チャン・ヨンシル~伝説の科学者~22話「諮られた記録」のあらすじ詳細とネタバレ感想
あらすじ
世宗20年(1438年)の平安道(ピョンアンド)。四郡六鎮(サグンユクチン)は世宗が女真族(ヨジンジョク)の侵攻を防ぐため平安道、咸鏡道(ハムギョンド)に置いた国境房沿線です。四郡は1433年に平安道都節度使(ドジョルジェサ)チェ・ユンドクが設置を開始しました。1437年にイ・チョンがそれを完成させました。四郡六鎮により朝鮮の領土は鴨緑江(アムノッカン)豆満江(トゥマンガン)まで拡張しました。これは現在の北朝鮮の国境線と一致します。
国境に駐屯しているイ・チョンはファン・ヒの訪問を受けました。ファン・ヒはイ・チョンの労を労い国境が平穏であることを誉めました。
「あのチャン・ヨンシルが作った日星定時儀(イルソンジョンシイ)のおかげで兵の機動力が増しました。」
イ・チョンは時計を指さしました。
「漢陽で一番の語り草はヨンシルが作った玉漏(オンヌ)という天上時計だ。」
「どんなものか気になっていたところです。ヨンシル。玉漏(オンヌ)は素晴らしい時計だそうだな。」
イ・チョンは日星定時儀(イルソンジョンシイ)を調整しているヨンシルに言いました。
三人は部屋に入りました。欽敬閣(フムギョンガク)に設置した玉漏(オンヌ)は太陽と同じように動くと聞いてイ・チョンは感心しました。ファン・ヒは官僚たちはそれを見て言葉を失ったと笑いました。欹器(キギ、傾く器)は傾いていて水が満ちれば起き上がり水が満たされれば傾いてこぼれる装置が玉漏(オンヌ)に必要ないことにイ・チョンは気が付きました。ファン・ヒとイ・チョンは王に権力が行き過ぎれば傾いてしまうと言いたかったのかヨンシルに尋ねました。ヨンシルはそれを否定しました。ファン・ヒはいずれこのことでヨンシルが責められるかもしれないのでしばらく休むように言いました。イ・チョンとファン・ヒはヨンシルが大臣から弾劾されないか心配していました。
「(私を心配する気持ちはわかります。でも私には時間がないのです。)」
ヨンシルは心の中で思いました。
ヨンシルが通りを歩いていると風鈴が左右に揺れる様子を見て何か思いつきそうでした。
「(旦那様(チャン・ヒジェのこと)。自撃漏の開発には七年、玉漏には九年かかりました。何年費やせば風の代わりとなる動力を作り出せるでしょうか。これが私が朝鮮で作る最後の時間になるかもしれません。私に残された時間はわずかです。)」
ヨンシルはソックの店を訪ねました。ソックの店はたいへん繁盛していました。町の人たちはヨンシルが発明した小さな時計を手に持ちヨンシルという人物を一度見てみたいものだと言いました。ソックは傍にいた大護軍(テホグン)チャン・ヨンシルを紹介しました。
チョ・マルセン(趙末生)たちは民が時計を持っていることを不満に思っていました。
チョ・グァンは若手官僚に会いました。
「ヨンシルが玉漏を作り不穏な動きを見せておるのに朝廷ではだれも問題にせぬ。朝鮮が王宮から滅びつつあるのにそちは何をやっておる。」
チェ・マルリはチョ・グァンの言葉を受けて玉漏を見に行き驚きました。
世宗20年(1438年)。チャン・ヨンシルが作った欽敬閣漏(フムギョンガンヌ)は欽敬閣にある水時計という意味でした。王の水時計という意味で玉漏とも呼ばれます。欽敬閣漏は時刻を知らせる水時計と天体の動きを示す天文時計が結合された物で当代の最高技術で作った児童水時計です。チャン・ヨンシルが作った欽敬閣漏(フムギョンガンヌ)は1553年の明宗(ミョンジョン)の代に火災により焼失しました。欽敬閣漏の作動原理は現在も明らかにはなっていませんが現在専門家が研究しています。
官僚のチェ・マルリは水が溜まってはこぼれる仕掛けを見つけて激高しました。
「チャン・ヨンシルあいつ!殿下・・・身の程をわきまえねばいずれ足をすくわれる。奴はそう教えようとしているのだな!殿下。まずは不忠の私をお許しください。チャン・ヨンシルが民は天だと触れ回りその罪をつまびらかにできませんでした。」
