刑事フォイル(シーズン1) 3話 臆病者
プロローグ
若い女性が電柱によじ登り、園芸はさみで電線を切りました。建物の前。
1940年5月 「誰の戦争?フライデークラブ集会」のポスターをスーツと帽子を着た松葉づえをついた若い紳士ミルナー(フォイルの相棒)が見ていました。
英国紳士のガイ・スペンサーは黒い運転手つきの車からドアをボーイに開けてもらって降り、ミルナーに言いました。
ガイ・スペンサー「こんばんは、君も中へ?」
ミルナー「いえ違います。ホテルへ戻るところです。」
ガイ・スペンサー「遠いのか?」
ミルナー「グロースターロードです。」
ガイ・スペンサー「結構あるな。土砂降りになりそうだ。入りなさい。私はガイ・スペンサー。講演しにきた。」
建物に入る二人。
ミルナー「誰の戦争?」
ガイ・スペンサー「傷痍軍人か?君にとっては災難だったな。」
ミルナー「フライデークラブって何ですか?反戦主義の会・・・」
ガイ・スペンサー「君は望んでいたのか?この戦争を。」
ミルナー「いえ望むも何も」
ガイ・スペンサー「そういうことだ。アラン」
ガイ・スペンサーの相棒のアラン・フレミングがいました。
アラン・フレミング「やあガイ。」
ガイ・スペンサー「様子はどうだ?」
アラン・フレミング「残念ながら、20人くらいしか来ていない。来るのが怖いんだろう。」
ガイ・スペンサー「うーん。予想されていたことではあるな。こちらは友人の」
ミルナー「ポール・ミルナーだ。外で会って」
アラン・フレミング「アラン・フレミングだ」
ガイ・スペンサー「じゃあ始めようか。君も来るよな?(アランは頷く)使えそうだ。」
ガイ・スペンサー「ヒトラーは正気じゃないという人もいる。そういう人は自分に問いかけてほしい。そのヒトラーこそ7年でドイツを復興させドイツを世界の大国のひとつへと押し上げた功労者ではないか。ヒトラーは軍を率いてヨーロッパを席巻し、今やイギリスに迫る勢いだ。この戦争でほんとうに得をするのはだれか。彼はノルウェーから帰還したばかりの兵士。真の英雄だ。国のために戦ったが片足を失いお払い箱になった。彼は得をしたか?すべきではなかった戦争で砲弾の餌食にされただけではないのか?」
「民衆を扇動するならどこかほかの場所でやれよ」早々に講演の途中で建物から出で講演会のポスターに罵る若者。
ガイ・スペンサー「真の敵はだれか?ソビエトとユダヤ人だ。やつはドイツの敵だったが今は我々の敵だ。しかしそう主張すればファシストだの裏ぎものだの先導者だのと非難される。しかし私は暴力的な男ではない。私たちフライデークラブは暴力には与しない。」
悪態をついた若い男性を路地裏に連れて行って殴る蹴るの暴行を加えるガイ・スペンサーの子分。
ガイ・スペンサー「私自身は愛国者だ。愛する祖国のためならどんなことをしてみせる。しかしこの戦争は我々に必要な戦争ではない。それこそが事実だ。イギリス政府はそのことを隠そうとしている」
暴行されて血まみれになり気を失った若い男性。
会場ではガイ・スペンサーに拍手喝采が贈られる。
リード「クリストファー(※フォイルの名前)、時間はあるか?」
本編 あらすじ
フォイル 「随分にぎわっているな。」リード「ああ。国土防衛法が変わって避難や疎開、灯火管制や銃器使用の在り方がかわったから苦情がすごいんだ」
フォイル「それは大変だな」
リード「馬鹿馬鹿しいよ。この前、イーストボーンで若いカップルが車で規制区域に車をとめていた。二人が帰ろうとしたとき巡査が男に入っちゃいけないところに入っていたぞと注意した。すると助手席の女が顔を赤らめて、ご心配なく入らせていませんからと、はっはっは。みんなパニックになっている。国中がおかしい。雁の群れや雲や高射砲をドイツの落下傘舞台と見間違えて通報したり、ブリュッセルが陥落してから侵略をおそれるあまり、もう侵略されたみたいな空気になっている。」
フォイル「ドイツ軍はドーバー海峡に面したブローニュの南まで来ているしな。わが軍はどこへ行く?ブローニュの北か?オーステンデか?行き場はない。」
リード「じゃあどうなる?」
