。」
イ・グム(英祖)は言いましたが左議政イ・ジョンソンは表情を変えませんでした。
シン・フンボクの遺体は速やかに役所へ運ばれました。
捕盗庁(ポドチョン)。
「シン・フンボク?なぜ奴の遺体が懿陵(ウィルン)に?」
先日の従事官ピョン・ジョンインが仲間に言いました。
図画署(トファソ)。
「懿陵(ウィルン)の御井(オジョン)から遺体が見つかったんですか?」
ソ・ジダムは驚きました。
「そう言っただろ。」
画員のホ・ジョンウンはチダムに言うと行ってしまいました。
「変ね。水標(スピョ)橋で死んだのにどうして?」
「水標(スピョ)橋?どうしてあんたが水標(スピョ)橋を?」
ホ・ジョンウンは振り返りチダムに言いました。
「水標(スピョ)橋に行った理由はご存知ですか?本を借りる以外の理由が?何か教えてください。」
チダムは好奇心が抑えられませんでした。
「知らないよ。左捕盗庁(チャポドチョン、略してチャポチョン)へ行って聞け。私は無関係だ。」
ホ・ジョンウンは立ち去りました。
左捕盗庁。
「遺体をよそへ移送するかもしれん。」
「うちで捜査するのでは?」
従事官ピョン・ジョンインは捕盗大将のホン・ゲヒに言いました。
「ここは懿陵(ウィルン)に近いから一時的に安置しただけだ。捜査は義禁府(ウィグムブ、発音はウィグンブ)がする。」
ホン・ゲヒは部下に答えました。
「義禁府(ウィグムブ)と言えば謀反と断定を?」
「犯行場所が王陵だからな。」
王宮の王の謁見の間。
「燃やしてしまえ!死んだのはあの画員だと?」
イ・グムは上着を脱ぎ捨てました。
「そうでございます。」
大殿内官キム・ソンイクは答えました。
シン・フンボク遺体発見8時間前の午前3時。
老論派の首領で領議政キム・テクは私邸の庭で客を待っていました。
「ようこそ。会いたいと申しましたのに私のために殿下はご足労を。」
両班の服を着たイ・グムはキム・テクに笑顔を見せました。
「旧友に呼ばれたら駆け付けねばならぬからな。」
イ・グムは言いました。
「私めは・・・ただの旧友(チング)ですか?」
「ふ・・・ふふふふふふ。」
しばらくしてイ・グム(英祖)は書状を手に持ち怒りで震えていました。
大一統猛毅(テイルトンメンイ、日本語で大一統会盟と訳)の連判状。
「不安ですか?」
キム・テクは王に言いました。
「当たり前だろう。」
イ・グム(英祖)は顔を歪めました。
「お忘れですか?殿下に王位を譲ったのはこの私です。連判状は動かぬ証拠です。」
「贈ったものなら、揺るがすのもわけないな。」
イ・グム(英祖)は苦笑しました。
「私が王位を揺るがすとでも・・・。」
イ・テクは言いかけるとイ・グム(英祖)は連判状を投げつけました。
「王位をゆるがせば、この国が揺らぐぞ。」
イ・グム(英祖)は皮肉を言うと立ち上がり帰ろうとしました。
「この国を案ずる心は私も殿下に勝ると劣りません。」
「何が言いたいのだ。」
「国を揺さぶるのは私めではないのです。私に連判状を渡した者が姿を消しました。」
「ふっ・・・姿を消した?隠れんぼか?それで、誰から連判状を渡されたのだ?一体誰がこんな大事な物を・・・。」
イ・グム(英祖)は笑いました。
「睿真画師(イェジンファサ)シン・フンボクです。世子様の睿真画を描く画員。背後に誰がついてると思いますか?」
王宮。
イ・グム(英祖)は謁見の間に帰ると真鍮銅器に入れられたやかんの水で口を濯ぎたらいの水で手を洗い耳をほじくりました。
「連判状を知っている者が、もかにもるのだ!でなければなぜ懿陵に?なぜ兄上の墓にいまわしい死体があったのだ!殺してやる。許さん。王である私の弱みを握りけしかけるのか!」
イ・グム(英祖)は傍で控えている大殿内官キム・ソンイクに厳しく言うと水桶をひっくり返しました。
左捕盗庁の検死室。
