秘密の扉15話
目次
あらすじ 仕組まれた罠
英祖イ・グムは清国との外交問題をイ・ソン(思悼世子)に押し付け問題の解決を政治復帰か廃世子かの条件にしました。イ・ソン(思悼世子)は父からの挑発に応じました。
老論の会議室。
世子の義父イ・ボンハンは「世子様が我々老論を信じたのでしょう」とイ・ソン(思悼世子)の決意を皆に伝えました。左議政キム・サンノは「我々に手立てはないでしょう。今上の動きはどうもおかしいです。老論と世子を陥れるつもりです」と大きく手を広げて清との外交問題が自分に飛び火するのを恐れました。
「世子には申し訳ないが我々の深入りは禁物です。」
戸曹判書(ホジョパンソ)になったミン・ベクサンも嫌がりました。
「何を白状なことを。」
世子の義父で礼曹判書のホン・ボンハンは言いました。
「薄情などと言っている場合か?切り札を捨てることも政治では大切だ。」
キム・テクは傍に立っているホン・ボンハンを見上げました。
王宮の一角。
都承旨チェ・ジェゴンは世子の世話をしているチェ尚宮を呼びました。
「そなたは邸下をどんな方だと思う。」
「大殿の探りをお入れに?」
「イボゲ(お前さん)!」
チェ・ジェゴンは慌てました。
「でなければ何故に?」
「・・・・・・。私が邸下を助けたい。邸下の地位を守るためあえて邸下から離れ殿下に仕えたのだ。」
秘密の扉の前。
「お入りください。」
チェ尚宮は屏風をどけてチェ・ジェゴンを地下室に案内しました。隠し部屋にはさまざまな禁書などの書物が散乱していました。
「この三年間邸下はここで長い時間を過ごされました。」
チェ尚宮が言いました。
「話は聞いた。」
しばらくしてイ・ソン(思悼世子)が部屋に現れました。
「邸下は無謀な決断をされたと思いチェ尚宮に問いました。しかし私の取り越し苦労だったようです。代理聴政(テリチョンジョン、王の代わりに政務を行うこと)の時も清国との間で邸下は悩んでおられましたが内密に研究されていたとは。清国の情勢を記した資料や詳細な地図もあるのに?」
チェ・ジェゴンが言うとイ・ソン(思悼世子)は微笑みました。チェ尚宮もチェ・ジェゴンが世子のために働いていたことを知り屏風の向こう側で嬉しそうに口元を緩めました。
「武器新式・・・。」
チェ・ジェゴンは世子の書いた書を手に取りました。
「まだ草稿だ。」
「なぜ兵法書を執筆なさるのですか?」
「兵法の基本を広めれば、軍を強化できるのだ。清国の皇帝は自ら兵を率いて戦に出る。皇帝がその気になればいつでも朝鮮を攻撃できる。」
「まさか、清を攻撃なさるので?」
「清国を攻めるに足る武力で備えるのだ。かつで倭国や清国に攻め込まれた時、朝鮮の王は民を捨てて逃げた。そんな君主になりたくない。敵に攻め入れられたら君主は前線で戦うべきだと思うのだ。」
「しかし清国の使臣の問題は武力で解決できません。」
「清国は口実をつけて朝鮮を討つつもりだろう。清国の民間人を我が国の水軍が攻撃したのは挑発行為だと。」
「戦争の意思がないことを示し朝鮮は清国を攻めるのではないと疑いを晴らすのです。」
「無論挑発でないと事実を示せば解決する。問題はどう証明するかだ。潔白と信じる対価として清国は何を要求するだろうか。」
「なんであれ、敵意でなく好意を示すのです。相手の要求を拒もうとしてけんか腰になってはいけません。使臣をもてなすことも方法のひとつかも。」
「使臣(サシン)を懐柔しようというのか?」
「そのようなことは老論の大臣(テシン)たちにお任せください。妓房(キバン)での政治接待ならお手の物です。当分は老論寄りの姿勢をお続けください。腹黒い連中ですが有能です。」
「そなたが去って残念だ。」
「私めはいつか邸下にお仕えしたいと思っています。」
王の部屋。
「余を恨んでおっただろう。」
イ・グム(英祖)は少論の首領イ・ジョンソンと副官のチョ・ジェホに酒を注ぎ食事を振る舞いました。
「いいえとんでもない。」
チョ・ジェホは優雅に英祖の酒を受け取りました。
「ふっふっふっふ。気持ちのいい奴らだ。その正直さがよい。隙あらば余を裏切ろうとする老論とは格が違うな。」
英祖はおだてるもイ・ジョンソンは黙って下を向いたままでした。
「我々を呼んだ理由は何ですか?」
チョ・ジェホはイ・ジョンソンの代わりに王に尋ねました。
「余の本意ではない。余の隙を突くやり方が老論ならば余を真正面から突き飛ばすのが少論だろ?余は少論の忠心など要らん。」
イ・グム(英祖)が嫌味を言い酒をあおるとイ・ジョンソンは初めて視線を王に上げました。