官僚は上疏を書き訴えに行く途中、ヨンシルが風鈴を観察している様子を目撃しました。
世宗の執務室。
「風。水。太陽。月。星。米。麦。農事。民。離党。異郷。理由。親。記したか?」
世宗は若い学者たちに新たな文字を筆記させました。
「殿下。いずれ解例本(ヘレボン、ハングルの解説本)ができます。」
赤い官服の男(世宗の側近だがテロップが出ないので誰かわからない)は言いました。
「チェ・マルリの上疏を読んでくれぬか。目が悪いゆえここに持ってきた。」
世宗が命じると若い学者はチャン・ヨンシルを処刑しろとの上疏文を読みました。
「民を天というか。はっはっは。果たしてチャン・ヨンシルは慢心しているのだろうか。世も欹器(キギ、傾く器)を見てチェ・マルリのように感じ上疏するのも当然かもしれぬ。はじめて欹器を見たとき余はチャン・ヨンシルに尋ねることもできた。だが私が尋ねなかったのは栄実の意味を自分解き明かしたかったからだ。はっはっは。話しているうちに玉漏を見たくなった。皆で器に込められた意味を考えようではないか。」
世宗は立ち上がって言うと倒れて意識を失ってしまいました。
(回想シーン)
ヨンシルは弟子を監督していました。そのうち二人の弟子(ペ・ガンチュンら)が免賤(ミョンチョン、身分を開放)されて両班となりヨンシルに感謝しました。しかし一番若いユルはまだ身分が低いままで不満を持っていました。
「おじさんが何もせずに二人が免賤されるはずない。王様に頼んだんだろ。俺の番が来るまでに主上殿下が亡くなられるかもしれない。」
ユルは言いました。
「ユル。私が力になる。」
「自分の心配したら?殿下が士大夫から守ってくださるから無事なだけだろ?俺だって知ってる。」
「殿下にかわいがられて光栄だ。もう少しの辛抱だ。いいな?」
ヨンシルは優しくユルに言いました。すると表で人々がヨンシルを通じて免賤してほしいとソックに言い寄っていました。ヨンシルは人々に囲まれました。
「俺は四十年も官奴として働いてきた。」
「私を繕工監に入れてください!」
人々の不満は高まりソックは突き倒されました。
ヨンシルも部下も殴られました。
ヨンシルはその光景を見て悲しくなりました。ユルは軽蔑するようにヨンシルを見つめました。
ヨンシルは玉漏を調整していました。下の身分の男たちが二人で肩を携えている人形を置きました。部屋に世宗の側近が入ってきて手紙を渡しました。ヨンシルは字の完成を知り喜びました。
「文字の完成を?」
「ああ。だが殿下はかなりお体が悪い。」
世宗は布団に寝かされました。王子やファン・ヒ、そしてヨンシルが世宗を見守っていました。御医は養生しなければならないと言いましたが世子によると世宗は温泉による療養を拒んでいました。
しばらくして世宗は目が覚めました。
「そなたの天上時計は称賛を博している。」
世宗は心の中でヨンシルに語り掛けました。
「殿下。制作に時間がかかり申し訳ありません。殿下もついに朝鮮の文字をつくりげましたね。」
「ああ。民は漢字ではなく朝鮮の文字を使うようになる。ようやく余の夢が叶ったのだ。文字をひそかに作らずを得なかったがこれが世に広まれば士大夫だけでなく民も喜ぶだろう。そう思わないか?ヨンシル。余に残された時間は不十分だと言わざるを得ない。やるべきことが多いのに。ヨンシル。欹器(キギ)が非難されておるが気に病むな。だが余は作った秘密を知りたくてたまらぬ。そなたに問わず自ら答えを見つけたい。実はそれを考えることを楽しんでおる。」
ヨンシルは工房で世宗の言葉を思い出し頭をたたきました。
チョ・グァンは世宗が欹器(キギ)を見逃した理由がわかりませんでしたが何かに気が付きました。
夜になり内官はいつも通り文字を燃やしていました。するとチョ・グァンの手下が燃える紙を拾い集めて火を消しました。