世子イ・ソンはシン・スンボクの遺体と対面して衝撃を受けました。
「誰だ。お前を、殺したのは・・・。フンボクは姿勢社だ。父王(プワン)と王室(ワンシル)を侮辱し世子(クッポン、国本)である私を苦しめるために、見せしめにされた。・・・。私が傍に置いたからだ。友として親しくしなどしかったら・・・。死は・・・免れたのに。だが今はお前のために涙を流せない。世子の役目を果たしたら友として会いに来る。その時は・・・私の手で・・・墓に・・・酒を供えてやろう。」
イ・ソンは苦しそうに言うと内官のチャン・ホンギも世子に同情しました。
「邸下・・・。」
捕盗庁の前。
「シン・フンボクの遺体があったの?」
ソ・ジダムは先日の従事官ピョン・ジョンインに言いました。
「娘がなぜそれを?」
武官はチダムに言いました。
「図画署(トファソ)で聞きました。なぜ遺体が御井(オジョン)に?」
「そうだ。調べればわかることだ。」
「左捕庁(チャポチョン)で捜査を?」
「まだ決まってない。証言が必要なら呼ぶから名前を教えてくれ。」
「広通(クァントン)橋で氷愛(ピンエ)と言えばわかります。」
ソ・ジダムは言って去ると木陰に隠れていた黒ずくめの男は武官と目配せをしました。
王宮の少論派(ソロンハ)の会議室。
漢城府(ハンソンブ)判尹(パニュン)で少論(ソロン)のチョ・ジェホは宮中の執務室で仲間と話し合っていました。
「犯人は誰だろうか。」
「今注目すべきは犯人ではなく、遺体があった場所です。無念の死を遂げた景宗大王(キョンジョンテワン)の墓ですよ。」
若くして大司諌(テサグァン)のシン・チウンは言いました。
宮中の老論派の会議室。
「一体誰が遺体を御井(オジョン)に投げ入れたのか。」
領議政キム・テクも考えていました。
「捜査権は我ら老論にあります。早速調べましょう。」
右議政のキム・サンノは言いました。
「連判状の存在が露見するおそれがあります。」
副提学(プジェハク)のミン・ベクサンは言いました。
少論派(ソロンハ)の会議室。
「先手を撃ちましょう。環翠亭(ファンチジョン、景宗が死んだ場所)でのことを世子邸下に申し上げましょう。」
シン・チウンは言いました。
「わざわざ言うことはない。今は犯人捜しが先です。我々がすべきなのは事件の真相が隠されるのを防ぐことです。」
右参賛(ウチャムチャン)で世子師のパク・ムンスは言いました。
王宮の一室。
「伏せろ?自殺で処理を?こんな重大な事件を?」
キム・テクの配下の大臣ホン・ボンハンは聞き返しました。
「無理だと?」
キム・テクは髭を撫でました。
「死んだのは睿真画師(イェジンファサ)です。世子邸下が信じるはずがありません。」
ホン・ボンハンは答えました。
「ならばその手で世子様(クッポン、国本)の命を奪え。」
「邸下に対し不忠ですぞ!」
ホン・ボンハンは机を叩いて立ち上がりました。
「そなたが忠義を語るとは驚いた。だが忠誠を尽くす相手を間違えてるぞ。本当に尽くすべきは誰か忘れたのか。王陵の墓守だったそなたを世子の義父にしたのは老論(ノロン)だ。切り捨てることも簡単だ。嘘だと思うか?」
「いいえ大監。」
「ならば言うとおりにしろ。逆らったら・・・その手で婿の命を奪うことになる。」
キム・テクはホン・ボンハンの手の甲をさすりました。
図画署(トファソ)。
画員のホ・ジョンウンは「甲戌(こうじゅつ)年畫(画)帳申興福(シンフンボク)」と書かれた本を手に持ちました。本を開くと人のスケッチと文字が書かれていました。
世子と重臣の会議室。
「懿陵(ウィルン)での事件をどう解決に導いていくのか見解を聞きたい。」
世子イ・ソンは重臣らに問いました。
「我ら義禁府(ウィグムブ)で捜査を始めさせ・・・。」
ホン・ボンハンは発言しかけました。
「なりません。捜査は我々漢城府で行います。」