「だが(ホナ)、この国には必要だ。余でなく朝鮮のために尽力する気があるなら明日から便殿(ピンチョンと今回は発音、またはピョンジョン)へ出仕し政治に参加するがよい。さあ飲め。」
英祖とイ・ジョンソンとチョ・ジェホは銅器で酒を飲みました。
宮殿の廊下。
イ・ジョンソンとチョ・ジェホが並んで歩いているとキム・テクが現れました。
キム・テクはイ・ジョンソンに深々と頭を下げました。イ・ジョンソンとチョ・ジェホもキム・テクに礼を返しました。
「戦場への復帰を歓迎しますよ大監。」
「三年間刀を丹念に鍛えてきたのだが、さて切れ味はどうかな?」
イ・ジョンソンが口を開きました。
「お手並みを拝見いたそうではないか。」
王の部屋。
「イ・ジョンソンとチョ・ジェホには外交の実績がある。ただちに清国との外交でも期待できるな。」
イ・グム(英祖)は経歴書を読みながら尚膳キム・ジョンイクに言いました。
「ならば国本(クッポン、世子)の補佐をさせるために二人をお呼びになったのですか?」
「国本(クッポン、世子)は交渉をしくじる。だから呼んだのだ。」
「清との外交問題は世子の手に負えぬ。老論も初めは国本(クッポン、世子)に手を貸すかもしれんが交渉が難航すればあっさり捨てるだろう。国本(クッポン、世子)に責任をなすりつけ知らんぷりを決め込むはずだ。そのとき少論を動員し余が采配を振るうのだ。」
「少論と殿下で問題を解決すれば老論を牽制できますな。ですが、国本(クッポン、世子)は、国本(クッポン、世子)はどうなるのですか?」
老論の会議室。
「国本(クッポン、世子)を補佐するのですか?一体なぜ?」
甲高い声でキム・サンノは額を抑えて肘を突いているキム・テクに言いました。
「なぜとは何ですか。」
ホン・ボンハンはキム・サンノに言いました。
「私情を挟まず黙ってろ!大監(キム・テク)!」
キム・サンノは右隣に座っているホン・ボンハンに大きな声で言いました。
「そなたこそ黙っておれ!少論が朝廷に復帰したのだ。援軍を得た殿下に対抗する切り札が要る。」
キム・テクは顔をしかめて声の大きいキム・サンノを叱りました。
「私も同じく国本(クッポン、世子)を補佐すべきかと思います。今上に対抗するのではなく今上を正すためにです。清との外交には国運がかかっています。ですが殿下は王権の強化に利用しようとするとは、ええ、これが君主のすることですか。我々は国本(クッポン、世子)の手を取り危機を脱するべきです。これを解決すれば国本(クッポン、世子)は政治に多大な功績を残すことになります。」
兵曹判書のホン・ゲヒは言いました。
「その通りです。その通りですよ。」
ホン・ボンハンは同意しました。
「その後、代理聴政(テリチョンジョン、王の代わりに政務を行うこと)で国本(クッポン、世子)が政治の中枢に復帰すれば今上を凌ぐ影響力を持つことになります。」
ミン・ベクサンもホン・ゲヒに同意しました。
「ならば少論がいても今上に勝ち目はない。」
キム・サンノは普通に大きな声で言いました。
「大監。清の使臣について調査しましょう。彼らの好みや弱点を調べるのです。正攻法では勝てません。使臣の好きなものを与えて解決策を探りましょう。」
ホン・ゲヒが言うとキム・テクは再び額を手で覆いました。
「いかに世子を手なずけられるかが鍵となるだろう。」
妓房。
「こんな時に礼曹でなく妓房に呼ぶとは。予想外です先生。」
世子イ・ソン(思悼世子)はキム・テクに言いました。キム・テクとキム・サンノは笑いホン・ボンハンも微笑みました。ホン・ゲヒとミン・ベクサンも宴の席に同席していました。
「こんな時とは何ですか?」
キム・テクは笑いながら言いました。
「五日後には清国の使臣が都へ到着するとか。すぐに迎えの者を送って使臣に接触させ使臣の真意を師匠が探らせるとか、私は外交の経験が乏しいので寝る間も惜しんで教えを請いたいのです。」
イ・ソン(思悼世子)が言うと老論の大臣たちは優しく微笑みました。
「はっは。邸下落ち着いてください。気がせいでいます。肩に力が入っておられます。はっはっは。」
ホン・ボンハンは笑うとミン・ベクサンも「そうですね」と珍しく笑いました。
「どうぞお気を楽にしてください。外交とて人と人との付き合いではないですか。腹案はありますので今日のところは宴をお楽しみになさってください。」
ホン・ゲヒも優しく振る舞いました。老論の大臣らは皆、異様に優しい雰囲気を演じてしました。
