チャン・ヨンシル~伝説の科学者~20話「諮られた記録」のあらすじ詳細とネタバレ感想
あらすじ
書雲観のチェ・ボクは夜通し救食禮の準備を監督していました。ヒジェもその様子を見守りながら完成した自撃漏に球を転がしました。
「どこが一番素晴らしいですか?」
ヒジェはチェ・ボクに尋ねました。
「転がってきた球がこの穴に落ちることで次に転がってくる球に道を開きます。その仕掛けが見事です。つまり玉は犠牲になる運命です。ヨンシル(蔣英實)はよく思いつきましたね。ヨンシルは自分が玉ですからね。」
「占いでは救食禮は成功すると出ましたか?」
「大吉と出ましたよ。殿下の運勢も非常に幸運です。ただし、誰かの犠牲が出る運命です。その必然的な犠牲を私が払いました。イ校理(キョリ)(イ・スンジ)が徹夜で計算しながら独り言を言うので眠れやしませんでした。イ校理はいったい何をやっているんだか。」
「(イ校理、いつになったら気づくんだ。)」
ヒジェは焦っていました。
書雲観ではイ・スンジが徹夜で計算していあした。チョン・インジが部屋に入って来て「まだやっているのか」と怪訝そうにしました。イ・スンジはヒジェの記録がおかしいことに気づいていましたが確信が持てませんでした。
「一緒にやろう。私は何をしたらよいのだ?」
チョン・インジはイ・スンジの計算を手伝いました。
ヨンシルは自撃漏の水ではもっと細かい時間を知らせることはできないと悩んでいました。親友のソックはヨンシルに自作の変な衣を贈りました。衣のいたるところに割った竹が縫い付けられて鎧のようになっていました。ソックは衣を服の下に着てヨンシルに身を守るように言いました。
夜が明けました。
チョ・グァンは必ず予測を外すように護衛武士に刺客への伝達を命じました。
王宮では世宗がほとんど出来上がった「訓民正音」を確かめていました。世宗は目を押さえました。
「思い浮かびそうだがいつも目の前で消える。」
すると白い礼服に着替えたファン・ヒとハ・ヨンが部屋に入ってきました。ファン・ヒはハ・ヨンから提案があると言いました。ハ・ヨンは救食禮を阻む者がいると心配しました。
「ではそちは救食禮の成功を願っているのか?」
「はい殿下。正しい時刻に台におあがりください。王様の徳を回復させて王様を阻もうとする奸臣らの悪意までもお祓いなさってください。これが朝鮮の歩むべき道です。」
書雲観ではチャン・ヒジェが着替えもせずに机に向かってイ・スンジを待っていました。イ・スンジもまだ計算に熱中していました。するとイ・スンジは観測記録をめくりヒジェを見ました。ヒジェは少し頷くと部屋を出て行きました。イ・スンジもヒジェの後を追いかけました。
王宮の一角。
「どういうことですか。月と太陽の記録が違いますね。笑うな!なぜ手を加えたのですか!」
イ・スンジは記録を地面に投げつけるとヒジェの襟首を掴みました。
「やっと気づいたか。よかった。」
「よかっただと?何が面白い!」
「そなたなら気づくと思った。」
「なんだと?」
「書雲観の中に救食禮に反対する連中の刺客がいるのだ。誰か判らぬ以上は見方を欺くしかなかった。」
「それほど危険なことなら殿下に知らせば済むだろ!他人を踏み台に使うな!」
「殿下に知らせろと?なぜ知らせなかったのか、なぜ殿下に知らせずここまで来てしまったのか。理由を言えばわかってくれるか?できるものか。」
「たわごとはやめろ!救食禮は今日なんだぞ!」
「私を責める前にもう一度計算しろ!敵は油断している。またとない機会だ!今日、そなたが計算し直すとは誰も思うまい。この中に答えがある。数字の暗号の変換表が入っている。早く誰もいないところで計算しろ!」
ヒジェはイ・スンジの襟首を掴み怒鳴りました。イ・スンジは計算するために走り去りました。
「はあ・・・。やっと・・・他人に振りまわされずに生きられる。イ・スンジ。私にはこれしか考えられなかった。誰にも理解など望む気はない。そはたは早く計算して答えを出してくれ。」
儀式の会場では女官や兵士を総動員して旗や道具が設営されていました。
ヨンシルはイ・スンジから報告を受けました。イ・スンジは薄い紙を乗せると八が六になりました。
「裏切り者より私の心配をしてください。」