少論(ソロン)のチョ・ジェホは言いました。
「漢城府で謀反の捜査などはもってのほかです。」
ホン・ボンハンは甲高い声を出して抗議しました。
「まずは殺人として捜査を。謀反と断定して無実の者が犠牲になったら大監は責任を取れるのですか?」
チェ・ジェホは正論を言いました。
王の謁見の間。
「老論(ノロン)と少論(ソロン)が捜査権で争っている?」
イ・グム(英祖)は大殿内官キム・ソンイクに尋ねました。
「はい(イェ)。」
「はっはっはっはっはっは。」
世子と重臣の会議室。
「義禁府(ウィグムブ)です!」
ホン・バンボンは人差し指を立てて主張しました。
「漢城府で捜査をします!」
チェ・ジェホも大きな声で言いました。
「謀反は義禁府(ウィグムブ)の管轄だと何度言ったらわかるのですか!」
右議政のキム・サンノも大きな声でゆっくり言いました。
「懿陵(ウィルン)が汚されたのは遺憾ですが謀反と断定する根拠はありません。」
左議政のイ・ジョンソンは言いました。
「そのような言動を大監は慎まないと逆心(ヨクシン)を疑われますぞ。」
右議政のキム・サンノは言いました。
「逆臣ですと?」
イ・ジョンソンは不快になりました。
「不利になると逆心を疑う癖は党か家柄のせいですか?」
大司諌(テサグァン)のシン・チウンはイ・ジョンソンを口撃しました。
「ネイノン!家柄を悪く言うとはけしからん!」
キム・サンノは怒りました。
「口を慎め!恥をしるがよい!老論派は何を隠しているのだ!」
少論(ソロン)のチョ・ジェホも怒鳴りました。
「隠すだと?とんだ言いがかりだ!」
ホン・バンボンは自分の前に置かれている経卓を叩きました。
「やめよ!」
世子イ・ソンは声を張り上げて立ち上がりました。
「私の目には、お前たち皆が逆徒に見える。今この場で最も重要なことは、民が不審な死を遂げたということだ。その真実に目を向けずに主導権を取ることしか考えていない。そなたたちこそが逆徒と言えるのではないか!」
世子は肩で息をしました。
世子は部屋を出て行くと老論派と少論(ソロン)派は睨み合いました。
屋外の緑茂る大木の下。
イ・グム(英祖)とイ・ソンは弓矢を射って遊んでいました。イ・ソンは十本以上矢を射ましたが、的の動物の鹿の顔には一本も当たりませんでした。
「だめだ。だめだ。だめだ。なんと情けない。無様にも程がある。私の目が悪くなったのか?命中した矢が一本も見えんぞ。雑念があるのか。」
イ・グム(英祖)はイ・ソンに言いました。
「腹立たしいのです。民が死んでも臣下は党利を追い求めるばかりです。」
イ・ソンは父に言いました。
「どうしようもない奴らだ。私が即位してから三十年間。党争はするなと言い続けたがこのざまだ。朝廷が分裂すればこの国の将来が危うい。」
イ・グム(英祖)は弓を手に取り弦を引っ張りました。
「腹立たしいのも、もっともだ。」
イ・グム(英祖)は矢を一本選びました。東宮殿の宮女で世子を育ててきたチェ尚宮はちらりと王と世子の姿を見上げました。
「だがいくら心乱しても、表に出してはいかん。」
イ・グム(英祖)は真剣に弓を射ると鹿の図の眉間に矢が刺さりました。
「王子だからな。」
「父上もそうして生きてこられたのですか?本心を隠してきたのですか?寂しく、なかったのですか?」
「お前が私の心をわかってくれるだけで十分だ。込み入った問題を前にしたら原則に立ち返るがいい。謀反の捜査は義禁府(ウィグムブ)の管轄だ。もっとも御井(オジョン)を汚す行為は王室への侮辱だ。ならば王家の人間が指揮を執るのが筋であろう。お前の義父で義禁府(ウィグムブ)判事(パンサ)のホン・ボンハンが適任だ。そう思わぬか?どうして黙っている。」
「肝に、銘じておきます。父上。」
「ああ。」
イ・グム(英祖)はイ・ソンの肩に手を置いて頷きました。
