秘密の扉18話
目次
あらすじ 民との約束の感想
王の謁見の間。
世子が役人の登用試験(科挙)を両班以外の身分の男子でも受けられるようにすると言うと、両班だけでなく英祖も猛反対しました。両班と士大夫の特権がなくなることを恐れての反対でした。(思悼世子)は乱心したと言いました。
「両班家士大夫でもない者にも科挙を受けさせるだと?」
英祖は息子に尋ねました。
「父上の教えに従ったまでです。」
イ・ソン(思悼世子)は答えました。
「何だと?」
「均(キュン)。民は身分の差なく均しい。父上のお言葉です。均役法(キュニョクポ)に父上が心血を注いだのは両班とそれ以外の身分の差なく平等に暮らす朝鮮を作るためではありませんか?」
「日々の暮らしは、平等であるべきだ。だが政治となれば話は別だ。」
「有能な農民や商人が国を動かし両班家士大夫が農業や商いをしてもよいのです。」
「それでは秩序が保てぬではないか!身分制度をひっくり返したら、民はどうするのだ。奴らは王室を侮り否定してくるのがわからんのか。」
「そんな王室に存在価値はありません。」
「い・・・今何と言った?」
「士大夫を盾にしなければ民に侮られる王室など・・・王室は・・・なくなればいいのです。」
「お・・・お前は私の王室が滅んでもよいというのか!」
「王室の権威は民の支持と信望を得てこそ輝きを放つのでは?今こそ賢明なご判断を下すべき時です。」
「民の望みを聞き入れたとして王室の支持と信望は得られん。民を適切に統制し恐怖心を植え付けろ!そうすれば民は服従し支持するだろう。今すぐ科挙に関する規定を元通りにせよ。白紙に戻すのだ。」
「それはできません。」
「お前がどう考えようと科挙は従来通り行う。都承旨。都承旨はいるか?今すぐ礼曹判書をイ・ジョンソンからミン・ベクサンに変えろ!」
「越権行為ではありませんか!」
「人事権は私にある。」
「意見が食い違うたびに人事権を行使すれば・・・。」
「お前はこの国の秩序を乱し危険に晒している。単なる意見の食い違いではない。私はこの国朝鮮を守ろうとしている。」
「民は猛反発するでしょう。」
「また私に血の粛清をさせる気か?お前が自分で鎮圧しろ。それがお前にできる唯一のことだ。」
礼曹判書の執務室。
礼曹判書で少論の首領イ・ジョンソンの執務室にミン・べクサンが子分を連れて押しかけ世子イ・ソンは乱心したと言いました。
「ご退室ください。大監はもう礼曹判書ではないのですから。殿下は後任に私を任命なさいました。」
「恥を知れ。国本(クッポン、世子)の説得に失敗したからと殿下にすがるとは。」
「乱心者(世子)には理解できません。」
「乱心だと!」
「両班と平民が平等など乱心にほかなりません。礼曹に居座るつもりなら今すぐ強制退去させます。大監に失礼な真似はしたくありません。」
ミン・ベクサンが言うとイ・ジョンソンは立ち上がって部屋を出ました。
都城。
世子の命令は英祖によって取り消されお触れが撤去されました。
「どうせ無理だったんだ。」
東宮殿内官のチャン・ホンギは弟のチャン・ドンギに言いました。
チャン・ホンギの弟チャン・ドンギは泣き崩れました。
「こんなバカな話があるかよぉ。」
鳴砂団(ミョンサダン)の一員で貸本屋の主人イ・ダルソンも泣きました。
鳴砂団(ミョンサダン)の棟梁ナ・チョルチュはイ・ダルソンを慰めました。
イ・ソン(思悼世子)はミン・ウソプに引き下がるべきか尋ねました。
「左翊衛(チャイギ)。そなたはどう思う?私が引き下がるのが正しいと思うか?」
「邸下のためには正しい判断です。大殿の主がお怒りですから。」
ミン・ウソプは邸下の御身を守る判断が正しいと世子に言いました。
「父上の怒りと夢破れた民の怒りとどちらが大きいだろう。」
世子は破られた張り紙を握りしめました。
礼曹正郎(イェジョチョンナン)のチョン・チャンイは世子の様子を見張っていました。
朝廷の老論の会議室。
「世子が布告文を拾っているだと?」
ミン・ベクサンたちはチョン・チャンイから報告を受けました。