「ならば・・・大監らを頼りにしているぞ。」
イ・ソン(思悼世子)が言うと大臣らは愛想よく笑いました。
「はっはっはっは。」
大臣たちと世子が楽しく過ごしている様子とソ・ジダムは気に入らない様子で盗み聞きしていました。
都城の屋台。
「ずいぶんお顔がやつれましたな。」
元従事官ピョン・ジョンインは捕盗庁の武官二人に食事をおごってもらっていました。
「懸賞金はどれくらいだ?」
ピョン・ジョンインは言うと酒を飲みました。
「懸賞金?」
「逆賊の懸賞金だ。」
「百両です。」
「久しぶりに会ったんだ。そなたらに小銭を稼がせてやろう。」
「小遣いですか?」
飯を食べていた武官は嬉しそうにピョン・ジョンインを見つめました。
「ソ・ジダム。」
「ソ・ジダム?貸本業の娘か?」
「今は逆賊ソ・ギュンの娘だ。ウンシムの芙蓉齋(プヨンジェ)にいる。」
「芙蓉齋(プヨンジェ)だって!?」
妓房芙蓉齋(プヨンジェ)。
「邸下。王宮から使いが参りました。」
行首(ヘンス)のウンシムはイ・ソン(思悼世子)に言い手紙を渡しました。世子が手紙を広げると手紙にはウンシムがチダムがプヨンジェにいることが発覚したようです、捕盗庁の役人が来ます、どうしましょうと書かれていました。
「邸下。何の知らせです?」
キム・テクは酔った感じで世子に言いました。
「ああ。チェ尚宮からだ。王宮で問題があったようで今すぐ帰れと。残念だが今日の宴はお開きにしよう。」
妓房の門。
「心地よいカヤグムの音だった。」
ホン・ボンハンは礼を言いました。
「またお越しくださいませ。」
ウンシムは門の外で門から出てくる大臣らに頭を下げました。門の外には何台もの輿が待機しており数十人もの従者が地面に控えていました。そこに捕盗庁の従事官が兵士を率いて現れました。
「何事か?」
キム・テクはゆっくりと従事官に尋ねました。
「この芙蓉齋(プヨンジェ)に逆賊が隠れているとの情報が入りました。」
従事官は答えました。
「逆賊だと?」
キム・サンノは大きな声で聞き返しました。
「ソ・ジダムです。」
「ソ・ジダム?逆賊ソ・ギュンの娘か。」
ホン・ゲヒは従事官に言いました。
「左様でございます。」
従事官は頭を下げました。
「おい行首。どういうことだ。」
「何か誤解されていらっしゃるのでしょう。」
「確認すればわかることだ。早く調べに行くのだ!」
ホン・ゲヒは従事官に命じました。
「はい。行くぞ!」
妓房の一室。
「なぜ私と共に逃げぬ?」
イ・ソン(思悼世子)はソ・ジダムの手首を引っ張ろうとしていました。
「邸下の世話にはなりません。」
「捕まればどうなるかわかっているのか?」
「死ぬだけです。隠れて暮らすくらいならいっそ・・・。」
「きゃ~。きゃ~。」
妓生たちの悲鳴が上がりました。
イ・ソン(思悼世子)はソ・ジダムを馬に乗せて逃げました。
キム・テクの家。
キム・テクは息子のキム・ムに世子がこっそり誰かと会っていないか尋ねました。キム・ムは新入りの妓女と顔見知りだったと答えました。
夜の恵慶(ヘギョン)宮ホン氏の部屋。
嬪宮は父ホン・ボンハンから世子がソ・ジダムを匿ったのではないかと教えられました。
元従事官ピョン・ジョンインの家。
「ずいぶんと苦労したようだな。まずは受け取れ。他の形でもやろう。」
ホン・ゲヒは元部下のピョン・ジョンインに酒を注いでやり金を投げました。
「私を訪ねてきた理由は何ですか?」
「ソ・ジダム。そなたが通報したようだな。」
「そうです。」
「人違いでは?」
「あの娘のせいで落ちぶれたのです。あの顔だけは、忘れられません。」
夜の寺。
イ・ソン(思悼世子)はソ・ジダムに地味な羽織物をかけてあげました。
「夜の空気は冷たい。寺にはその羽織物しかなかった。洗冤(セウォン)。恨みを洗い流す。お前が捜査の内容を書き込んでいた小冊子も洗冤(セウォン)と題していたな。」
「もう記憶はございません。」
「お前は勇敢な娘だった。誰かの恨みを晴らすためなら危険を顧みなかった。私が投獄された時、お前は頼もしくこう言った。無実なのだから、すぐ出られると。真犯人を捕まえて迎えに来ると約束してくれた。もう一度勇気を出さぬか?勇敢に生き抜き私を支えてほしい。この手でお前の恨みを洗い流したい。」
キム・テクの家。
「何かあるに違いない。嫌な予感がする。」
キム・テクはキム・サンノとホン・ゲヒとミン・ベクサンに言いました。
「もしも、もしもですよ。ソ・ジダムを逃がしたのが世子だったなら、世子が我々に見せていた顔は何だったのでしょう。」
