運命のように君を愛してる
目次
概要
「運命のように君を愛してる」(韓国語: 운명처럼 널 사랑해)は2004年の7月2日から9月14日に韓国のMBCで水曜日と木曜日に放送されたドラマです。2008年に台湾で放送され高視聴率を獲得した「命中注定我愛你」(英語: Fated to love you)をモデルにしています。
優しいだけが取り柄の女と、短命のため社長の座が脅かされている男が出会うジェットコースターラブストーリーです。
2014年 MBC演技大賞ミニシリーズ部門最優秀演技賞ベストカップル賞を受賞。
平均視聴率は9.8%~12.2%。同時間帯にイ・ジュンギ主演の「朝鮮ガンマン」と放送がかぶっていました。
演出はイ・ドンユン(神々の晩餐) 、キム・ヒウォン。脚本はジュ・チャンオク 、 ジョ・ジングク。
登場人物/キャスト
イ・ゴン(チャン・ヒョク演)
チャンイン化学の社長で37歳くらい。全州李氏(※朝鮮国王を出した家門)の9代目。チャン・ヒョクが演じる。チャン・ヒョクは1976年生まれの俳優。代表作に「推奴(2010年)」「アイリス2(2013年)」「根の深い木(2011年)」「客主(2015年)」など。
キム・ミヨン(チャン・ナラ演)
法律事務所の庶務。ドラマでは33歳くらい。職場でポストイット(付箋紙)と呼ばれて雑用を押し付けられる。いわば私奴婢的な扱い。平凡な名前で仕事も平凡。チャン・ナラが演じる。チャン・ナラは1981年生まれで歌手でもあります。「もう一度ハッピーエンディング(2017年)」など。
キム・テホ=ダニエル・ピット(チェ・ジニョク演)
ダニエル・ピットという芸名で活躍する世界的デザイナー。キム・ミヨンという妹を捜して韓国に来た。チェ・ジニョクが演じる。チェ・ジニョクは1986年生まれの俳優。代表作は「九家の書(2013年)」「相続者たち(2013年)」と実年齢より老け役が多い。
セラ(ワン・ジオン演)
ニューヨークで働くバレリーナ。ゴンと6年つき合ってる彼女。ワン・ジオン(왕지원)が演じている。ワン・ヂウォンは1988年生まれ。「グッドドクター(2012年)」など。
各話あらすじ
各話のあらすじと、1話ごとの感想を書いてます。
- 運命のように君を愛してる 2話
- 運命のように君を愛してる 3話
- 運命のように君を愛してる 4話
- 運命のように君を愛してる 5話
- 運命のように君を愛してる 6話
- 運命のように君を愛してる 7話
- 運命のように君を愛してる 8話
- 運命のように君を愛してる 9話
- 運命のように君を愛してる 10話
- 運命のように君を愛してる 11話
- 運命のように君を愛してる 12話
- 運命のように君を愛してる 13話
- 運命のように君を愛してる 14話
- 運命のように君を愛してる 15話
- 運命のように君を愛してる 16話
- 運命のように君を愛してる 17話
- 運命のように君を愛してる 18話
- 運命のように君を愛してる 19話
- 運命のように君を愛してる 最終回20話
総合感想
このドラマではあり得ないことばかりが起こります。まさに世の中の常識を破ることで大胆なストーリーになっています。まずはミヨンという女性です。
ミヨンはあり得ないくらいに「優しい女性」として描かれています。絶対に怒鳴ることも起こることもありません(笑)ほんとうに人の頼みは何でも聞いてあげる大人しくて優しくて存在感のない女性です。わがままは言いません。
ゴンはあり得ないくらいに短命の家系に生まれました。でもその病気は現実にある病気で特に父を通じて高確率で遺伝する病気です。序盤ではまだ病気は現れていませんが、肝心な場面で症状が出て来ました。
キム・テホもまたあり得ないくらいスーパースターです。カリスマと作品が伴ってる役柄です。テホは初期から人格が高潔で、ミヨンを支えています。
