韓国ドラマ客主-ケクチュ-商売の神9話のあらすじと感想
目次
あらすじ
老医員の家。チョン・ボンサムは散歩(徘徊)から戻って来た高齢で認知症の医員に握り飯をあげました。
「お前の姉さんはすごいな。両班の奥様みたいだ。蓮の花の飾りがついた立派な輿に乗っていた。」
医員のおじいさんはボンサムに言いました。
「爺さんの寝言は聞きたくない。帰るぞ?」
ボンサムが言うと医員の娘のおばさんは父を世話するため庭に野菜を持って入って来ました。
「お嬢さん(アガシ)。こんにちは。」
「まあいらっしゃい。服が濡れてるわ。脱いで。」
女性は父の服をまさぐりはじめました。
女性は父の服をまさぐりはじめました。
「じゃあ爺さん。元気でな。来年も来る。死ぬんじゃないぞ。長生きしろよ。わかったな。」
ボンサムは腰掛けていた台の上にお金を置きました。
「ありがとうね。アイゴ。これは何なの?」
医員の娘は貰ったお金を巾着にしまうと老医員の服を脱がせようとしました。医員はソホン(チョン・ソレ)の簪を落としました。
「奥様がくれたんだ。」
医員は大事そうに簪を手に取りました。
「サンゴの簪は高いんでしょ。盗んだの?」
「違うよ。ボンサムのお姉さんがくれたんだ!」
医員は言いました。
「爺さん。本当に来たんだな。姉さんを見たのか?」
ボンサムは振り返ると尋ねました。
「来たのは確かだけど両班の側室みたいだった。」
医員の娘は言いました。
「爺さん。本当に姉さんが来たのか?」
「言っただろ。輿に乗って来てお堂に入った。ボンサム!持っていけ。お前の母の形見だって。お前の嫁に渡すはずの物だって。」
医員は形見の簪をボンサムに渡しました。
「姉さん!姉さん!チョン・ソレ!どこだ!姉さん!姉さん!」
ボンサムは駆けだして市場に行きました。
輿に乗り市場を通過していたソホン(チョン・ソレ)はボンサムの声が聞こえたような気がして弟が恋しくなって涙を流しました。
「チョン・ソレ!どこだ!チョン・ソレ!」
チョン・ボンサムは街道を通る商人のソンドルにぶつかりました。
「お前!ふざけんな!や〜!」
ぶつけられたソンドルはボンサムに怒鳴りました。
すると商人の令嬢を運ぶ輿の担ぎ手の二人は紐をほどくと輿を崖下に投げ落としました。
「ソリンや〜!」
「お嬢様〜!」
父親の行首たちは叫びました。
「チョン・ソレ!チョン・ソレ!」
ボンサムはソンドルに荷物を預けると川の中に飛び込み輿の扉を開けてソリンを救い出しました。
「お嬢様の名前はソリンかチョン・ソレか?」
ソンドルは近くにいた男に尋ねました。
「ソリンだ。こいつ!こんな時に!」
執事の男は怒りました。
「あの男はチョン・ソレと言ってたぞ。これで死んだらさぞ後悔するだろうな。」
ソンドルはつぶやきました。
「誰の仕業だ。チョン客主の仕業に違いない。私が寡婦となった娘を連れ戻すのに怒った舅のあいつが輿を崖から突き落とさせたのだろう!」
チョ・ソンドゥク(ソリンの父)は怒りました。
「脚がよろけて・・・お許しくださいオルシ!」
輿の担ぎ手は謝りました。
「すぐに殺してやる!」
チョ・ソンドゥクは輿の担ぎ手に向かい手を上げました。
「見てください!お嬢様が!」
使用人の女が言うと、ボンサムが川からソリンを担いで岸に上がりました。
「両班かと思ったら商人か。」
ソンドルはつぶやきました。
「何をしておる。すぐに縄を下ろせ!」
チョ・ソンドゥクは怒鳴りました。
「縄で済むわけない。俺について来てください。」
ソンドルは皆に言いました。
「何だと?お前両班に向かってその口の利き方は何だ!」
チョ・ソンドゥクは初めてソンドルを見ました。
「そうかいいのかい。あんたの娘が誘拐されても?」
「何だと?」
「嫌なら付いて来い。来いよ。」
「大丈夫か。吐け。吐いたら楽になる。」
ボンサムは背負っていたソリンを河原に降ろして背中を叩きました。ソリンは水を吐いて咳き込みました。
街。
「ほらあの女だ。大行首(テヘンス)はどう思う?」
「まったく愉快だ。」