「あなたの心配はしません。算学の力は確かです。救食禮は必ず成功します。皆命がけでやっています。必ず成功します。人に知られず計算できる場所が必要です。行きましょう。」
世宗も私室で白い服に着替えていました。イ・チョンが来ると、世宗はイ・チョンとファン・ヒを連れて行きました。
ヨンシルは世宗に反対派の妨害工作に遭いイ・スンジが今計算中であると報告しました。
世宗は計算中に日食が起きても仕方ないとできるだけ儀式を伸ばすので間違ってもそれが我々が予測した朝鮮の時間だとヨンシルを励まして儀式に向かいました。ヨンシルはヒジェには事情があったとイ・チョンに言いました。
救食禮がしばらく延期になりました。チョン・インジはソックに案内されて行きました。
チョ・グァンは自宅で報告を受けました。護衛武士はヒジェにも代償を払わせると命令に従いました。するとヒジェが部屋に現れました。
チョン・インジは寺奴婢の服を着てソックと一緒に見張りの兵士の目をくぐり抜けイ・スンジと合流して計算しました。ヨンシルは二人を見守りました。
「のこのこやってくるとは。見事な度胸だな。」
チョ・グァンはヒジェに言いました。
「どうせ死ぬなら逃げ隠れはしない。」
「救食禮が失敗すれば私の望みは叶う。そちごときなど殺すつもりはない。」
「殿下の救食禮は成功します。あの者たちはチョ様が思っている以上にすぐれた者たちです。私を早く殺してください。」
ヒジェが言うと護衛武士が剣を抜きかけました。
チョ・グァンはそれを制止し言葉をつづけました。
「救食禮が失敗すれば命だけは助けてやろう。死にたくなければ救食禮の失敗を願うことだ。」
「私は死にたくて来たわけではありません。私が死ぬことで格物の振興をすすめられるなら私はその使命を果たしたいと思っています。さあ。どうぞ。今日の恨みを私の首で鎮めてください。」
「もしお前が死なずに生き延びたらチャン・ヨンシルのもとに行き格物に励むのだろう。」
「はい。そうします。」
「愚か者め。格物は遠ざけて然るべきなのだ。格物が発展すればはじめは目新しさに興味を引くだろう。だがそれにつけあがる者が支配するようになる。仁で満たすべき人心を壊してしまう!」
「あなたはどうやら格物に怯えているようですね。あなたの言う通り格物が私の心を壊すかためしてみましょう。ありがとうございます。おかげで心が決まりました。ここで死ぬか、生き延びて格物に夢中になるか。」
空を薄雲が覆っていました。チョ・グァンの手下は救食禮の中止を上奏しました。
「な違いに気づけば正していく。それが物事の道理を窮める格物の極みだ。余は新たな時刻に合わせて救食禮を行う。間違いを正すため皆で心をひとつにして待っていてほしい。」
「出た。」
イ・チョンは言いました。イ・スンジも同じ計算結果を出しました。
「同じです。」
「はぁ~。」
ヨンシルたちはソックに導かれて走り出しました。すると覆面をした官僚が二人の武官に剣を抜かせて行く手を阻みました。ヨンシルはイ・スンジとチョン・インジを先に行かせてソックとともに戦いました。武官が剣を振り下ろすとヨンシルもソックも衣に仕込んだ防具で受け止めました。ヨンシルは腹を着られましたがソックが作った防具で事なきを得ました。そこにイ・チョンが現れました。
「殿下の宮殿で刀を振り回すとは何事だ。」
イ・チョンは武官に石を投げ素手で戦い敵を追い払いました。
「殿下が寛大すぎるからあのような不届きものが後をたたぬのだ。」
イ・スンジは礼服に着替えないまま正しい時刻を渡しました。
チェ・ボクは日食の開始時刻と深まる時刻、終わりの時刻を読み上げ予定時刻に赤い棒を置きました。
世宗と臣下たちはは立ち上がり日食を観察しました。
「日食を知らせる太鼓を鳴らせーーー!」
チェ・ボクは叫びました。大太鼓が何度も叩かれました。
日食が起きるとイ・スンジは安堵したように微笑しました。
太陽が月の影となり空は暗くなりました。しばらくすると再び明るくなりました。
朝鮮の民たちも空を見上げていました。
「はっはっはっは。このチャン・ヒジェが堂々たる太鼓を危機ながら死ねるとは。一族の誉です。私の名誉です。旦那様(チョ・グァン)に感謝します。はっはっはっは。」