セラは、お金持ちのお嬢様で、親の援助でニューヨークに行って、厳しいアメリカでバレリーナをやってます。友人とルームシェアをしていて、ゴンという彼氏がいてなんの問題もなく人生が順調でした。
不思議な出会いから、ラブストーリーが発展していきます。
まずゴンとミヨンが、ミヨンの縁者の社長が作った精力増強剤で出会ったその夜にHしてしまって身籠ってしまうのです。
そこから話が始まるので、まるで昔話のようなお話です。
常識破り
このドラマの重要なキーワードとして「常識を破る」ということがあります。ドラマの中身はほとんど常識破りです。
- 普通の事務員が大企業の嫁になれ二人のイケメン富豪から求愛されるはずがないという常識
- 出会ってすぐ妊娠して結婚するのはあり得ないという常識
- 夫婦が好きなのに別れて、再開するのはあり得ないという常識
- 平凡な人がお金持ちに引き立たれてビジネスで成功するのはあり得ないという常識
- 愛人とその子が母屋に住むなんてあり得ないという常識
- 富豪のおばあさんが平凡な女性を嫁にしたいなんて思うはずがないという常識
これらの常識を破ることでドラマが面白くなっています。
要するに、常識に縛られていては楽しい人生は歩めないという側面が浮かび上がってきます。
お金持ちは、仕事以外は、ある程度自由です。お金持ちがおカネを稼ぐためには常識は知識としては役に立っても行動規範としては役に立ちません。
なぜなら常識というのはみんなが共有している価値観ですから、労働者(奴隷)の役に立っても、支配者層には役に立たないものだからです。
お金持ちは、自分が嫌なら、それをやめなければお金は稼げないのですから、労働者みたいに耐える必要はありません。我慢していてはおカネが稼げないからです。だからといって労働者が我慢をやめると、すぐにクビになって貧乏人になってしまいます。
ですから、立場によって価値観が180度違うということになります。
エリー・キムと運命・輪廻
キム・ミヨンは途中でエリー・キムに生まれ変わって再登場します。3年の歳月をかけてフランスのパリで絵画の技術を習得しました。エリー・キムの作品の特徴は自分の内面の表現、そしてすべての女性の内面の表現です。はじめに、ゴンを象徴した絵を描き、ケットンを象徴した絵や、自分の幼心を表現した作品が紹介されます。そして、ゴンの会社と契約して「すべての女性に共通する少女」を描いた作品を作りました。ゴンは一目見た瞬間にそれがケットンの絵だとわかって欲しくなりました。でもミヨンにはケットンという心の支えが必要だと思い直して作品を返しました。ゴンにとってもケットンが必要だったにもかかわらず。ゴンもまたケットンを死なせてしまい、苦しんでいたのでした。しかし、我が子への執着を先に手放したのはゴンのほうでした。ゴンのほうがミヨンよりも精神的にすぐれていて大人であるという表現がこのドラマでは必要だったのです。なぜなら世界共通の条件として、夫のほうが妻よりも精神的にすぐれている、だからこそ妻を抱擁する能力があることを証明しなければいけないからです。妻子を養うためには夫はすぐれていないといけないという暗黙の価値観がそこにあります。仮に妻のほうがすぐれていたら、妻が夫と子を養育するはめになるから夫という子どもが一人増えたぶんだけ負担が大きくなります。それは女性という生きものとしては、重荷であり寿命を縮めるものですから。理想的な家庭を描くには、ゴンやテホがすぐれた男性であることが必要なのです。
実際の世の中には夫も妻ともども幼稚であることもしばしばです。そんな家庭に育った子どもは大きく勘違いをしたまま、それが当たり前だと思って大人になり、何世代にもわたり負の連鎖が続きます。これが、いわゆる輪廻というやつです(宗教では生まれ変わりということになってますが、本質はコレです)。ドラマには直接関係ありませんけど、子孫が幸せになるためには自分本位であることをゴンのように捨てなければなりません。つまりは、幸せになるには、ある程度、賢くなって、それを子孫に伝えないといけないのです。賢くなるとは、勉強のことではありません。人間として人格を完成させることです。ここに人間の生命という本質が見えてくると思います。ゲスな生き方をしている人は、そういうことが先祖代々繰り返されて来た場合が多いということです。自分が変わらない限り、それを変えることができないというのが、世の中の本質でもあります。