王宮の一角の庭。
「自殺で処理するにしても事件の全容はつかむべきです。」
恵慶(ヘギョン)宮ホン氏(世子嬪)は父に言いました。
「そのとおりです。領相(ヨンサン、領議政)キム・テクがうやむやにした理由を、探っておかねば。」
ホン・バンボンは答えました。
「大殿の主(王)までもが義禁府(ウィグムブ)で捜査せよと邸下に促したとか。考えてみれば事件には大きな秘密が隠されています。」
「その秘密というのは・・・。」
「大殿と領相大監(ヨンサンテガム)の致命的な弱みでしょう。その弱みをつかんで次期国王の信頼を獲れば我らホン氏一族が最大勢力となるのです。」
「今日は妙な日だ。私の慕っている方が、呼ばずとも二人も訪ねてくれた。父王(プワン)は義禁府(ウィグムブ)での捜査が妥当だとおっしゃった。もっともな理由を並べておられたが、つまりは老論(ノロン)に味方せよということだ。」
イ・ソンは師匠のパク・ムンスに言いました。
「誠に遺憾なことです。」
「先生(サブ)の望みは何ですか?捜査権を少論(ソロン)に渡せと?」
「邸下には失望しました。私が教えは、その程度のものでしたか?」
老論(ノロン)の会議室。
「大監。大監。」
ミン・ベクサンが焦りながら部屋に入ってきました。
「どうしたのだ。」
領議政のキム・テクは言いました。
「邸下が義禁府(ウィグムブ)に捜査させないと。」
「何だと?」
世子と重臣の会議室。
「特別検死ですか?」
捕盗大将のホン・ゲヒは世子に謁見していました。
「この事件は中立な人物が担当すべきと考えた。」
「それが私を選ばれた理由ですか?」
「それだけではない。そなたが捕盗大将(ポドテジャン)になって検挙率が二倍になった。見事な捜査がそなたを起用した理由だ。」
「誰に対しても容赦しない私の頑固な性格が、その結果を導いたとご存知ですか。」
「聖域を作らないという意味か。」
「了承いただけないなら辞退いたします。」
「捕盗大将(ポドテジャン)を信じよう。」
「私めではなく証拠と結果をお信じください。」
「捕盗大将(ポドテジャン)ホン・ゲヒを推した理由は何ですか?」
弘文館修撰で南人派のチェ・ジェゴンは少論(ソロン)のパク・ムンスに言いました。
「不偏不党だからだ。裏表なく中立な男だ。ホン・ゲヒが赴任した地では不正が一掃された。取り締まりが厳しく秩序が見事に保たれていたのだ。」
パク・ムンスは書物を立ち読みしながら言いました。
老論派の会議室。
「パク・ムンスめ。もしやあやつが遺体を御井(オジョン)に・・・。」
キム・テクは両手の拳に自分の頬を乗せて呟きました。右議政キム・サンノとミン・ベクサンは顔を見合わせました。
左捕盗庁に特別検験都監(特別検視所)が設置されました。検死内医院(ネイウォン)が担当しました。
「どう見ても私の出番ね。左捕庁(チャポチョン)に行かなければ。」
ソ・ジダムは御触れを見て思いました。チダムを黒ずくめの男が見張っていました。
シン・フンボクの遺体が検視されました。
「始めてくれ。」
ホン・ゲヒは内医院(ネイウォン)の御医(オイ)ヤン・スンマンに言いました。
「肺に水がない。」
ヤン・スンマンは金属の棒を肺に刺して水が出てこないことに気が付きました。
「溺死ではないのか?」
左捕盗庁の従事官のミン・ウソプは御医に言いました。
「そうなのだ。」
御医は答えました。
「御井(オジョン)で発見されたのに溺死ではない。」
ミン・ウソプはシン・フンボクの死に疑念を抱きました。
ソ・ジダムは数人の男に後をつけられていることに気が付き逃げました。六人の男たちがチダムを袋小路に追い込みました。
「女一人に男が大勢で情けないわね!かかってこい!ぶっ殺す!かかって来い!」
チダムは木の棒を構えて言いました。
「生意気な小娘め!」
