大王世宗(テワンセジョン)36話 逆徒か賢者か
あらすじ
鏡城で世子である譲寧大君の軍の前に立ちはばかる忠寧。逆徒になるのか?と言う譲寧に忠寧大君はこう言いました。
「お断りします。私は世子様と戦い勝つ自信もありません。私をどかせたければ刀を抜き胸を突くことです。ひとつだけ申し上げます。世子として逆徒を切るのではなく、兄として逆らう弟を殺すのです。なぜなら逆徒は世子様だからです。世子様、あなたは朝鮮の逆徒です。」
逆徒を捕らえろと刀を抜いた世子は軍に命令しました。そこにユン・フェと鏡城の村の戦争で親を失った子供たちが現れました。
「逆徒を斬る?では先にこの者たちをお切りください。」
子供たちを連れてきたユン・フェを忠寧は「民を連れてきてはいけないといったのに」と責めました。
女の子「あのおじさんたちは誰?怖い人たちなの?」
忠寧大君「いや、そんなことはない。内禁衛将」
内禁衛将軍のカン・サンインは刀を下しました。
忠寧大君は世子の軍の間に女の子を抱いて入るとこういいました。
忠寧大君「怖がらなくていい。よく見なさい。お前のお父さんと同じ服を着ているだろう。」
女の子「本当だ。同じ服だね。じゃあお父ちゃんの友達?」
忠寧大君「お父さんや私とも仲がいい。みんな友達だよ。」
女の子「だから太っちょおじさん(ユン・フェ)があいさつしなさいと言ったの?」
忠寧大君が見た先にはユン・フェと菜の花を持った子供たちがいました。
忠寧大君「タミが一番最初におじさんたちにあいさつしなさい。」
うんうんと頷く少女。
忠寧大君「その槍は何のために使うのだ。今無謀な征伐をすればまず鏡城の民を斬らねばならぬ。その選択をどうするかはお前たちに任せる。同胞の命を奪う武器として使うか民を守るための武器として使うかお前たちが選ぶのだ。」
忠寧大君は兵士たちに言いました。
少女は世子の軍の中をひとり歩いていきました。殺されないかと心配する忠寧大君。少女は世子の兵士のひとりにつんつんと挨拶すると、槍を捨てた兵士に抱き上げられました。
兵士「何歳だ?」
タミ「7歳」
兵士「同い年だ。」
上官「何をしているのだ!」
兵士「朝鮮の民に槍をむけることはせきません将軍」
上官「何だだと!」
次々と槍を捨てる兵士たち。子供たちは槍を捨てた兵士たちに駆け寄ります。子供たちを抱き上げる兵士。
ユン・フェは忠寧大君のもとに寄り添い、ファン・ヒは「今度は世子様が刀をお捨てください」と言いました。喜ぶ忠寧葉の兵士たちと鏡城の民たち。世子は忠寧大君に捨て台詞を吐きました。
譲寧大君「勝ったと思うなよ。戦いはこれからだ。」
忠寧大君「では都で会いましょう、世子様。」
戦って人を傷つけることしか考えていない忠寧大君。
忠寧大君は都に戻る決意をしました。別れを惜しんで泣く子供たち。忠寧大君は子供たちにしっかりと別れの挨拶をしました。「どうか、強く育ってくれ。元気でな。」
鏡城を去る忠寧大君のチェ・ユンドク将軍とイ・チョンとチェ・ヘサンそしてチャン・ヨンシルがやってきました。イ・チョンはすっかり忠寧大君の味方になっていました。鏡城に骨をうずめる覚悟をしたが約束は守れなくなったと忠寧は言いました。チェ・ユンドクは生涯朝鮮の守り人となられるならばお許ししましょう、つらい道のりですよといいました。
忠寧大君「世の中より、己を恐れよという言葉、忘れぬぞ。」
一方で、都の太宗は世子の蛮行に怒っていました。ざまあ見ろといわんばかりの敬寧軍。都の民たちは戦争しなかった世子を暖かく迎えていました。官僚たちも門の前で世子を出迎えました。ところが世子は、恥ずかしさのあまり、逃げ出してしまいました。今逃げれば王様の怒りが天を突くでしょうと止めるファン・ヒ。世子は受け入れてもらえる場所を求め、オリのところに行きました。話になりませんなとキム・ジョンソは言いました。領議政はファン・ヒにこういいました。「どうやら世子様は戻れぬ橋を渡ってしまったな。」これが官僚たちの心を代弁する感想でした。