「もう世子を制御できん。自らこの手でこの国を亡ぼすまで突き進むだろう。違いますか?そろそろお立場を明確にしてください。大監は科挙制度についてどう思いますか?邸下と同じ考えですか?」
ホン・ゲヒはホン・ボンハンに言いました。
「まさか。」
「ならばなぜはっきり反対と述べないのだ。もし世子の側につくなら我々は大監を老論とは認めんぞ。除名されたくなければ態度を明確にしろ。」
領議政キム・サンノはホン・ボンハンを脅しました。
「領相大監(ヨンサンテガム)・・・。」
ホン・ボンハンは窮地に立たされました。
夜のキム・サンノの家。
キム・サンノはミン・ベクサンを部屋に呼びました。
「今回の科挙でも我々老論の士大夫に便宜を図ってやらねばならぬ。」
キム・サンノはミン・ベクサンに言いました。
「従来通りそういたします。」
「手段を問わず機会を掴んで老論の朝廷を作り上げるぞ。そうすればいつでも世子を切り捨てることができる。」
ミン・ウソプは二人の会話を聴いていました。
世子の執務室。
ミン・ウソプは世子に報告しました。
「老論が科挙の不正を企んでいると?」
「従来通りと言ってました。昔からのようです。」
「もしも、もしもの話だ。彼らの不正を立証できればこの状況を打開できるかもしれない。」
ミン・ウソプはは鳴砂団(ミョンサダン)のイ・ダルソンの密書を受け取ったと世子に手紙を見せました。
「諸平民が望めば受験できる方法を吾(われ)は知っている。いつもの場所で待つ。どういうことだ?」
「無視してください。東宮殿は監視されていて出られません。」
夜更けの鳴砂団(ミョンサダン)の砦。
世子は東宮殿を脱出し鳴砂団(ミョンサダン)と接触しました。
「そなたは・・・。」
イ・ソン(思悼世子)はナ・チョルチュを見て驚きました。
「ご無沙汰しております。邸下。」
ナ・チョルチュは世子に言いました。
「そなたが商いをやっていたとは・・・。」
「逃亡の末、義州(ウィジュ)に流れ着きました。ウィジュで世話になった商団の団長が亡くなり私が跡を継ぐことになりました。」
「よかったな。それで、都城にはいつ戻ったのだ?」
「最近です。」
「チダムの消息は分かるか?」
イ・ソン(思悼世子)はナ・チョルチュを試しました。
「ウィジュへ逃げる途中にはぐれてしまいました。以来捜し続けていますが手がかりはなく・・・。」
「芙蓉齋(プヨンジェ)の女主人(ウンシむ)に話は?」
「知らぬそうです。」
「おそらくチダムのためにそう答えたのだな。」
「どういう、ことですか?」
「チダムは私のところにいる。」
王宮の塀。
元従事官ピョン・ジョンインは口笛を吹くと中に竹筒を投げ込みました。
チダムは筒を拾いハングル語の手紙を読みました。
「団長はお前の行方を知らないことになっている。」
ナ・チョルチュの家。
「本題に入ろう。平民が科挙を受ける方法があるそうだな。」
世子はナ・チョルチュに言いました。
「そのとおりです。」
「どんな方法を考えたのだ。」
「受験を禁じたのは誰ですか?私めは老論と殿下と聞きましたが・・・。」
「耳が早いな。」
「商人にとって耳は命です。殿下の指名した礼曹判書ミン・ベクサンが科挙で大きな不正を企んだらどうなると思いますか?科挙の意味が揺らぐほどの不正ならどうなります?」
「国王の人事は失敗となる。」
「不正の事実が民に知れ渡ればくすぶった心に火がつきはじめます。」
「・・・・・・。私に父王を攻撃せよというのか?人事の失敗を理由に父王を攻めろと?」
「攻めるお気持ちはありますか?」
「・・・民との約束を守るか?と聞くべきだ。ほかに道がないなら進もう。私は何としてでも平民に受験の機会を与えたい。」
「では我々にも協力してください。」
「それでひとつ尋ねたいことがある。老論が不正を働くという情報はどこで知った?」
紙漉き場。
ナ・チョルチュは商団の紙漉き場にイ・ソン(思悼世子)を案内しました。
「それは、紙がきっかけです。礼曹判書にミン・ベクサンがなってから上質紙の注文が増えました。厚みや色はもちろん風合いまで普通の紙とは違います。上質紙を使うのは権力者の子弟。試験官はそれを見て手心を加えます。老論の子息は礼曹が指定した店で紙を買う段取りになっているとか。」