男は腹を立てましたが両班風の男、剣契東方(コムゲトンバン)の頭目ナ・チョルチュが現れチダムを助けました。男たちは倒され逃げていきました。
「正体を確かめないと!」
「心配ない。記念品を頂いている。」
夜の剣契東方(コムゲトンバン)の砦。
チダムは砦に連れて行かれました。
剣契西方(コムゲソバン)の砦。
「ナ・チョルチュ?東方の?なぜ奴が現れた。あの女はナ・チョルチュの女?」
剣契西方(コムゲソバン)の頭目カン・ピルジェは部下から報告を受けました。
剣契東方(コムゲトンバン)の砦。
「剣契西方(コムゲソバン)の?」
ソ・ジダムはナ・チョルチュに夜食を食べさせて貰いながら敵方の身分証を手に取りました。
「ああ。最近、何やってるんdな?何か知らんが手を引け。」
ナ・チョルチュはチダムに言いました。
「私の勝手よ。」
「これ以上深入りすると危ない。」
「私は、シン・フンボクの最期の目撃者だから私の出番なのよ。」
「西方は都城最大の剣契(コムゲ)だ。西方(ソバン)も関わっているならお前の命が危ない。」
「捜査って危ないものでしょ。じゃあね。」
シン・フンボクの実家。
「お兄さまが往ってしまわれたことを聞いて気を失いました。」
シン・フンボクの妹は訪ねてきた世子に言いました。シン・フンボクの母は床に伏していました。
「ああ。私の考えが浅はかだった。フンボクはお母さんのことに心を痛めていたのに何の配慮もしてやれなかった。しばらくは女官に世話をさせる。医師もつかわそう。」
チェ尚宮は煎じ薬を作りながら世子の様子を伺っていました。
「あの。犯人が見つからなければお兄さまは逆賊になるのですか?」
「犯人は捕まえる。信頼できる者に捜査を任せた。それゆえお兄さんが逆賊になる心配はない。」
世子が言う様子を東宮殿の別監カン・ピルチェは見守っていました。
王の部屋。
「これは何ですか?」
キム・テクはイ・グム(英祖)に言いました。
「役に立つだろう持っていけ。」
キム・テクの家。
キム・テクはミン・ベクサンとともに王からもらった書状を見ていました。
「壬戌年三月二日(英祖(ヨンジョ)18年1742年)。五月六日。癸亥年(英祖(ヨンジョ)19年)七月二十六日か。」
「それは何ですか?」
「これは最後の切り札だ。」
左捕盗庁。
「終わったか?」
シン・フンボクの検視が終わりました。
「検案書です。」
御医はホン・ゲヒに検案書を渡しました。
「溺死ではなく頚椎骨折。首の骨が折れただと?ならば・・・。」
「自殺です。」
「御医が何を言う。これは明らかな他殺だ。」
「壬戌年三月二日。五月六日。癸亥年七月二十六日です。覚えていないのですか。」
「一体、何のつもりだ。」
「領相(ヨンサン、領議政)の捜査方針文です。」
御医は懐から手紙を取り出しました。
ホン・ゲヒは机の上に検案書を置き、捜査方針文を読むと焦りました。
ソ・ジダムは茶母に扮して左捕盗庁に入りました。
「急用なので必ずミン従事官様に渡すようにと言われました。私はこでで失礼いたします。」
チダムは手紙をミン・ウソプに渡しました。
「待て。お前は、何者だ。茶母にしては見慣れない顔だな。」
「昨日、配属されたばかりなんです。」
「新人か。」
「はい。」
「名は?」
「え?」
「名は何と申す。」
「ソ・チダムです(字幕ではジダムでしたがソ・チダムと発音していました)。」
「わかった。下がれ。」
「あ~いくら慌てたからって本名を教えちゃダメだったのに。」
チダムは自分の頭をこつきました。
ミン・ウソプはホン・ゲヒに匿名の手紙を渡しました。
「自殺ではないだと?」
「匿名の情報です。」
「一体、どういうことだ。」
ホン・ゲヒは長い文書を読みました。
「事実なら水標橋で殺され御井(オジョン)に投げ込まれたことになります。つまり溺死ではありません。この者も死因は頚椎骨折と推定しています。」