キム・サンノは静かに言いました。
「仮面です。逆賊をかばうということは世子は三年前から変わっていないのでしょう。」
ホン・ゲヒは言いました。
「ならば、世子は謹慎の裏で計画を練っていたのやも。我ら老論を滅ぼすための計画です。」
キム・サンノは言いました。
嬪宮の部屋。
世子は嬪宮の部屋に現れました。
「やっとお戻りになられたのですか。あなたおひとりで戻られたのですか。」
嬪宮は堅い調子で言いました。
世子は上座に座りました。
「王宮で暮らし始めて十数年。私はあなたに期待し続けてきました。でもいつも裏切られました。今日もです。危険な真似はせずにあなたおひとりで帰って来てほしい。そう願ったのにまた裏切られました。」
「申し訳ない。」
「恋心ですか?こんな無茶をするほどその娘を三年間想っていたのですか?」
「無念に思っていた。守れなかった民ゆえ不憫でならなかった。民を天と崇める君主になれと、そんな君主のいる国に暮らしてみたいとそう励ましてくれた聡明な民を守れず自責の念に駆られた。私も怖のだ夫人(プイン)。あの娘のことが発覚すれば苦境に立たされる。ただの一人も民を守れず無力感を思い知らされるのはもっと恐ろしいことだ。」
「理解できません。いいえ、わかりたくありません。妻子がいながら無謀な行いばかりをして危険を冒す夫。渡しは理解したくもありません。夫としてのあなたには協力などしません。ですが・・・民を哀れむ気持ち、危険を冒してでも民を守ろうとする気持ち、それが国本(クッポン、世子)の、いいえ、いずれ君主となるお方のお心なら、そのお心に、一度だけ、私も折れましょう。」
夜更けの嬪宮の部屋。
嬪宮は部屋に女官になったソ・ジダムを呼びました。
「私に仕える封書内人(ホンソナイン、手紙を代筆する女官)が病に帰り宮廷を出て帰った。すでに後任の女官は選んであるがお前に代える。本名では逆賊の娘と気づかれる何と呼ばれたい?」
「氷愛(ピンエ)と呼んでください。」
「後任だった内人の姓はパク。今日からお前は内人パク・ピンエだ。」
「恐れ入ります。」
「お前が王宮にいると知れたら邸下がどうなるかわかっているな?息を潜めて暮らせ。わかったな?」
「承知いたしました。」
「宮中の掟を教えてやって。嬪宮に仕える内人なら東宮殿の者たちも怪しまない。」
「ご配慮いただき感謝の念に堪えません。」
東宮殿のチェ尚宮は礼を言いました。
剣契東方(コムゲトンバン)の頭目ナ・チョルチュの家。
「旦那様、私です。」
元従事官ピョン・ジョンインが部屋に入って来てナ・チョルチュに丁寧にあいさつをしました。
「どうなった。」
ナ・チョルチュはピョン・ジョンインに尋ねました。
「無事に王宮へ行きました。キム・テクとホン・ゲヒらが世子を疑いました。」
「じきに内紛が起きる。後悔してないか?流刑を終えて老論に仕えれば役人に戻る道もあっただろう。」
「流刑地に刺客を送られたのです。そうでなくても奴らに仕えません。どうせ私は捨て駒です。頭長のもとで人らしく暮らしたいのです。行きましょう。仲間たちが待っています。」
賊の集う部屋。
(世子が大臣らと執政をとるときに使っていた部屋とまったく同じ部屋の使いまわしですがw)
両班の身なりをしたナ・チョルチュは数十人の部下たちを部屋に呼び集めました。
「我らの組織の名は鳴砂団(ミョンサダン)だ。鳴くに砂と書く。砂粒のような我々でもこうして集まれば大きな鳴き声を響かせられる。その鳴き声が、乱れた世の中を変えるさまを世に示すのだ!」
ナ・チョルチュは皆に言いました。
「世に示すのだ!」
傍に侍っているピョン・ジョンインも続きました。
「世に示すのだ!」
男たちは声を揃えました。両班風の帽子を被った男から下の身分の男までさまざまな者がいました。
ミン家のミン・ウソプの部屋。
「疲れているようだな。例の娘を逃がしたからか?」
自室に入ったミン・ウソプに息子の帰りを待っていた父ミン・ベクサンが言いました。
「今、何とおっしゃいましたか?」
「真実を言え。芙蓉齋(プヨンジェ)を出てから世子は何をしていたのだ。」
「王宮へ戻りました。なぜ私をお疑いになるのですか。」
「裏切者だからだ。」
「父上。」
「三年前。世子が猛毅(メンイ)を捜すのを手助けした。今はどんな手助けを?」
「邸下を手助けするのが私の任務です。」
「違う。お前の任務は観察(カムサル)だ。世子をしっかり見張るのだ。怪しい動きがあればすぐ知らせろ。また老論を裏切ったら我が家門はおしまいだ。忘れる出ないぞ。」