辛家大客主(シンガテケクチュ)の大行首(テヘンス)シン・ソクチュは自身の資金で宣恵庁(ソネチョン)の堂上(タンサン)にならせたキム・ボヒョンと六牟塵(ユギジョン)の大行首(テヘンス)たちを連れて妓楼に行きました。
「堂上大監(タンサンテガム)様と客主(ケクチュ)のオルシ。食事をご用意しました。妓女(キニョ、妓生の女)は食事の後でオルシ(旦那様)の傍に置くつもりです。」
メン・グボムはキム・ボヒョンたちに言いました。
「我々の歳になると女より飯だな。」
京畿道のチェ接長(チョプチャン)が言うと皆は笑いました。
「チェ接長(チョプチャン)。酒をつごう。面白い話の褒美だ。松坡馬房(ソンパマバン)の話は実に愉快だった。」
キム・ボヒョンは言いました。
「アイゴ。これはまた。宣恵庁(ソネチョン)の大監に私の話を喜んでいただきありがとうございます。」
チェ接長(チョプチャン)は素早くキム・ボヒョンの前に行くと両手を差し出し盃を受け取ろうとしました。
「チェ接長(チョプチャン)。その手を下ろせ。私がその酒を飲む。」
キム・ハクチュンはチェ接長に言いました。
「私より面白い話があるのですか?」
チェ接長(チョプチャン)は言いました。
「父が娘を売る話だ。」
キム・ハクチュンは言いました。
「親が娘を妓房(キバン)に売る話はよくあるぞ。」
キム・ボヒョンは言いました。
「そうですよ。娘が醜ければ下働きに出される。」
チェ接長(チョプチャン)は言いました。
「あれほどの女人(にょにん)は宮中にもいまい。楊貴妃顔負けの美人だぞ。」
キム・ハクチュンは言いました。
「そんな女人(にょにん)いるわけない!」
チェ接長(チョプチャン)は怒鳴りました。
「おほう。見ろ。」
キム・ハクチュンは女性(ソリン)の肖像画を見せました。皆は美人画に見とれました。シン・ソクチュは表情を変えずに絵をのぞき込みました。
川辺。
「や〜チョン・ソレ。しばらく見ないうちに随分か弱くなったな。ははははは。メシを食ってちょっと臭いが。姉さん。うぉ〜アイゴ。」
ボンサムがソリンに寄ると、ソリンはボンサムを払いのけました。ボンサムは後ろに尻もちをつきました。
「十八年ぶりだというのに水臭いな。ははははは。姉さん俺だぞ。ボンサムだよボンサム。チョン・ソレの弟ボンサムだ。」
ボンサムは上機嫌でソリンに言いました。
「すまない。」
「毎年お堂に行ったんだ。姉さんが来ると信じてた。だけどチョン・ソレ。来るのが遅いぞ。だけどこうして会えたから許してやる。そうだ。会えればいい。チョン・ソレ。」
ボンサムはソリンの肩に手を置きました。
「すまない。本当に申し訳なくて言葉が出ぬ。私はチョン・ソレとは別人だ。私はソリン。チョ・ソリン。」
ソリンは振り返りボンサムを見ました。
ボンサムは落胆しました。
妓楼。
「はっはっは。忠清道報恩(チュンチョンドポウン)に麻布の客主がいる。」
キム・ハクチュンは言いました。
「趙家客主チョ・スンドゥク。」
「さすがメン行首。スンドゥクの奴の商売は変わってる。娘を売り物にしたのだ。金で官職を買い両班行首のつもりだが、客主は昔は行商人だった(※朝鮮末期の当時は既に大半が金で身分を買って両班になっていた)。そいつの娘が絶世の美女に育ったからうまくいけば金になると考えたのだ。」
回想シーン。
ソリンはカヤグム(伽耶琴)を演奏し、見事な舞いの練習をしていました。使用人の男たちはソリンの美しさに見とれました。
昔のキム・ハクチュンの家。
「アイゴ。アイゴ。御覧ください。」
チョ・スンドゥクはキム・ハクチュンにソリンの見合い写真を見せました。
「アイゴ。私の体はひとつしか無い。」
キム・ハクチュンは断りました。側にはソホン(チョン・ソレ)が侍っていました。
「さあ。さあ。」
チョ・スンドゥクは肖像画をソホン(チョン・ソレ)に渡しました。
「これほどの美女を客主に売るなんて。」
ソホンは言いました。
「え?」
「王室に入れたらどうですか?子宝に恵まれたら喜ばれますよ。」
「アイゴ。世の中大事なのは金ですよ!権力なんか手に入れ手も使い道がありません。」