「わかった。検討しよう。」
「この者に会えば捜査が・・・。」
ミン・ウソプは乗り気で話しましたが言葉を遮られました。
「わかったから下がれ!」
ホン・ゲヒは怒鳴りました。
ホン・ゲヒの執務室を出たミン従事官は訝りました。
ホン・ゲヒは御医の「捕盗大将(ポドテジャン)の身のためです」という言葉とミン従事官の報告を思い出し天秤にかけていました。ホン・ゲヒは捜査方針文を燃やしました。
世子と重臣の会議室。
ホン・ゲヒは世子に謁見しシン・フンボクの死についての報告文書を渡しました。報告書にはシン・フンボクが王を侮辱するために御井(オジョン)に身を投げたと書かれていました。
「自殺だと?本当にシン・フンボクは自殺したのか?」
「そうでございます。」
ホン・ゲヒは答えました。少論(ソロン)の重臣たちは顔を見合わせました。
王の執務室。
「ホン・ゲヒか。使える奴だ。」
イ・グム(英祖)は呟きました。
感想
難解な!登場人物の数が多くて名前を覚えきれません!みなさんは覚えられましたか?私の記憶力が悪いのか、誰が誰かという名前が出てきません~。ハン・ソッキュ演じる英祖(ヨンジョ)は一筋縄ではいかない男になりましたねぇ。イ・サンなどでほかの俳優が英祖(ヨンジョ)を演じても単純な王様にしかならないのですが、このハン・ソッキュが演じると、中身がミステリアスで何考えているかわからない男になってしまいます。このハン・ソッキュという俳優さんはほかにいないタイプの俳優さんですね。「根の深い木」ではもっと慈悲深いような王を演じていましたが「秘密の扉」では冷血漢で皮肉屋でずる賢さが溢れています。サドセジャはイケメン君で王子様って感じがしますよね。世子役のイ・ジェフンは出演作も少ないのに十分な存在感です。そしてホン・ゲヒ!彼を演じる俳優さんはいつも悪役でしたが、今回の「秘密の扉」でもやっぱり悪党なのでしょうか。イケメンといえば南人派のチェ・ジェゴンを演じているチェ・ウォニョンも色男です。チダム演じるキム・ユジョン は「太陽を抱く月」の美少女子役さんですが、今作ではまだ存在感がありません。肝心のストーリーは英祖(ヨンジョ)と老論派が王位簒奪の事実を隠しているというところに画員のシン・フンボクが殺されてしまったところから何の進展もありませんでした。英祖(ヨンジョ)のネットリ感がたまりませんな。
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- 秘密の扉 6話 あらすじと感想 フンボクの画帳
- 秘密の扉 7話 あらすじと感想 班次図(パンチャド)の印
- 秘密の扉 8話 あらすじと感想 裏の顔
- 秘密の扉 9話 あらすじと感想 殺人の濡れ衣
- 秘密の扉 10話 あらすじと感想 哀しき父子
- 秘密の扉 11話 あらすじと感想 竹波(チュクパ)の正体
- 秘密の扉 12話 あらすじと感想 親政再開と均役法(キュニョクポ)
- 秘密の扉 13話 あらすじと感想 血の粛清
- 秘密の扉 14話 あらすじと感想 父を倒したい
- 秘密の扉 15話 あらすじと感想 仕組まれた罠
- 秘密の扉 16話 あらすじと感想 失脚
- 秘密の扉 17話 あらすじと感想 世子の挑戦
- 秘密の扉 18話 あらすじと感想 民との約束
- 秘密の扉 19話 あらすじと感想 地位など要らぬ
- 秘密の扉 20話 あらすじと感想 王妃選びの儀
- 秘密の扉 21話 あらすじと感想 暗殺計画
- 秘密の扉 22話 あらすじと感想 世孫(セソン)の冊封
- 秘密の扉 23話 あらすじと感想 暴かれた書斎(ソジェ)
- 秘密の扉 24話 あらすじと感想 夢を託して
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