王宮の世話人の部屋。
「長い一日だったわね。今日はゆっくり休みなさい。」
チェ尚宮はソ・ジダムに言いました。
「はい。媽媽様(ママニ)。」
「王宮に出入りできたら王と王世子の動き、警護の人数と配置を調べろ。」
ソ・ジダムはナ・チョルチュの言葉を思い出しました。ソ・ジダムは部屋の引き出しを開けて東宮殿世子邸下日課一覧という一枚の紙を取り出し書き写しました。
日中の王宮の門前。
清国の使臣が慕華館に到着しました。
老論(ノロン)派の会議室。
キム・サンノは世子は信用ならないので助けるべきかと言いました。兵曹判書ホン・ゲヒは今は世子のことよりも外交は国運に関わることが問題だといいました。ホン・ボンハンが部屋に入ってきて慕華館の接待は兵曹判書と礼曹がせねばならぬとホン・ゲヒを呼びに来ました。
慕華館(モファグァン)。
世子とホン・ゲヒとホン・ボンハンは清国の使臣と机を挟みました。
「すぐに宴の準備をさせよう。」
世子は使臣に言いました。
「いいや。宴はいらぬ。敵のもてなしは受けませんので。」
使臣は片手を上げて拒絶しました。
「敵とはあんまりではないか。」
「朝鮮は敵ではないとおっしゃるのならなぜ我々清国の民を攻撃したのですか。」
「誤解があるようです。貴国の漁船が朝鮮近海で操業したためやむを得なかったのです。なぜなら貴国の船員は武装しており・・・。」
ホン・ゲヒは言いました。
「やはり貴様(イノミ)は清国の敵だな!挑発しておいて責任をなすりつけるとは。」
使臣は机を叩き怒りました。
「なすりつけてなどいません。原因がわかれば清国と和解できるかと・・・。」
ホン・ボンハンも言いました。
「はっ!我々は和解など考えていません。我ら清国の皇帝陛下のご命令を聞きなさい。」
「朝鮮の黄海道(ファンヘド)近海で清国の民の漁船の操業を全面許可すること。黄海道(ファンヘド)の二か所の港を我が国の民の寄港地として使わせること、また朝鮮で清国の民が法に触れたとしても治外法権を認めること。」
二人の使臣が言いました。
「それは無理な要求だ。操業の制限は朝鮮近海から五里以内とする。だが望み通り寄港地を作り漁民のための宿も提供する。しかし我が国の中で罪を犯した者を我が国の法で裁けぬのなら真の国家とは言えない。ゆえに治外法権は認められぬ。」
イ・ソンは言いました。
「いいでしょう。王世子がおうおっしゃるのなら我々もすべて受け入れましょう。だが朝鮮は五万の兵をただちに派遣してください。」
「兵士だと?」
イ・ソンたちは驚きました。
「我が清国の乾隆帝は二度の西伐をお考えです。兵を派遣し朝鮮の忠誠心を示していただきたい。」
「世子邸下が陣頭指揮を執り共に前線で戦ってはいかがです?そうすれば皇帝陛下が朝鮮に抱く疑いを晴らせましょう。どうされますか?黄海道(ファンヘド)沿岸の全面操業と治外法権を認めるか、五万の軍を出すかどちらを取るかは朝鮮の自由です。だが拒否すれば朝鮮に開戦の意思ありとみなします。皇帝陛下の軍が朝鮮へと向かうでしょう。」
使臣が言うと兵曹判書は目を丸くして世子を見ました。
「分かった。少し時間をくれ。朝廷の重臣と話し合いたい。」
世子は立ち上がりました。
「三日待ちます。再び我が国と戦いたくないならどうか賢明なご判断を。」
老論の会議室。
世子は老論派の重臣たちと話し合いました。
「五万も派兵すれば国の財政が破たんします。」
ホン・ゲヒは世子に言いました。
「民も猛反発します。」
ミン・ベクサンは言いました。
「しかしいくら何でも治外法権は認められません。」
ホン・ボンハンも言いました。
「戦争を防ぐためならやむをえません。」
ホン・ゲヒは自分の考えを述べました。
「だが黄海道(ファンヘド)の民に犠牲を強いるぞ。」
イ・ソン(思悼世子)はホン・ゲヒに言いました。
「小さな犠牲には目をつぶるべきです。」
キム・サンノは言いました。
「私は国益を守る道を選ぶべきだと思う・・・。」
イ・ソン(思悼世子)は言いました。
「そのような理想論など・・・。猶予は三日だけです。操業と治外法権の許可を視野に入れましょう。何より時間が・・・。」
ホン・ゲヒは顔をしかめて苦言を呈しながら言いました。
「なりません。もし国益を損ねれば邸下は世継ぎの地位を失います。邸下がそうなったら大監は責任を取れますか!」
ホン・ボンハンはホン・ゲヒに向かってきつく言いました。
「何だと?邸下も同じお考えですか?地位のために譲歩したくないと?」
ホン・ゲヒはイ・ソン(思悼世子)に言いました。