太宗も元敬王后も世子の行いに危機感を抱いていました。世子の妾のオリは生まれる自分の赤ん坊の服を縫っていました。譲寧大君はオリのもとを訪れ、オリは譲寧大君を抱きしめました。譲寧大君は恥ずかしくて王宮に入れなかった、私の負けだと言いました。大恥をかいた譲寧大君にオリはシム・オンに世子の行き先を明かしたせいでこのようになったことを謝りました。譲寧大君はそのことについては理解せずに、オリを「もうそなたを泣かせない、そのために必死に戦う覚悟だ。」と抱きしめました。「これからもずっと、私の帰る場所になってくれ。」
サガンウォンでは山のような上書が書かれ、司憲府(サホンブ)がこれを太宗に提出しようとしたところをファン・ヒが阻止しようと試みました。ファン・ヒを叱る領議政。「官吏としての自覚はないのか?言路を封じ手は賓庁の意味がない。いっそ国の扉も閉じるか?対策は、これから考えればよい。」山のような上書を太宗は受け取ります。礼書からも山のような世子を罰せよとの上書が届きました。上書をひっくり返した世祖は執務室を出ていきました。そこに、世子が参上しました。上書を取るに足らない薪だという世子は反省する気がありません。太宗「出ていけ、私の前から消えろ。」
会議場にはファン・ヒしかおらず、官僚たちは太宗のところにいました。上書に対する批答(ピダプ、王が上奏文)を求める官僚。世子を軽んじることは二度と許さぬという太宗に領議政のユ・ジョンヒョンは意見を言いました。「私の首を捧げましょうか。世子廃位を進言すれば私の命を奪いますか?"賢者を選ぶ"過ちを省みぬ者に王者に就く資格はありません。長子を捨てて賢者をお選びください。それがこの国を守る唯一の方法でございます。」
太宗「賢者とは誰だ?」
領議政「賢者は忠寧大君です。」
敬寧君「やっとこの国がまともになりそうだ。」
上王定宗「戦う気があるのか?なぜ厳しい戦いに足を踏み入れる気だ?」
孝寧大君「力をお貸しくださいますか?身勝手な世子は資格を失った。理想論を語り争いばかり引き起こす忠寧にも資格はありません。」
後の文宗となる息子が転んだところにヒャンのところに忠寧大君は帰ってきました。
ヒャン「どなたですか?」
感想
とううとう世子がとんでもないことをやっちゃいましたね。兵権を持たないのに勝手に鏡城で如親族を挑発してそのせいでたくさんの鏡城の民が殺されて、挙句の果てには軍を太宗に無断で挙兵をして戦争を起こそうと愚かなことをしでかしました。世子の愚行を止めた忠寧大君もまた戻れない橋を渡ってしまいました、自ら民を守る決意をして。何が何でも名誉の欲望のままに人殺しで英雄になりたい譲寧大君と、民をただ守りたいだけの忠寧大君、物語の構図はこのようになっていましたね。このドラマでは譲寧大君がバカ者として描かれています。朝鮮実録には譲寧大君は遊んでばかりいたと書かれていましたね。譲寧大君は生まれながらに富や人を持っているので、富に対する種着は薄いようです。その譲寧大君にないものは、名誉、つまり輝かしい功績です。それこそが王になるために必要なんだと世子は考えているのです。名誉を得る手っ取り早い方法は人殺しです。内情を鑑みることなくたくさん敵を殺せば英雄になれると思っていたのです。その敵の女真族ですが、彼らはのちに満州族となり、清国を建国して朝鮮を支配するのです。力関係でいえば、女真族は当時の朝鮮王国よりも強いといえましょう。その女真族に本格的な戦争を仕掛けるのですから、もし本気の戦争になったらどちらが勝つかは後世からみて明らかです。ですのでドラマの中の賢い人たちは世子がバカだと思っているということになるようです。つまり、世子は国を危険に晒したということなんです。
世子の失態を機に、孝寧大君がやる気を出しましたね。隙あらば、と陰でこっそり刃を研ぎ澄ましている怖い人ですね。彼が忠寧の最後の敵として立ち憚るのでしょうか。続きが気になります。