フォイル「わからないな。だが憂慮すべき状況なのは確かだ。国王が国民に祈りを促すくらいだからね。」
リード「祈りが届くといいがね。ところで頼みがあるんだ。今忙しいか?(フォイル「フッ」)愚問だったな。イーディス・ジョンストンという若い女を逮捕した。ホワイトフェザーで働いている。(フォイル「知ってる」)ホワイトフェザーホテルだよ。クローハウストの近くにある電話線を切断したんだ。(フォイル「ああまずいね」)その道の1km足らずのところには軍のキャンプがある。」
フォイル「話してみようか?」
リード「いいか」
フォイル「どこだ?」
リード「下の階にいる。」
フォイル「日曜の午後は行けそうか?(リード「もちろん、忘れてない」)よし、日曜の午前中はお祈りだからな」
リード「ふっふっふ」
フォイルの尋問
フォイルは電線を切断したイーディス・ジョンストンに質問する。彼女は父の居場所を知らず、母はノーフォークのハンスタントンにいるといいました。「親は私のことなんて・・・」イーディスは近くに軍のあることを知っていて電話線を切断しました。ジョンストンはいつドイツ軍に征服されるかわからないので、今からドイツ軍の味方をしておくことにしたのでした。「ハイルヒトラー」とジョンストンは言いました。
新しくフォイルの相棒となったミルナーをサムは手伝います。フォイルはミルナーにジョンストン容疑者について調べるように指示します。サムの運転で出かけるフォイル。サムは好奇心いっぱいに事件のことをフォイルに尋ねます。フォイルに怒られるサム。
イーディスが勤めるホワイトフェザーホテルの経営者、マーガレット・エリス夫人の家に来たフォイル。マーガレットはイーディスのことを高く評価していました。夫のアーサー・エリスが出てきました。法律違反をしていることが発覚するのを恐れるアーサーに、マーガレットはあと一週間で(ドイツ軍の勝利で)法律がなくなるといいました。アラン・フレミングがでてきて「今来たのは誰だ」とききました。
サムは「父が一日四食が健康にいいと言っていた」といってイーディス・ジョンストンが勤めていたホワイトフェザーホテルのカフェで紅茶とサンドウィッチをもぐもぐ食べている。「いいからお食べ」とフォイルがご馳走します。ミルナーはやる気満々だとサムはフォイルに報告しました。フォイルは長居して様子を探るためにサムにたくさんサンドウィッチを食べさせていたのでした。ウェイトレスのドロシーは「ドットと呼んでね」と愛想よくふるまいます。フォイルはドロシーにイーディスのことを質問しました。イーディスの彼はデビッド・レーンということをサムが聞き出しました。最後のレモンジャムのサンドウィッチを幸せそうにほおばるかわいいサム。
サー・アーネストという国会議員とレディー・バナーマンは明日の食事会のためにマーガレットのホワイトフェザーホテルに宿泊していました。マーガレットは女性を紹介しました。ミスハーウッドは政府機関に勤めていてロンドンから来た官僚です。サー・アーネスト「ガイはいつ来るんだ?」「明日です」
ウールトンはホワイトフェザーホテルのフロントで2泊の受付をする。ウールトンの荷物をマーガレットの息子が運び入れる。明日はレストランとメインラウンジが貸し切りになるとマーガレットはいいました。
ミルナーの妻は、ミルナーに紅茶を入れました。今夜の夕食は「シェパードパイ(マッシュポテトで作るパイ皮と牛肉(または羊肉)で作るイギリスのミートパイ)」と妻は言いました。デソーターが発明したアルミ製の義足について話すミルナーを妻は嫌がりました。
箱から拳銃を取り出し弾が入っていないままカチカチと打つ男(マーガレットの息子)。
朝、ブローニュ陥落の記事が新聞にのっている。
朝、ミルナーは「ユダヤ世界の問題」という本を読んでいる。妻の運転でミルナーは出勤するようだ。
フォイルとサムは教会に行き、牧師の演説を聴く。牧師は戦争に勝つことと、未来の困難を乗り越えていく勇気について祈りましょうといいました。教会の前でフォイルとミルナーたちは出会う。ミルナーはイーディスとデビット・レーンの報告をフォイルに渡しました。フォイルはサムに日曜も(運転を)頼むといいました。ちょっぴりいやそうにしてから戦時中だぞというフォイルの説得に承諾しました。