「その店がわかれば・・・。」
「まずは一歩前進するでしょう。」
日中の殯宮。
英祖の正室、貞聖王后(チョンソワンフ)の位牌の前で英祖は耳をほじっていました。扉が勝手に開きました。
「勝手に入るとは何者だ!」
英祖は前妻を愚弄しているところを見られることを恐れて耳ほじりをやめました。
「私です。キム・サンノでございます。亡き中殿媽媽の位牌堂になぜお出向きになったのですか?」
キム・サンノが床に手をつきました。
「文句を言ってやるためだ。なぜ私を残し急いで世を去ったのか。大君を生まずに死ぬから側室の子が世継ぎになったのだと。そう文句を言ってやるために来た。」
「中殿媽媽は何とお答えになりましか?」
「お前バカか?死んだ者が答えるわけないだろう。」
「今からでも正室を迎え大君をおつくりになってはとお答えになったのでは?」
「何が言いたい。」
「中殿媽媽が亡くなられて二年が経ちました。長い間国母の座を開けてはなりません。」
「領相(ヨンサン、領議政)。」
「新しい王妃様をお選びになるべきです。そして大君を腕にお抱きになってください。」
「何が狙いだ。なぜ中殿(チュンジョン)に大君を産ませろと?」
「世子の作る朝鮮は危険だからです?」
「危険な朝鮮だと?」
「身分秩序を崩すことは国の崩壊を意味します。国本(クッポン、世子)がお考えを貫き通しても王位を継がせるのですか?」
「考えを曲げさせる。」
「意地を張ったらどうしますか。それでも王位は国本(クッポン、世子)に継承されます。ほかにいないからです。」
「ならばお前が王を選べ。」
「私めはキム・テクとは違います。殿下をしのぐ権力など持とうとは思いません。殿下の庇護のもと殿下から賜った権力だけで十分です。どうか新しい中殿をお迎えし直系の大君をおつくりください。それがこの国朝鮮を守る唯一の道ではありませんか殿下。」
嬪宮の部屋。
「王様は新たな王妃様をお迎えするようです。」
ホン・ボンハンは嬪宮ホン氏に言いました。
「好都合ではありませんか。父王は次の中殿に世子様の生母映嬪(ヨンビン、イ氏)媽媽をお考えです。大殿の女官にもそう伝えていたそうです。」
「そのお考えは覆されるかもしれません。領相(ヨンサン、領議政)キム・サンノが単独で殿下に拝謁していました。老論は邸下をその座から引きずり下ろす気勢です。」
「科挙の件ですか?」
「そうです。殿下を説得したはずです。新たな世継ぎを産むために王妃をお迎えせよと。」
「世継ぎを産める者・・・ムン昭媛(ソウォン)が有力です。」
「そうです。ほかにいません。古希も近い殿下が民間から妃を迎えるとは思えません。」
昭媛(ソウォン)ムン氏の部屋。
ムン氏はキム・サンノを呼び自分を王妃にしろと言いました。
「私が王妃にもっともふさわしいのです。私を中宮にしてください。ならば大監は次期国王の右腕となるでしょう。」
「考えておきます。」
「考えるまでもなく贈り物があります。東宮殿に怪しい女官がいます。亡きパク尚宮の姪という話ですが嘘のようです。世子が外から連れ込んだ女というのが私の推測です。」
夜のキム・サンノの家。
「すぐにパク尚宮の家族を連れてこい。」
キム・サンノは剣契西方(コムゲソバン)の頭目フクピョに命じました。フクピョはすぐに部屋を出ました。
「東宮殿にいる怪しい女官とはもしやソ・ジダム。逆賊ソ・ギュンの娘ではないか?」
キム・サンノはミン・ベクサンに言いました。
「逆徒の娘を連れ込むような大胆な真似を世子が?」
「この頃の世子ならあり得ると思わんのか?」
パク尚宮の実家。
フクピョは手下を連れてパク尚宮の実家に行きましたが誰もいませんでした。すぐに近所の民が集まってきて騒ぎました。
「近所から金を借りて逃げたのよ!」
「お前らは何だ。パクとどんな関係だ。パクを出せ!正直に言え!」
暗い路地。
「ご苦労だった。」
ホン・ボンハンは男女に金を投げました。
「ありがとうございます。」
騒ぎを演出した男女は正座したまま金を懐にしまいました。
キム・サンノの家。
フクピョはキム尚宮が夜逃げしたとキム・サンノに報告しました。