汚い身なりのチョ・スンドゥクは言いました。
別の家。
「ご覧ください。絶世の美女でしょ?十万両でお譲りします。」
チョ・スンドゥクは娘を売り込んでいました。
「十両だと?こいつめ!」
男はスンドゥクの鼻を小突きました。
「あっはっはっは。」
妓房(キバン)。
「あ〜思い出したぞ。十万両払えというから追い出してやった。」
キム・ハクチュンの隣にいる男は言うと皆は笑いました。
「それで、どうなった?」
「義州の張家客主の、アホ息子の嫁になった。」
キム・ハクチュンは言いました。
「それでなぜまだ似顔絵が出回ってる。」
キム・ボヒョンは言いました。
「思い出しました。その息子は水遊びの最中に命を落としたと聞きました。」
メン・グボムは言いました。
「ではまだ喪開けせぬ女をまた売るのか?」
「三年の喪どころかまだ百日もたっておらぬ。」
キム・ハクチュンは言いました。
「あっはっはっはっは!」
「実に面白い。私が酒をついでやるぞ。」
キム・ボヒョンは言いました。
「まだ話の続きがあります。今回の売値がいくらかご存知ですか。」
「さあ。」
「再婚となれば三万両ですか?」
メン・グボムは言いました。
「大きな客主のメン行首が世情に疎いとは。十五万両で売ると言っている。」
キム・ハクチュンは口に手を当て言いました。
「え?バカな!」
「奴は何を考えておる!」
キム・ボヒョンは言いました。
「バカな夫だったからまだ男を知らぬかもしれんが寡婦は寡婦だぞ。」
「寡婦の売値が十五万両だと?」
「青い果実は味も悪く値もつかぬが熟れた果実は味も香りも最高だ。正室に迎えるわけでもあるまいし、美しければそれで十分だ。」
キム・ハクチュンは言いました。
「あっはっはっは!」
「奴は面白いな。あいつがここにいたら私が酒をついでやるのに。」
キム・ボヒョンは笑いました。
シン・ソクチュはソリンの肖像画を見て思案しました。
夕方。
ボンサムは火を起こしソリンは体を乾かしました。
ボンサムはソリンを見ていました。ソリンは視線に気づき、ボンサムを見ないようにしていました。
「火にあたってください。服を乾かさないと。こちらへどうぞ。」
ソリンはボンサムに言いました。
ボンサムはソリンの隣に座ろうとすると野積みされた石に尻を突かれてしまいました。ソリンはその様子を見てはにかみました。
「こっちだ早く早く!」
ソンドルはチョ・スンドゥクたちを導きました。
ソリンは野積みの石塔に紐を括ると願い事を掛けました。
「恩人のために願を掛けました。」
「俺のためですか?」
「義州には鴨緑江(アムノッカン)という川があり、そこには海神堂(ヘシンダン)というお堂があります。正月が過ぎると村の女は、組みひもを結んで願いを掛けます。よい殿方に出合いたい。息子を産みたいと。必ずお姉さまに会えるよう願いました。」
「お嬢様。感謝します。」
「私は、お嬢様でも両班でもありません。運命に弄ばれあちこち漂う浮草のようなものです。私をさらってください。」
ソリンは真顔で目を潤ませました。
「え?お嬢様何を言うんですかぁ。」
ボンサムはソリンが正気かどうか顔の前で手を叩いて確かめました。
「私を、さらってください。」
「アイゴ。ありがたいがいきなりすぎて困惑してる。確かに人の縁は時を選ばない。俺は・・・わかってるが、妻をめておって家族となる。その前に姉さんを捜さないといけない。」
「行商人の、妻になりたいのです。」
「急げ〜。日が暮れる。」
ソンドルは商人を導きました。
「ソリン〜。日が沈む前に捜し出せ!ソリンはどこのどいつかわからん奴と一緒にいるんだ。ダメだ。」
チョ・スンドゥクは息を切らしながら娘を捜しました。
「はっはーはっはー。アイゴアイゴ。アイゴ。俺としたことがとんだことを。急な事で混乱してたんだ。あんたが行商人になる?久しぶりに外へ出たが雲みたいに自由に動きたくなったのか?足の裏にまめを作ったことも、頭に荷を乗せたこともない。行商人?」