世宗24年(1442年)。明国の北京ではチュ・テガン大人が官僚や職人を集めて皇帝を批判しているとユン・ボンらが上奏しました。まだ子供の正統帝(6代王)は官僚制度が商業や格物の発展を妨げているというのはどうかと王振に意見を求めました。王振は朝鮮に原因があるとユン・ボンに促しました。ユン・ボンは朝鮮には玉漏という時計を王が珍重しているとチャン・ヨンシルが従属国としての禁を犯していると言いました。王振はチュ・テガンが皇帝に内密に朝鮮と密約をしていたのではないかといいました。
ヨンシルは療養に向かうときに使う王の安輿の設計について話し合い制作に取り掛かりました。ヨンシルが王様に呼ばれていなくなると官僚は若いユルと目配せをしました。
チェ・マルリは街でチョ・グァンに呼ばれました。チョ・グァンはチェ・マルリに王様が文字を作っていることを教えて力になるよう説得しました。
「今上を退位させ世子に・・・。」
「謀反とおっしゃいましたか。告発されたくなければお帰りください。」
「告発だと?私が主上に謀反を起こすとは言っておらぬ。国の前途をそちのように案じておるだけだ。この私をむげに追い返すでない。そちは今まで通り義憤を胸に朝鮮を守ってくれ。私は我が道を行こう。ふっふっふっふ。」
世宗はヨンシルを呼び格物史の編纂について話し合っていました。そこにチェ・マルリ副提学(プジェハク)が現れ朝鮮が歩むべき性理学の道を阻んでいるのはヨンシルだと言いました。
「やめよ!経典を学んだ者が何故辺境な考えを述べるのだ!格物を極めることは身と心、家と国、あらゆるものの基本となるのだ。」
世宗は若いマルリを叱りました。
「基本とおっしゃるなら殿下にお尋ねしたいことがあります。殿下。もしや朝鮮の文字をご考案中なのですか。」
「!」
「万一それが事実なら、チャン・ヨンシル以上に反発を受けるでしょう。それは経典を冒とくする行為です。漢字を学ばねば経典を極められません。」
「何を申すのだ。」
「公にせぬのはやましいからではありませんか。」
「それは・・・経典を軽んじてはおらぬしそれは今後も変わらぬ。そちが案じることではない。今日は下がりなさい。」
「殿下。使えぬ文字に労を費やしお体を壊さぬようご自愛ください!」
チェ・マルリは困り顔で王様に言いました。
チョ・グァンはユルを呼び金子を投げました。ユルは五日後に王様が安輿に乗る教えました。
「その家も銀子もそちのものだ。そちは富豪になる素質がある。」
チョ・グァンはユルを誉めました。
「はい。仏丁のような富豪になりたいです。」
「では約束どおりぬかりなくやるのだぞ。」
「はい。産業が発展すれば王を必要としない世の中になるそうです。」
ヨンシルは安輿を作っていました。
「お嬢様!なぜこちらへ?お久しぶりです。」
ヨンシルは結婚して人の妻となったチュ・ブリョンと再会しました。
ブリョンはヨンシルに父の苦境と政情を伝え危機を知らせに来たのでした。
若手官僚たちは明の使節団が来て時計を見ればヨンシルは無事では済まないと喜びました。
義州にユン・ボンたちが到着しました。
真夜中。ユルは安輿の車輪に細工をしました。
ヨンシルは立ち上がり安輿のところに行きました。するとユルが細工を終えたところでした。
「ユルや。」
ヨンシルはユルに声を掛けました。
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感想
ハングル文字がほとんど完成したようですね。ヨンシルたちの格物の発展も同時に進行するとは世宗大王はかなり忙しかったと思います。自然を観察して真理を数式で表せば便利な物が作れることに王様が気付いた時代はまさに借り物の文明から脱却してアイデンティティーや自尊心が芽生えることにも繋がりかけたことでしょう。今は時計というと100円でもありますからね。しかし時計はこの数十年、ちっとも発展してませんし、時計の進化はこの先どうなるのでしょうね。ヨンシルは明の使節団が来たということで王様の文字を守るために「わざと」罪をかぶる覚悟でいるのかもしれませんね。もうあと二話くらいでしょうか。続きが楽しみです。関連リンク
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