嬪宮ホン氏の部屋。
父ホン・ボンハンは娘に報告をしに戻ってきました。
「老論の目が邸下に光っているのに媽媽までなんて真似をするのですか。ソ・ジダムを追い出すのです。」
「今すぐ追い出したらかえって怪しまれると思いませんか?」
「ああ・・・媽媽らしくもない。媽媽は誰にそそのかされたのですか。」
宮殿の廊下。
「お呼びですか。」
ソ・ジダムは世子に言いました。
「着いてこい。」
世子はソ・ジダムとチャン・ホンギを連れて秘密の扉の前に行きました。
秘密の部屋。
世子はチダムを秘密の部屋に案内しました。チダムは数々の禁書「ホンギルドン伝」をどけて「文会所(ムネソ)殺人事件第二巻」を手に取りました。
「私はそなたのお父さんを守れなかった。だが彼の手で作られ世の人々を笑わせ泣かせた本だけは救いたかった。そなたに渡せたらと。」
世子が言うとソ・ジダムは第二巻を胸に抱いて泣きました。
イ・ソン(思悼世子)は泣いているチダムの肩にそっと手を置きました。
世子の私室。
「手紙だ。そなたが世子嬪の母上に渡してくれ。」
世子はチダムに手紙を渡しました。
「はい。」
「それから・・・。行って来い。喜ぶだろう。」
世子はもう一つの手紙をチダムに持たせました。
王宮の門。
「世子邸下のお手紙を届けに行きます。」
ソ・ジダムは門番に告げて王宮の外に出ました。
鳴砂団(ミョンサダン)のナ・チョルチュの家。
ソ・ジダムは世子の手紙をナ・チョルチュに見せました。
「まずはチダムに使いを送る。判書内人(ポンソナイン)ゆえ王宮に出入りしやすい。だが発覚の恐れがあり何度も送れない。ゆえに迅速に連絡が取れる方法が必要だ。貸家貸本の方法を用いる。」
「邸下の印象は?我々が手を貸してもよいか?」
ナ・チョルチュはチダムに言いました。
「無論です。邸下はあのころと同じですから。」
ソ・ジダムは答えました。
世子の部屋。
イ・ジョンソンは都を離れると世子に言いに来ました。
「申訳ありません。私が至らないせいでなんの成果もおさめられずに実に恥ずかしい。」
「まだ離れてはならぬ大監。大監の罷免は残念だが我々の戦いはまだ終わってない。」
「邸下・・・。」
「不正を働きそうな礼曹の役人を探れ。連絡係として協力者を送る。」
世子が言うとイ・ジョンソンはうなずきました。
夜のイ・ジョンソンの家。
「邸下の使いか?」
「調査はどうなりました?」
覆面をしたナ・チョルチュがイ・ジョンソンを尋ねました。
「じきに報告できるはずだ。」
イ・ジョンソンはこそこそ声でナ・チョルチュに言いました。
「私はまた戌の刻に来ます。」
ナ・チョルチュは堂々と言いました。
夜中の世子の執務室。
「まだ成果なしとは。」
世子はつぶやきました。
「科挙が迫っているのに調査は進んでいません。大丈夫でしょうか。こうなったら私も動いて・・・。」
ミン・ウソプは言いました。
「いや。我々の行動は監視されている。だから動かぬほうがよい。極秘で進めるのだ。老論と父王に感づかれてはならぬ。だから他のものが動いたほうがよい。」
戌の刻。無職のイ・ジョンソンの家。
「この者らが怪しい。しかし重要なのは誰がではなくどう不正を犯すかだ。」
イ・ジョンソンはナ・チョルチュに手紙を渡しました。
礼曹参議チェ・イマンは家で科挙の手引書を販売し大金を受け取っていました。
ピョン・ジョンインはチェ・イマンの家を覗き見てナ・チョルチュに報告しました。
「提調、新義、禮記省喜、これらの手引書を試験の担当役人が売っています。それも高値で。しかしさらに上手がいます。」
秘密の部屋。
ソ・ジダムは世子に竹筒を渡しました。
「試験問題を漏らしている?いったいどのような者たちだ。」
ナ・チョルチュの部屋。
「イ・ジョンソン大監に渡してください。チェ・イマンとチョン・チャンイが網にかかりました。」
ピョン・ジョンインはナ・チョルチュに手紙を渡しました。
「見事な手腕だ。」
「こう見えても元左捕庁(チャポチョン)の従事官ですから。」
世子の執務室。
「礼曹参議チェ・イマンと正郎チョン・チャンイら?」
世子はピョン・ジョンインのメモを受け取りました。