「間違っているのか?」
イ・ソン(思悼世子)はホン・ゲヒに言いました。
「始まりから間違っています!!!今上は国運のかかった問題を国本(クッポン、世子)を試すのに使っておられる!邸下は邸下で地位が第一ときています。慕華館でまともな交渉もできずに使臣が帰国し清国が攻めてきたら後の祭りですぞ!!」
ホン・ゲヒは立ち上がって怒鳴り椅子を倒して部屋を出ていきました。
「なんて気の短い奴だ。国益を守る方向で交渉してみましょう。」
キム・テクはイ・ソン(思悼世子)に言いました。
「よい方法があるのか?」
「清国への献上品をはるかに高価な物に変えるのです。使臣の機嫌を取れば少なくとも一度は交渉に応じるでしょう。」
キム・テクは世子に言いました。
「高価な献上品といえば人参(イムサン)ですね。」
ホン・ボンハンはキム・テクに言いました。
「その通りだ。」
「礼曹で手配したものよりはるかに高価なものを用意しましょう。」
「数も多いほうがよい。なじみの商団に頼んでおこう。」
キム・テクはホン・ボンハンに言いました。
「礼を言う。礼を言うぞ先生。」
世子はキム・テクに言いました。
「お礼を言うのは解決した後で結構です邸下。」
世子の秘密の隠し部屋。
「キム・テクら老論を警戒すべきです。老論はソ・ジダムの件を疑っています。」
左翊衛(チャイギ)ミン・ウソプはイ・ソン(思悼世子)に言いました。
「すぐにキム・テクを監視せよ。間違いなく老論は次の手を打ってくるはずだ。」
ナ・チョルチュの家。
高価な朝鮮ニンジンが集められました。
キム・テクはナ・チョルチュの家に現れました。
「商団長は私にも姿を見せんのか。」
キム・テクはナ・チョルチュの部下から茶菓子の接待を受けていました。隣の部屋にはナ・チョルチュがいました。
「うちの商団長は決して外部のお方に顔を見せません。」
ナ・チョルチュの部下は答えました。
「ご不快ならお帰りください。だが取引いただければ後悔はさせません。」
ナ・チョルチュは隣の部屋からキム・テクに言いました。
「そなたの商団の評判は聞いておる。我が家屋二棟だ。人参の代金は別に払おう。」
キム・テクは家の権利書をちゃぶ台に置きました。
「何なりとお申し付けください。」
ナ・チョルチュは言いました。
王宮の老論の会議室。
世子が大臣らの待つ部屋に現れました。
「邸下。御覧ください。領相(ヨンサン、領議政)が調達した人参です。高級、高級品です。皇帝も喜ぶでしょう。」
ホン・ボンハンは立派な朝鮮ニンジンを世子に見せました。
「使臣への贈り物も用意させました。これを見れば気が変わるでしょう。」
キム・テクは言いました。
「感謝する先生。」
世子はキム・テクに礼を言いました。
ナ・チョルチュの家。
「なぜキム・テクと取引を?」
ピョン・ジョンインはナ・チョルチュに尋ねました。
「敵の敵は味方だ。世子を陥れるという目的はキム・テクと同じだからな。」
「王宮に侵入し暗殺すればすむのでは?」
「まだ早い。俺たちの最大の武器は民心だ。世子と今上の無能を世に知らしめる。それでこそ世を変えられる。」
王宮の一角。
「キム・テクが人参に細工するやもしれぬ。明日慕華館に行くまでここの倉庫を見張ってくれ。」
イ・ソン(思悼世子)はミン・ウソプに命じました。
翌朝の世子の部屋。
チャン・ホンギは世子に倉庫に近づいた者はいなかったと報告しました。
慕華館に貢物が運び込まれました。ソ・ジダムも一緒に慕華館に入りました。
「これで世子は国本(クッポン、世子)の地位を失う。」
ナ・チョルチュはその様子を見ながらピョン・ジョンインに言いました。
老論の会議室。
「そろそろ騒ぎが始まる頃だ。若者の人生を台無しにするのは少し胸が痛むな。」
キム・テクはキム・サンノとミン・ベクサンに言いました。
慕華館。
「これは何ですか?」
使臣はホン・ボンハンに言いました。
「高級品です。いいえ。最高級品です。どうぞ中を御覧ください。」
ホン・ボンハンは最高級品の人参だと言いました。使臣が箱を開けると人参が虫に食われていました。
「世子邸下。我々を愚弄するのですか!」
「なぜこんなことに・・・。」
ホン・ボンハンはつぶやきました。
「交渉はなしです!我ら使臣団は帰国します!」
使臣は怒りました。ソ・ジダムは鋭い目つきで世子を睨みました。
「邸下を手助けするのが私の任務です。」
「違う。お前の任務は観察(カムサル)だ。世子をしっかり見張るのだ。怪しい動きがあればすぐ知らせろ。また老論を裏切ったら我が家門はおしまいだ。忘れる出ないぞ。」