「舅と一緒に開城(ケソン)の人参畑や漢陽(ハニャン)の支店に行きました。ご迷惑はおかけしません。助けた女から妙な相談を受けてお困りでしょうね。でも任房(イムバン)で身分証をもらい扱う商品を決めるまで、手を貸していただけませんか?」
「つまり、行方をくらませたいと?そういうことか?なぜ?」
「・・・・・・。」
ソンドルがチョ・スンドゥクたちを連れてボンサムのところに現れました。
「お嬢様!お怪我はありませんか!」
「アイゴ!こちらでしたか!」
「ソリナ。無事でよかった。すべてお前の舅が仕組んだことだ。お前を連れ戻したころに腹を立ててお前を殺そうとしたのだ。」
チョ・スンドゥクはソリンに言いました。
「お父さま。その話は後にしてください。まずは恩人にご挨拶せねばなりません。どうすればこの御恩をお返ししましょう。」
ソリンは父に言いました。
「もちろんだとも。恩を返すのは人として当然だ。はっはっは。」
チョ・スンドゥクは言うとボンサムは両手の手のひらを前に突き出して結構ですと微笑み身振りで示しました。
「そうさ。恩返ししなきゃ。この人に娘さんを差し出せばいいのさ。はははは。」
ソンドルも言いました。
「貴様!何だ!まだ文句があるのか!」
チョ・スンドゥクはソンドルの頬を叩きました。人々は押し黙りました。
ボンサムはチョ・スンドゥクの異様な行動に唖然としました。
「はっはっは。このご恩は金や宝飾品では到底返せません。真心で(=1無料で)お返しします。義侠心に富んだ勇気ある行商人。商人様にこの老人がご挨拶します。」
チョ・スンドゥクはボンサムに拝礼しました。
「ちょ。ちょっとお待ちを。アイゴ。俺に挨拶だなんて。」
年配の男から拝礼を受けたくないボンサムは地面に土下座しながらスンドゥクの様子を伺いました。
「行くぞ。支度しろ。ソリン。行くぞ。」
チョ・スンドゥクはタダで済んだと思うと帰ろうとしました。
「え?離してください。恩人にご挨拶します。」
ソリンは戸惑いました。
「恩はもう真心(無料)で返した。行くぞ。」
「お父さま。お父さま。」
「行くぞ。」
チョ・スンドゥクはソリンの手を引いて行きました。
「アイゴ。まだ目が回る。なんて意地汚いジジイだ!ええい!」
ソンドルは毒づき地面を蹴りました。
「やあ。手は握ったか?それともチュパッ。唇まで奪ったか?」
ソンドルは言いました。
「人足のくせに偉そうに!」
ボンサムはソンドルの頬を叩きました。
「預かった物は返してやる。ほらよ。結局逃げられたか。情けない奴め。命がけで助けたのに女の手も握らないとは。え〜い。あぼ〜ん(意気地なし)。」
ソンドルはボンサムに荷物を投げボンサムをバカにしました。
「血だ!両方の穴から!」
ボンサムはソンドルの鼻から血が出ていたので指で鼻を押さえてやりました。
「あ〜あ〜もったいねえ。ジジイのくせに力だけは強いな!はははははは!」
ソンドルとボンサムは笑いました。
夜になりました。
チョン・ボンサムとソンドルは山中で野営して眠っていました。
「私を、さらってください。」
目が覚めたボンサムはソリンの言葉を思い出して切なくなりソンドルに抱き着きました。
「恋の病にかかったか〜。」
「起きてたのか。」
「横にいる奴が寝たり起きたりため息ついて胸をなでる。お前だったら寝てられるか?」
ソンドルは立ち上がりボンサムに服を投げました。
「まだ乾いてない。」
「今ならまだ間に合う。お前は命の恩人だ。追いかけようぜ。天女のようなあの女に“俺は恩人だ。妻になり一緒に行こう”と言うんだ。」
「一、二、一、二、えい!俺は未練があるが、姉さんを捜すのが先だ!新しい仕事を見つけないと。諦める。」
ボンサムは石を持ち上げて四度上下させると石を投げました。
「思いのほか小心者だな。」
「アイゴ。」
ボンサムはソンドルを揺すりました。
「寝させろよ。あ?俺も行く!置いてくな!助言してやった俺を置いていく気か!」
ソンドルはボンサムを追いかけました。
深夜の辛家大客主(シンガテケクチュ)。
シン・ソクチュはソリンの肖像画を見て悩まし気に月を眺めていました。
換銭客主。