ヒジェはチョ・グァンの机の向かい側に座り笑いました。
日食が終わり予想が成功しました。世宗は安堵しました。
「一刻もずれておりませんでした。救食禮は正しく終わりました。主上殿下が新たな世を開いてくださったのです。」
チェ・ボクは世宗を称えました。
「これほど正確な儀式ははじめてだ。」
メン・サソンは笑いました。
臣下たちはひれ伏し世宗に拝礼しました。
「殿下。金環日食がはじまる前に救食禮を行われたお姿に感動いたしました。殿下は天に受け入れられたので民たちも殿下を心から喜ぶことでしょう。」
メン・サソンは世宗に言いました。
「右相(ウサン、右議政)が救食禮をこれほど褒めてくれるとは。余もうれしく思う。」
世宗はメン・サソンに言いました。
「私めは殿下とのお約束を果たします。殿下がおすすめになる格物の振興に私めもこの身を捧げると誓います。」
「殿下。格物を潔く受け入れるメン右議政は臣下の手本となるでしょう。」
ファン・ヒも言いました。
救食禮は成功しました。
チョン・インジとイ・スンジは仲間たちに褒められました。
「万歳!万歳だ万歳!」
書雲観の学者たちは泣きながら喜びました。
当時は地軸の傾きや地球の自転の知識はありませんでした。しかし日食の正確な時刻は弧矢割円術(高校過程のサインコサインタンジェント)などの算学により割り出せました。チャン・ヨンシル、イ・チョン、チョン・インジ、チョン・フムジ、チョン・チョらが作った天文機器で都城の緯度に合わせた正確な時刻の計算が可能となり暦法の研究の精度もあがりました。世宗大王が天文学を国家政策として推進した結果、1432以降日食の精確な予測法が確立されました。また1443年にはイ・スンジらは七政算内篇と外篇という暦法を完成させて1444年にこれを編纂しました。当時、国が独自の暦を持っていたのは朝鮮と中国とアラブの三か国だけでした。
世宗は目の焦点が合わずによろけてしまいました。
「余の病が知られてはこの善き日に大臣らに心配をかけてしまう。ゆえにこのことは口外してはならぬ。わかったな?」
世宗は御医に命じると本を読み始めました。
ヨンシルとイ・スンジとソックは宮中でヒジェを探していましたがいませんでした。イ・スンジは追い詰め過ぎたと後悔しました。
ヒジェはチョ・グァンに早く殺してくれと頼みました。ヒジェは格物のために死ねることが幸せだと言いました。
「私の命より大切な朝鮮を格物に滅ぼされてたまるか。」
チョ・グァンはヒジェに言いました。護衛武士は剣を抜いてヒジェの首に突き付けました。
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感想
算術に励むイ・スンジ(李純之、のちに書雲観の判事になる)が大活躍でしたね。チョン・インジ(鄭麟趾)も数学に長けていたとはこのドラマではじめて知りました。一体どうやって日食の時刻を割り出せたのか不思議です。空の星が一年で巡ってくることや日食が周期的に発生していることに気が付いたことも素晴らしい発見だと思います。ヒジェの格物への情熱を語る様子がほんとうに素晴らしかったですね。計算することで自然の周期が正確にわかると知った時に当時の人たちはどんなにわくわくしたことでしょうか。世宗大王は目の病になってしまって、おつらそうですね。でも王様だから誰かが面倒見てくれるし、手を引いてくれる者がいない庶民ほどの心配はなかったかもしれません。武人のイ・チョン(李蕆)も朗読では学者のひとりとして数えられていますね。
李蕆(イ・チョン)(1376年~1451年)
朝鮮の科学者で武官。本管は雨安。17歳の時に別将(ピョルチャン)に任命される。22歳で武科に合格し倭寇や女真族を撃退しました。活版印刷に多大な貢献をしました。多くの発明に参加したものの、北面にも五年以上駐屯し武人としても活躍しました。(筆者調べ)
李純之(イ・スンジ)(~1465)
朝鮮の天文学者。本管は陽城。朝鮮の緯度を算出し、イ・チョンとチャン・ヨンシルとともに天文儀を改良する。「七政算外篇」「交食推歩法」などを著する。
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