「二人とも、父上(ミン・ベクサン)の腹心の部下です。」
ミン・ウソプは世子に言いました。
「不正を働いた証拠と、証人まで押さえた。そなたは、これから、どうすればいいと思う?」
「攻撃すべきでは?」
「ほかの方法はないか?いや。私の行動は正しいのか。」
「邸下・・・。」
「礼判のそなたの父と部下の不正を万民にさらして人事に失敗したのは私の父でありこの国の君主だとこのように暴き立てて政治を押し通そうとするのは正しいことか?」
「邸下は民との約束があります。平民にも科挙を受けさせるという約束をお破りになるのですか?」
日中の喜雨亭(ヒウジョン)の庭。
「お呼びですか?」
ミン・ウソプは世子のもとに参じました。
「いくら考えても民との約束は破れそうにない。」
「攻撃する決心が、つきましたか?」
世子はうなずきました。
「そなたは本件から外れるがよい。どんな重い罪でもそなたの父が目の前でとらえられては不名誉だろう。」
「・・・・・・。」
ミン・ベクサンの家。
イ・ソン(思悼世子)はミン・ベクサンを尋ねました。
「拙宅に何の御用でしょうか。」
ミン・ベクサンは世子に言いました。
「大監が部下のチェ・イマンとチョン・チャンイとともに不正を企てたのは知っている。証拠も証人も押さえている。私が今大監に罪を問い人事に失敗した君主の責任を問えばどうなる?平民への受験許可を認められるかもしれない。大監はそう思いませんか?」
「禁府都事に逮捕をお命じになればよいのになぜ私に言うのですか?」
「大監に機会を与えたい。一連の不正を大監が正してくれ。そうすれば私も機会を得られる。」
「何の機会です?」
「父王の敵にならぬ機会だ。説得する道を切り開きたい。とにかく一度平民に対して受験の機会を与えたい。合格者がいなければ私は引き下がる。だが合格者が出ればその結果をもとに父王を説得したいのだ。」
「今私を捕らえるならおとなしくついていきます。だが平民に科挙を受けさせるのは、賛成できません。」
ミン家の庭。
「来るなといったはずだ。何をしている。」
世子はミン・ウソプに言いました。
「すみません。」
ミン・ベクサンの部屋。
「なぜそこまでなさるのですか。不正を犯してまで、父上は何をお守りになりたいのです。」
ミン・ウソプは父に言いました。
「下がれ。」
「今ご決心なされば父上の手で不正を正せます。」
「下がれと言ったのだ。」
「過ちを正して、やり直せます。どうかお願いします。私にも父上から学ぶ機会をください。自分と異なる意見を間違いと決めつけない度量と知恵を、父上から学びたいのです。今回だけは、ご英断していただけませんか。失敗に終わったとしても、邸下はそこから何かを学ばれるでしょう。どうかご理解ください。父上。」
「頑固なやつめ・・・。」
ミン・ベクサンはため息をつきました。
王の謁見の間。
「世子がそなたを訪ねてきたと?」
イ・グム(英祖)はミン・ベクサンに言いました。
「そうでございます。」
「それで何と?」
「試験場で直々に出題なさりたいと言われました。」
「直々に?」
「世子が直々に試験場に出向くのか?なぜだ。」
「礼曹から問題が流出したとの情報が入ったそうでございます。公正な試験を行うために国本(クッポン、世子)のご臨席のもと行うのも悪くはないかと。」
「・・・・・・うん。わかった。そのようにいたせ。」
「すぐにまんがかうにだ(ありがたき幸せ)。」
世子の執務室。
「私は父王を説得できそうだ・・・。皆が反対する中、そなただけが味方となり、私と共に戦うと大監は言ってくれた。そなたの忠誠心は一生忘れない。もう忘れず隠居してほしい。そして達者でいてくれ。」
世子はイ・ジョンソンに手紙を書きました。
イ・ジョンソンの部屋。
「隠居か・・・。」
イ・ジョンソンは覆面をしたナ・チョルチュから世子の手紙を受け取りました。
世子の私室。
イ・ソン(思悼世子)はミン・ウソプとチャン・ホンギを部屋に呼びました。
「意図を悟られぬよう平民を試験場に集めねば。そなた(チャン・ホンギ)に頼みがある。」
チャン・ドンギのいる部屋。
チャン・ホンギはチャン・ドンギに世子に直訴するように言いました。