「あの寡婦に心奪われている。肖像画を離さぬのだ。」
メン・グボムは一緒に酒を飲んでいるキム・ハクチュンに言いました。
「そなたはあの女が辛家大客主(シンガテケクチュ)に入るのを恐れているな?」
キム・ハクチュンは言いました。
「どういう意味だ?」
「もしシン・ソクチュに息子が生まれたら?シン・ソクチュの跡継ぎになりたくて三十年も耐えて来たのにシン・ソクチュに捨てられるかもしれん。うははははは。」
「はははは。あの歳で子など。」
「ありうるぞ。さじを持つ力があれば子はできる。特に大行首(テヘンス)は体を気遣い運動もしてる。カネを作るのだ。辛家大客主(シンガテケクチュ)のシン・ソクチュに勝つには裏金が必要だ。」
「大行首(テヘンス)に隠れて金を作るなんて無理だ!」
「芥子の実を売ればいい。」
「阿片?あへ・・・。」
「しっ。刀で戦う時代は終わった。カネがあってこそ権力を手に入れられる。カネで戦う時代だ。その気があれば手伝ってやる。ははははは。考えておけ。」
日中の換銭客主。
「客主様〜客主様〜。」
執事が走って来てキム・ハクチュンを呼びました。
「あ〜。はっはっは。これは珍しい!ソン行首だな!」
キム・ハクチュンは靴も履かずに庭に出るとソン・マンチの腹を触りました。
「やめろ。」
マンチはむっつりして言いました。パングムも隣にいました。
「松坡からはるばるやってくるとは。アイゴ。ソン行首を歓迎する。」
「俺は売りたい物があって来た。」
部屋。
ソン・マンチは松坡馬房(ソンパマバン)の権利書をキム・ハクチュンに見せました。
キム・ハクチュンは権利書をマンチに投げ返しました。
「だめだって。帰ろ。」
パングムはマンチに言いました。
「おおそうだ。案外肝が小さいな。昔のキム・ハクチュンと今のキム・ハクチュンはまるで別人だ。昔のキム・ハクチュンなら松坡馬房(ソンパマバン)によだれを垂らしたはずだ。」
「はははは。たしかによだれは出るが老いた私の歯では噛み切れぬ。帰ってくれ。」
「チッ・・・。」
マンチは帰ろうとしました。
「お待ちを。我が家の刺身ピビンパを召し上がれ。」
話を聴いていたソホン(チョン・ソレ)はマンチに言いました。
「俺は腹は減ってない。」
「松坡から江景(カンギョン)まで五十里もあります。客主へ来られたお客様をそのまま返せません。」
「いいわね。江景(カンギョン)客主の味を味わってみるわ。」
パングムは話に乗りました。
「またとない機会です。松坡馬房(ソンパマバン)は今朝鮮で躍進中の客主です。」
ソホン(チョン・ソレ)は使用人にピビンパを運ばせると縁台で扇をあおいでいるキム・ハクチュンに言いました。
「ソホンや。盗んだ物と知って買えるか?」
「だから安値で買えばよいのです。柵門での未納金があるはずです。それが利子を生んで戻って来たのです。」
「傷んだ食べ物なら下痢で済むが金は違う。食ってはいけない金を食えば命に関わるのだ。私が死んでもよいのか?」
「アイゴ。なんと弱気な。千家客主は飲み込んだのに。」
「あれは三年の歳月をかけて手間暇かけて仕掛けたのだ。客主と番頭を私が作った舞台の上で躍らせたのだ。」
「・・・・・・。」
「今回はそうではない。うまい話に乗っては災いを招く。」
「それでお金儲けができますか?安全にお金儲けなどできるはずがありません。」
「ソホン。私はシン・ソクチュより長生きせねばならん。」
「だからシン・ソクチュに勝てぬのです。いつまで弟君の下に立っているつもりですか。潮が満ちた時に舟を出さねば次はいつかわかりません。松坡馬房(ソンパマバン)を買う機会は二度とありません。」
「そうだな。今船を出せば据え膳食わぬは男の恥と言うからな。」
「それでこそ私の夫様(サバンニ)です。」
ソホンはキム・ハクチュンに口づけしました。
「ソホンや。」
喜んだキム・ハクチュンはソホンに抱き着きました。
部屋。
「何だと?一万両?」
ソン・マンチはキム・ハクチュンに怒りました。
「マンチや。マンチや。」
パングムはソン・マンチを制しました。