漁船で働くイアン・レーン(父)とデビット・レーン(息子)。デビットはイーディスと結婚の約束をしていました。イーディスが逮捕されたときき、彼女はそんなことをするはずないとデビットは言いました。イーディスはデビットが出会った頃は明るい子だったけど、最近は戦争を怖がっていたといいました。昔とはまるで別人のように借り物の言葉を使うようになった、どこかおかしかったといいました。エリス夫人がイーディスを洗脳したに違いないとデビットはいいました。
ガイとアラン。アランは「ホワイトフェザーホテルのベッドは固いし食事も最低だといいました。バナーマン夫妻は昨日到着し、ボーブレー夫妻は今日到着、ギルバート夫妻もきている。ミスハーウッドは夕べのうちに来た。ホストのマーガレット・エリスはまだ何も言っていない。」といいました。エリス夫人があらわれガイに挨拶のキッスをしました。ガイは政情をエリスに話し、協力を求めました。
英国紳士の服装で、釣りをするフォイルとリード。私たちのような職業では(ドイツ軍が来たら)壁に並ばされておしまいだなとフォイルはいいました。「イーディスは明るくていい子だったが何かが彼女を買えたらしい、あんな若い娘を絞首刑にさせたくない。」
デビットがイーディスのいる刑務所に詰め寄り、彼女は悪くないことを証明してやるといいました。
フレミングはホワイトフェザーホテルの中をうろついていましたら、ホテルマン(エリスの息子)に注意されました。「戦争と努力」の勉強会をやっているとホテルマン。
エリス夫人「証人がいるわね」
ガイ「ああ、それはフレミングに頼もう、君は愛国者だね」
スタンレー・エリスは父にいいました。「あの人たちを泊めたいの?母さんの一存であの人たちを泊めたんだ。嫌なやつらだ。さっきウールトンさんが泊まっている6号室に行った。なにがあったと思う?」
ミスハーウッドは宝石箱の底から手紙を出しました。
ホワイトフェザーホテルで夕食会がはじまりました。みんなはユダヤ人の悪口を言ったり政治の悪口をいって会話しています。ユダヤ人の悪口を言いながらピアノを演奏す眼鏡の太った男。楽しそうに笑う客たち。
ガイはドイツ戦への参戦を反対していました。ガイはにくいユダヤ人を倒すためにイギリスはドイツの味方をするべきだったというようなことを言いました。突然部屋が暗くなり発砲音がして、マーガレット・エリスが殺されました!
現場に向かうフォイルとサム。サムはガイが死ねばよかったのにとフォイルに言いました。
まずはアランとガイに合うフォイル。ガイは一週間以内に捜査をしないと失業するぞといいました。ガイ・スペンサーは何者かが私を3発打ちましたといいました。狙われたのはマーガレットではなく自分(ガイ)だとガイはいいました。弾はドアから飛んできたとガイはいいました。そしてガイはフォイルにいいました。「君はユダヤ系かな?」
サムのところにフォイル警視正と話しがしたいと上院議員のサー・アーネスト・バナーマンが詰め寄りました。勝手に帰ろうとするサー・アーネストを静止するサム。「私に逆らうのか?」「はい、そういうことになります。」
寝込むマーガレットの父。父も息子もマーガレットが強引に政治信条を押し付けていたといいました。マーガレットの息子は最初にドアをあけたのはミスハーウッドで彼女はラベンダーの香水をつけていたので誰がドアを開けたのかわかりましたと言いました。まず電気がちかちかしてヒューズが飛んで真っ暗になったので電気を交換しましたと息子はいいました。息子はガイ・スペンサーが撃たれたのかと思い最初は驚きませんんでした。ベッドの上に銃の箱があってその中に銃が入っていました。箱は息子が勝手に開けましたといいました。彼はフロイトの精神分析を学んでいて人に興味がありました。そしてこの銃があった部屋はロバート・ウールトンが泊まっていたといいました。息子は視力が低いので軍に招集されませんでしたといいました。
ホテルを出たフォイルにアランがガイの非礼を詫びに来ました。アランは庭に体格のよい男がいたといいました。何かを言おうとしたアランをガイが呼び止めたのでアランは話すことをやめました。