「あきらめるのは惜しい。だから試験日に同じ境遇の平民と一緒に直訴するんだ。ダメ元だろ?やってみろ。」
「・・・・・・。」
科挙の試験当日。
平民の男女らが門の外にひれ伏して侍る中、世子は会場に輿に乗って到着しました。チャン・ドンギが銅鑼を叩くと平民の男たちが集合しました。
「機会をください邸下。」
「地方から上京したのです。」
「これではあんまりです。」
試験会場に入れなかった平民たちが世子に直訴しました。
「邸下。どうか科挙を受けさせてください。」
「邸下。早く中へ。」
突然、朝服を着たイ・ジョンソンが現れました。
「私は彼らを率いて・・・。」
イ・ソン(思悼世子)は言いかけました。
「まずは中にお入りになるのが身のためです。左翊衛(チャイギ)は邸下をお連れして門を閉めろ。」
イ・ジョンソンは世子に危険を知らせに来たようでした。
科挙の試験場。
「世子邸下のおなーりー。」
チャン・ホンギが言うと世子はイ・ジョンソンとミン・ウソプを伴い会場に入りました。
「受験したいのです!」
「門を開けてくださーい!」
「我々にも機会をー!」
門の外で平民の男たちは合唱しました。
「あの者たちにも試験を・・・。」
世子は門の外に出ようとしましたがイ・ジョンソンが両手を広げて立ちはだかりました。
「なりません。」
「なぜ今になって阻む。」
「邸下の手で門を開けてはなりません。主犯として罪を着ることになります。邸下。危険を冒してはなりません。彼らを呼び集めた責任は私がとります。私が恥を忍んで生き残ったのは邸下をお守りするためです。ですから私に門を開けさせてください。この老いぼれの最後の願いです邸下。」
「門を開けてくださーい。」
イ・ジョンソンは門を開けました。
「皆入りなさい。科挙を受けたい者全員に機会を与えようーーー!」
イ・ジョンソンは大声で言いました。平民たちは両手を挙げて喜び科挙の会場に乗り込みました。
イ・ソン(思悼世子)は泣きそうな微笑をイ・ジョンソンに向けました。
感想
ほほう。イ・ジョンソン、今回はいいモンの役なのですね。「奇皇后」のヨンチョルや現代劇でいつも悪役ばかりでしたので、今回の役どころは輝いています。確か俳優さんの名前は・・・チョン・グクファン。高倉健を横に引き延ばしたようなお顔ですね。きっと似たような造形のDNA(遺伝子)をお持ちなのでしょう。そしてミン・ベクサンですね、いつも金に汚い役柄を演じるこの人も、「秘密の扉」でも金と権力が大好きなおじさんです。今回は親しみ難い役柄ですね。このオム・ヒョソプは「朝鮮ガンマン」でヒロインのチョン・スインのお父様の役を演じていましたね。それはそうと今回の「秘密の扉」第18話が政治の駆け引きに、いつ逆賊として殺されるかわからない危険をはらんでおり非常に危険な展開ですね。そんな中で英祖を除く登場人物たちが不思議とイキイキとしています。英祖は本当にダメな男として描かれていてwだめだこりゃって感じですね。キム・サンノは老論の党首としては役不足な無能人間でありながら、堂々と党首を演じています。無能でも役人になれたり総理大臣になれたりする世の中、いいえ、無能でも王になれる世の中をこの「秘密の扉」では表現しているようです。しかしこの少論(ソロン)、チョ・ジェホ以外はまるで正義の味方ですね。実際の少論派はどうだったのでしょう。チョ・ジェホは老論に属したほうがいいんじゃない?この老論と少論、調べてみると、もとはひとつの派閥、西人(ソイン)派だったようですね。トンイの時代に粛宗が粛清したせいで派閥が二つに分かれちゃったとか。ならば政治的なポリシーはもとは同じだったというか、信念も何もなくて実態は儒教を利用してただ権力が欲しかっただけの団体だったのでしょうね。源流をたどれば南人も士林派にたどり着くという。どっちにしろ悪党しかいないのだから英祖がいくら「蕩平策」で士大夫を均等に採用したって、悪いやつのすることは「一つ」しかありませんからうまくいきっこないのです。
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