ダニエル・D・ピットの見守り
韓国ドラマでは、女性主人公を盛り上げるために、ライバル役の男性がよく登場します。ダニエル・D・ピットは本名をキム・テホといい、演じている俳優はチェ・ジニョクです。ダニエルは生き別れた妹を捜しに韓国にやって来て、妹と同姓同名のミヨンと縁を結び、ミヨンを励まし見守っているうちに愛するようになりました。ダニエルにとってミヨンは穢れなき優しい女性であり、生母マリアを彷彿とさせる人物です。ダニエルはミヨンが男と一夜関係の契りを結んで妊娠して苦しむ様を見て憐れみの気持ちで接します。男が妊婦で、しかも他人の夫を好きになるというのは背徳的な出来事でもあります。ドラマの中では描かれませんでしたが、テホは妊婦の女性を愛することについて、自問自答しないはずがありません。いつも涼しい表情ですから、さほど苦悩はなかったのでしょうし、自分の気持ちや社会的な価値観を冷静に勘定していたものと思われます。なぜなら、もしテホがのたうち回るほどの苦しみを抱えていたら、ミヨンを守り続けることは精神的に無理となってしまいます。でもずっとミヨンを見守れるのは、かなりメンタリティーが強くなければ不可能です。ダニエル・ピットは心が強い男を象徴しています。ドラマの戦略的には女性にとってダニエルは「逃げ道」「もしもの保険男」「二番手の男」「贅沢な選択肢」「火遊びの種」でもあるでしょう。
ゴンとミヨンが得たもの
このドラマの元ネタが何なのかわかりませんが、ゴンは王子様でありながら、ハンチントン病の家系に生まれました。ハンチントン病は男系にて高確率で遺伝する病です。ドラマの中で、ゴンは一時、症状のひとつが出ていました。しかし、ハンチントン病のメインの症状は現れていなかったように思います。ゴンは幼いころに父母を亡くし、父母のわずかな思い出とともに、祖母にかわいがられて何不自由なく育ちました。ゴンのお母さんは交通事故でお父さんと同じ日に、亡くなったそうです。ゴンの性格は、賢く聡明で、正義感もあり、悪人が嫌いです。これまでセラ一筋だったのに・・・そこに聖母のような女性が現れたのです。
ミヨンは、平凡な庶民の生まれで、シングルマザーに育てられました。ミヨンは平凡な事務の仕事をしていました。ミヨンは優しすぎて人の頼みを断れないという、生まれながらにマリアのような慈悲の心を持った人でした。私はキリスト教には詳しく無いので断言はできませんが、おそらくはキリスト教のネタが背景にあるんだと思います。ミヨンの欠点は「悪」を見抜く能力がないことです。善人も悪人も分け隔てなく愛するために、悪など気にもとめたことがなかったのでしょう。
若くて仕事もデキて、お金の不自由もない婚約者に勝るのは、聖母のような女性しかいない。その発想は面白いです。
孤独なゴンの心を解きほぐしたミヨン。ゴンは、立派な経営者を演じる一方で、他人に対しては心を閉ざしてクローズな状態になっていました。しかし物語がすすむにつれて、人当たりもよく、子どものように正直になっていき、オープンな人に成長することができました。ミヨンもまた奴婢のような人生の呪縛を脱出し、ゴンやテホとの出会いにより経済的な自由を得ました。特にテホはミヨンが自分の意思で生きられるよう支援していました。ゴンは「心の平和」を得、ミヨンは「自由意志の獲得」という宝をそれぞれ得ることができたのです。そして、最終的には「家庭と子」という宝を手に入れることができました。
評価
ほんわか: ★★★★★
癒し: ★★★★★