王宮の世話人の部屋。
「長い一日だったわね。今日はゆっくり休みなさい。」
チェ尚宮はソ・ジダムに言いました。
「はい。媽媽様(ママニ)。」
「王宮に出入りできたら王と王世子の動き、警護の人数と配置を調べろ。」
ソ・ジダムはナ・チョルチュの言葉を思い出しました。ソ・ジダムは部屋の引き出しを開けて東宮殿世子邸下日課一覧という一枚の紙を取り出し書き写しました。
日中の王宮の門前。
清国の使臣が慕華館に到着しました。
老論(ノロン)派の会議室。
キム・サンノは世子は信用ならないので助けるべきかと言いました。兵曹判書ホン・ゲヒは今は世子のことよりも外交は国運に関わることが問題だといいました。ホン・ボンハンが部屋に入ってきて慕華館の接待は兵曹判書と礼曹がせねばならぬとホン・ゲヒを呼びに来ました。
慕華館(モファグァン)。
世子とホン・ゲヒとホン・ボンハンは清国の使臣と机を挟みました。
「すぐに宴の準備をさせよう。」
世子は使臣に言いました。
「いいや。宴はいらぬ。敵のもてなしは受けませんので。」
使臣は片手を上げて拒絶しました。
「敵とはあんまりではないか。」
「朝鮮は敵ではないとおっしゃるのならなぜ我々清国の民を攻撃したのですか。」
「誤解があるようです。貴国の漁船が朝鮮近海で操業したためやむを得なかったのです。なぜなら貴国の船員は武装しており・・・。」
ホン・ゲヒは言いました。
「やはり貴様(イノミ)は清国の敵だな!挑発しておいて責任をなすりつけるとは。」
使臣は机を叩き怒りました。
「なすりつけてなどいません。原因がわかれば清国と和解できるかと・・・。」
ホン・ボンハンも言いました。
「はっ!我々は和解など考えていません。我ら清国の皇帝陛下のご命令を聞きなさい。」
「朝鮮の黄海道(ファンヘド)近海で清国の民の漁船の操業を全面許可すること。黄海道(ファンヘド)の二か所の港を我が国の民の寄港地として使わせること、また朝鮮で清国の民が法に触れたとしても治外法権を認めること。」
二人の使臣が言いました。
「それは無理な要求だ。操業の制限は朝鮮近海から五里以内とする。だが望み通り寄港地を作り漁民のための宿も提供する。しかし我が国の中で罪を犯した者を我が国の法で裁けぬのなら真の国家とは言えない。ゆえに治外法権は認められぬ。」
イ・ソンは言いました。
「いいでしょう。王世子がおうおっしゃるのなら我々もすべて受け入れましょう。だが朝鮮は五万の兵をただちに派遣してください。」
「兵士だと?」
イ・ソンたちは驚きました。
「我が清国の乾隆帝は二度の西伐をお考えです。兵を派遣し朝鮮の忠誠心を示していただきたい。」
「世子邸下が陣頭指揮を執り共に前線で戦ってはいかがです?そうすれば皇帝陛下が朝鮮に抱く疑いを晴らせましょう。どうされますか?黄海道(ファンヘド)沿岸の全面操業と治外法権を認めるか、五万の軍を出すかどちらを取るかは朝鮮の自由です。だが拒否すれば朝鮮に開戦の意思ありとみなします。皇帝陛下の軍が朝鮮へと向かうでしょう。」
使臣が言うと兵曹判書は目を丸くして世子を見ました。
「分かった。少し時間をくれ。朝廷の重臣と話し合いたい。」
世子は立ち上がりました。
「三日待ちます。再び我が国と戦いたくないならどうか賢明なご判断を。」
老論の会議室。
世子は老論派の重臣たちと話し合いました。
「五万も派兵すれば国の財政が破たんします。」
ホン・ゲヒは世子に言いました。
「民も猛反発します。」
ミン・ベクサンは言いました。
「しかしいくら何でも治外法権は認められません。」
ホン・ボンハンも言いました。
「戦争を防ぐためならやむをえません。」
ホン・ゲヒは自分の考えを述べました。
「だが黄海道(ファンヘド)の民に犠牲を強いるぞ。」
イ・ソン(思悼世子)はホン・ゲヒに言いました。
「小さな犠牲には目をつぶるべきです。」
キム・サンノは言いました。
「私は国益を守る道を選ぶべきだと思う・・・。」
イ・ソン(思悼世子)は言いました。
「そのような理想論など・・・。猶予は三日だけです。操業と治外法権の許可を視野に入れましょう。何より時間が・・・。」
ホン・ゲヒは顔をしかめて苦言を呈しながら言いました。
「なりません。もし国益を損ねれば邸下は世継ぎの地位を失います。邸下がそうなったら大監は責任を取れますか!」
ホン・ボンハンはホン・ゲヒに向かってきつく言いました。
「何だと?邸下も同じお考えですか?地位のために譲歩したくないと?」
