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実在した真霊君(チルリョングン:진령군)客主(ケクチュ)49話で国師堂(ククサダン)の巫女メウォルが君に封じられる

真霊君(チルリョングン:진령군)~実在した巫女무당

韓国ドラマ「客主(ケクチュ, 2015)」の49話を見ていると、閔妃(ミンビ)を救ったメウォル(梅月、ケトン)が閔妃により真霊君(チルリョングン)に封じられました。彼女は土地と奴婢、王族と同等の身分を下賜されました。私はまさかケトンが「君(クン)」になるとは思っていなかったのでたいへん驚きました。真霊君(チルリョングン)となったメウォル(ケトン)は12年ぶりに実家に行って両班(ヤンバン)の父と母に拝礼します。父は「ヘジュは私の娘ですが、あの子は世を去りました」と他人のふりをします。真霊君(チルリョングン)は涙を流して父の腕に触れると「ムーダン(巫堂)ごときが士大夫(サデブ)に触れるでない!」と母とともに部屋から出て行きました。真霊君(チルリョングン)は母を追いかけると「私はあなたを知らない」と顔をそむけます。
「お母さま。これからは私が望みを叶えます。なんでもお話ください。お兄様の出世のことも・・・。」
真霊君(チルリョングン)は父母に言うと、父は真霊君(チルリョングン)を振り払います。
「たとえお前が君位を授かってもお前はムーダン(巫堂)で私は親不孝者の父に過ぎぬ!ええい!」
父は真霊君(チルリョングン)を置いて去ります。真霊君(チルリョングン)は涙を流しながら母にすがりつき一緒に暮らそうと言いましたが母も「もう私の前に現れないで」と去りました。

真霊君(チルリョングン)は泣き叫ぶと気を失います。

その様子を心配して見ていたドラマの主人公、千奉三(チョン・ボンサム)たちはケトンを部屋に運びました・・・。

実の父母に捨てられた彼女の実に可哀そうな場面です。

閔妃(ミンビ)が国師堂(ククサダン)の巫女を「君」に封じるとは士大夫(サデブ)にとって耐えられないものであったことをドラマでは描かれています。士大夫(両班の主に文班)というのは例外を極端に嫌い、そのルールは儒学の決まり事と中国皇帝の意向に従うことです。巫女(巫堂)は朝鮮では差別の対象で、奴婢より下の、賤民らと同じ最下層の身分に属していました。両班にとって巫堂(ムーダン)は卑しい者だったのです。

ドラマの中で、なぜ彼女が親に捨てられたかというと、精神の病を患っていたからでした。つまり現実よりも思い込みが激しく、それを訂正できない病気にかかっていたので、親が捨てたのです。ドラマの中でも成人した彼女が自身の妄想(預言)によりボンサムに一方的に想いを寄せました。

巫堂(ムーダン)

ムーダンはシャーマニズムでシャーマンが霊の仲立ちとして種々のお告げを授ける職業です。韓国ドラマでは「朱蒙(チュモン)」で扶余の神官が三足烏のお告げをします。「鉄の王キム・スロ」でも人々が祭壇で儀式を行う場面が描かれています。「太陽を抱く月」では主人公で記憶喪失の女性がムーダンとしてかつて覚えていたことを無意識にお告げとして王室の人間に助言します。確か「風の絵師」にもムーダンの祈祷をおそるおそるのぞき見る場面があったような、なかったような。日本においては卑弥呼というシャーマンや青森県のイタコという女性がそれに相当します。人を騙して喜ばせるような芝居をしているだけの人がほとんどかもしれませんが、中には自分がシャーマンだと信じている人もいるかもしれませんね。

大抵のドラマでムーダンは女性で派手で赤や黄色の独特の衣装で飛び跳ねたり鈴を派手にならして正気じゃない演技で表現されています。

日本でも青森のイタコや各家を訪問する獅子舞やナマハゲ(朝鮮の鬼に由来)などがよく似ていると思いますがムーダンは道教と民間信仰が混ざった宗教のように思えます。やはり日本においてもそういう仕事は穢れの部類に入るので今では口に出して言うことを遠慮してしまうような身分の人々がしていた職業でした。この手の職業の人々は、一か所に定住できないので、各地を放浪せざるを得なかったのです。流浪の民は朝鮮や日本では差別の対象となりました。

自然や先祖の霊への信仰は日本、朝鮮だけでなく琉球やアイヌにも見られます。

シャーマニズムですが、雨乞いや田植えなどの儀式を国の最高権力者が行えば、朝鮮では「祭祀(チェサ)」と呼ばれ、日本では「神道の神事(儀式)」などと呼ばれます。中程度の身分の人がそれらを行えば「お祭り」と呼ばれます。つまり、儀式を行う人の身分が支配者ならば差別されることのない国(クニ)の公式行事であり、村(ムラ)のお祭りであり、身分が低ければ差別される非公式の儀式で裏でこっそり行うもの、こっそりシャーマンを呼んで来てやってもらうものという違いがあったに過ぎません。現代でも人気の安倍晴明の正体は、実はそんなに褒められたものではなく表に立つべき人ではなかったのです。私が思うに、皇室の秘密の儀式には、こうした代々シャーマンである非公式だが歴史上に存在し続けている人を呼んで謎の儀式をやっているのではないかと察します。歴史の裏舞台で皇帝や天皇、国王を民衆には言えない原始的な手法で支え続けて来た秘密のシャーマンは絶ずいると思います!

今は儒教の「神」になっている「孔子」も実はシャーマンでした。道教もシャーマニズムの宗教です。神道も同じです。儒学は哲学に発展しましたが、やはり西欧の思想には叶いませんでした。というのも儒学はインドの宗教と同じで土着の宗教から発展した哲学であり、アニミズムを含む神道も支配の過程で天皇を敬って後から来た神(渡来系の王族)が土着の神を倒して列島の支配者側という立場になった思想なので、奴隷の立場から発展したキリスト教と思想の立場が正反対にありました。

エピソード

真霊君(진령군)は2016年に韓国で再び脚光を浴びました。それは朴槿恵(パク・クネ)元大統領に助言していた女性が巫堂(ムーダン)の崔順実(チェ・スンシル)だったからです。真霊君についてわかっていることは李姓だということだけです。女性が堂號(~堂という両班の夫人の呼び名)を受けずに君號を受けたのは真霊君が初めてでありそれは前代未聞のことでした。

真霊君を糾弾する上疏(じょうそ、上奏)が届きましたが都承旨(トスンジ)(おそらく閔泳翊)が高宗(コジョン)に伝えずに積み上げていました。政情が変わり、1894年、真霊君は投獄され財産はすべて没収されました。1895年に閔妃が殺されると都承旨(トスンジ)が溜めていた上疏(じょうそ、上奏)文が一気に上りました。

儒教も起源をたどればシャーマニズムなので、とやかく言う筋合いは無いということです。しかしながらシャーマニズムのうち、加持祈祷は他人を害しませんが、呪詛はやっぱり邪道ですね!

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更新履歴: 2019年11月29日 読みやすく、さらに解説を加えてみました。

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