弾はエリス夫人と夫人が座っていた椅子と夫人の後ろの壁に当たっていましたとフォイルは言いました。ミルナーはガイと会ったことをフォイルに報告しました。ウールトンは偽の住所をホテルの台帳に記入し、ホテルから2度電話をしましたといいました。
フォイルにいら立つガイ。ミスハーウッドは「書簡を探しているのかな?」と不安そうにガイにいいます。「大丈夫、絶対見つからない」とガイはミスハーウッドを慰めました。
デビットが刑務所で暴れたのでフォイルとミルナーとサムはデビットを連行しようとしました。デビットは「俺は行かない」と逃げました。
逃げるデビットをサムとフォイルは車で追いかけます。階段があり、追跡できなくなった二人。
登場人物
- マーガレットエリス・・・ホワイトフェザーホテルの女主人。何者かに銃で撃たれて死亡。
- アーサーエリス・・・エリスの夫。
- エリス夫妻の息子・・・23歳。フロイトを愛読する。人間観察が趣味。視力が低く徴兵を免れた。
- ガイ・スペンサー・・・政治活動家。ナチを支持する。ミスハーウッドと通じている。
- アラン・フレミング・・・ガイ・スペンサーの相棒
- ミスハーウッド・・・イギリス政府の官僚。書簡を隠し持っている。
- サー・アーネスト・バナーマン・・・国会議員。フェザーホテルに宿泊。
- ボーブレー夫妻・・・ホテルの夕食会に招かれた客。
- ギルバート夫妻・・・ホテルの夕食会に招かれた客。
- イーディス・ジョンストン・・・もとは明るい女の子。ナチに感化され軍に近い電話線を切断し破壊工作を行い逮捕される。
- デビット・レーン・・・イーディスの彼氏。昔の彼女は明るかったのに今はすっかり別人になったと嘆く。イーディスが悪くないことを証明したいという。
- イアン・レーン・・・デビットの父。漁師。
- ドロシー・・・ホワイトフェザーホテルで働くウェイトレス。
- フォイル警視正・・・ドラマの主人公。クリストファー・フォイル。釣りが趣味。
- ミルナー・・・フォイルの相棒
- サム・・・フォイルの運転手
- リード・・・フォイルの、同僚、友人
感想
今日はわけのわからない人たちがいっぱいでてきましたね。イギリスの体制派のフォイルたち一行と、イギリス人でユダヤ人が憎いからドイツが来たら大歓迎という怪しげな人たち、そして怪しげな人たちに感化されたイーディスという若い女の子の犯罪。ユダヤ人のフロイトを信奉しているため母とは一線を画したホワイトフェザーホテル経営者の息子。そしてホテルから姿を消した謎の男ウールトン。
物語の勢力を分けるとざっとこんな感じになるでしょうか。ややこしすぎて事件へのヒントがちりばめられているあらすじをまとめるのにも時間がかかりました。さて、誰がエリス夫人を殺したのか。登場人物が多すぎて整理できません。
ここでいっちゃっていいのか考察ですが、当たっていたらネタバレになるかもしれないけどちょこっと書いてしまいます。タイトルの「臆病者」についてですが、それはガイたちのグループのことなんじゃないかと思います。心が弱いから被害妄想が起きて弱い者、すでに差別されている者に対して殺意を抱くようになる、そういうことなんじゃないかと。当たってたらすみませんwでもたいていはそうですよね、ありもしないことを加害されるという被害妄想がそういう人たちの共通点かな、と思っちゃいました。
ここでいっちゃっていいのか考察ですが、当たっていたらネタバレになるかもしれないけどちょこっと書いてしまいます。タイトルの「臆病者」についてですが、それはガイたちのグループのことなんじゃないかと思います。心が弱いから被害妄想が起きて弱い者、すでに差別されている者に対して殺意を抱くようになる、そういうことなんじゃないかと。当たってたらすみませんwでもたいていはそうですよね、ありもしないことを加害されるという被害妄想がそういう人たちの共通点かな、と思っちゃいました。
ドイツの降伏は1945年5月8日ですから、イギリスはあと5年半耐えなければいけなかったのですね。