ホン・ゲヒはイ・ソン(思悼世子)に言いました。
「間違っているのか?」
イ・ソン(思悼世子)はホン・ゲヒに言いました。
「始まりから間違っています!!!今上は国運のかかった問題を国本(クッポン、世子)を試すのに使っておられる!邸下は邸下で地位が第一ときています。慕華館でまともな交渉もできずに使臣が帰国し清国が攻めてきたら後の祭りですぞ!!」
ホン・ゲヒは立ち上がって怒鳴り椅子を倒して部屋を出ていきました。
「なんて気の短い奴だ。国益を守る方向で交渉してみましょう。」
キム・テクはイ・ソン(思悼世子)に言いました。
「よい方法があるのか?」
「清国への献上品をはるかに高価な物に変えるのです。使臣の機嫌を取れば少なくとも一度は交渉に応じるでしょう。」
キム・テクは世子に言いました。
「高価な献上品といえば人参(イムサン)ですね。」
ホン・ボンハンはキム・テクに言いました。
「その通りだ。」
「礼曹で手配したものよりはるかに高価なものを用意しましょう。」
「数も多いほうがよい。なじみの商団に頼んでおこう。」
キム・テクはホン・ボンハンに言いました。
「礼を言う。礼を言うぞ先生。」
世子はキム・テクに言いました。
「お礼を言うのは解決した後で結構です邸下。」
世子の秘密の隠し部屋。
「キム・テクら老論を警戒すべきです。老論はソ・ジダムの件を疑っています。」
左翊衛(チャイギ)ミン・ウソプはイ・ソン(思悼世子)に言いました。
「すぐにキム・テクを監視せよ。間違いなく老論は次の手を打ってくるはずだ。」
ナ・チョルチュの家。
高価な朝鮮ニンジンが集められました。
キム・テクはナ・チョルチュの家に現れました。
「商団長は私にも姿を見せんのか。」
キム・テクはナ・チョルチュの部下から茶菓子の接待を受けていました。隣の部屋にはナ・チョルチュがいました。
「うちの商団長は決して外部のお方に顔を見せません。」
ナ・チョルチュの部下は答えました。
「ご不快ならお帰りください。だが取引いただければ後悔はさせません。」
ナ・チョルチュは隣の部屋からキム・テクに言いました。
「そなたの商団の評判は聞いておる。我が家屋二棟だ。人参の代金は別に払おう。」
キム・テクは家の権利書をちゃぶ台に置きました。
「何なりとお申し付けください。」
ナ・チョルチュは言いました。
王宮の老論の会議室。
世子が大臣らの待つ部屋に現れました。
「邸下。御覧ください。領相(ヨンサン、領議政)が調達した人参です。高級、高級品です。皇帝も喜ぶでしょう。」
ホン・ボンハンは立派な朝鮮ニンジンを世子に見せました。
「使臣への贈り物も用意させました。これを見れば気が変わるでしょう。」
キム・テクは言いました。
「感謝する先生。」
世子はキム・テクに礼を言いました。
ナ・チョルチュの家。
「なぜキム・テクと取引を?」
ピョン・ジョンインはナ・チョルチュに尋ねました。
「敵の敵は味方だ。世子を陥れるという目的はキム・テクと同じだからな。」
「王宮に侵入し暗殺すればすむのでは?」
「まだ早い。俺たちの最大の武器は民心だ。世子と今上の無能を世に知らしめる。それでこそ世を変えられる。」
王宮の一角。
「キム・テクが人参に細工するやもしれぬ。明日慕華館に行くまでここの倉庫を見張ってくれ。」
イ・ソン(思悼世子)はミン・ウソプに命じました。
翌朝の世子の部屋。
チャン・ホンギは世子に倉庫に近づいた者はいなかったと報告しました。
慕華館に貢物が運び込まれました。ソ・ジダムも一緒に慕華館に入りました。
「これで世子は国本(クッポン、世子)の地位を失う。」
ナ・チョルチュはその様子を見ながらピョン・ジョンインに言いました。
老論の会議室。
「そろそろ騒ぎが始まる頃だ。若者の人生を台無しにするのは少し胸が痛むな。」
キム・テクはキム・サンノとミン・ベクサンに言いました。
慕華館。
「これは何ですか?」
使臣はホン・ボンハンに言いました。
「高級品です。いいえ。最高級品です。どうぞ中を御覧ください。」
ホン・ボンハンは最高級品の人参だと言いました。使臣が箱を開けると人参が虫に食われていました。
「世子邸下。我々を愚弄するのですか!」
「なぜこんなことに・・・。」
ホン・ボンハンはつぶやきました。
「交渉はなしです!我ら使臣団は帰国します!」
使臣は怒りました。ソ・ジダムは鋭い目つきで世子を睨みました。
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