「足元みやがって。時価二十万両の松坡馬房(ソンパマバン)を一万両で買うだと?盗賊め。頭をかち割るぞ!」
「マンチや!」
「私が盗賊みたいなキム・ハクチュンだからこそ訪ねてきたのでは?」
キム・ハクチュンは強気に出ました。
「朝鮮には旦那様以外の商人は誰も松坡馬房(ソンパマバン)を買いません。嫌なら帰ってください。」
ソホンはマンチに言いました。
「・・・・・・。大金を持っていては動きがとれない。二万両の手形と旅費として別に三百両。それでどうだ。それでもダメなら!こんな紙きれ!」
マンチは権利書を口に入れました。
「何をするお前さん。それは私のだ。私が食う。これからそなたたちは二万両で朝鮮全土の珍味を味わい国王以上の暮らしができるぞ。はははは。松坡馬房(ソンパマバン)土地二千九百坪。家屋十棟。牛小屋八棟。牛十七頭。」
キム・ハクチュンは権利書を受け取り契約書に印を押しました。
「マンチ。牛は他人のよ。売っちゃだめ。」
パングムはマンチに言いました。
「ボン先生の牛だ。そうでなければ売るもんか。ボン先生の牛だからおまけにつけてやる。」
マンチは意味のわからないことを言いました。
「さあ手形を渡そう。これは旅費の三百両だ。」
「いただこう。チョ・ソンジュンの馬房(マバン)はこれでおしまいだ!すっきりしたぜ!パングム。行くぞ。俺が取引の成功を祝って酒を飲ませてやる。立て。行くぞ。元気でお過ごしください!」
ソン・マンチはパングムを連れて行きました。
ソホンは緊張した面持ちで見守っていました。
庭。
「怖いわ。心臓が締め付けられ体が震える。やっと、十八年待ち続けた、時が来たの。キム・ハクチュンは松坡馬房(ソンパマバン)飲み込み命を狙われる。必ずチョ・ソンジュンがキム・ハクチュンを殺すように仕向けなさい。あとをつけて、二人の足取りを松坡馬房(ソンパマバン)に漏らさず伝えなさい。ソン・マンチから手形を奪いなさい。」
ソホン(チョン・ソレ)はオ・ドゥッケに命じました。
「はい。」
「無論手形はキム・ハクチュンの指示で奪ったように見せかけるのよ。キム・ハクチュンが馬房(マバン)を手に入れたい欲望にかられて松坡馬房(ソンパマバン)をタダ同然で買い取り手形を奪ったように見せかけるの。そうすれば、チョ・ソンジュンはキム・ハクチュンのもとを訪ねてくる。その時、私の、私の十八年も待ち望んだ復讐が叶うの。ボン先生の、身元を探りなさい。松坡馬房(ソンパマバン)のボン先生はどこの出身で何者か一つ残らず調べて。」
夜。
チョン・ボンサムは塀の外で様子を伺っていました。
「おお。あの女人(にょにん)は?」
ボンサムは家の敷地から出て来たソンドルに尋ねました。
「いたぜ。えへへへへ!ついに見つけた。あ〜胸がドキドキしてるだろ?」
「行くぞ。」
夜の馬房(マバン)。
「わかりました!奴がいました!」
「聞慶(ムンギョン)に現れたと連絡が来ました!」
チェ・ドリとワンバルたちは縁台に腰掛けているチョ・ソンジュンのもとに駆け寄りました。
広刃の刀を眺めていたチョ・ソンジュンは刀を鞘に収めると鞘に布を巻きました。
感想
客主9話の感想です。何とソン・マンチは義兄弟の兄のチョ・ソンジュンの松坡馬房(ソンパマバン)を盗んで売り払ってしまいました!そこにチョン・ソレも絡んでいてチョン・ソレはまっとうな父と違って随分とあくどいことをしましたね。チョ・ソンジュンはどうするつもりなのでしょうか。
チョン・ボンサムは美しい人妻ソリンに一目ぼれ。ソリンを演じているのはハン・チェアという女優さんです。ボンサムとソンドルはすぐに意気投合して仲良くなって。
ソリンのお父さんのチョ・スンドゥクという男はケダモノみたいな男で娘を売り込んで一儲けを目論むロクデナシ。そんな親につらい思いをしているソリンはいっそボンサムにさらわれたほうがまだ自由があると思います。
さて次回の10話はどうなるのでしょうか。続きが楽しみです。
チョン・ボンサムは美しい人妻ソリンに一目ぼれ。ソリンを演じているのはハン・チェアという女優さんです。ボンサムとソンドルはすぐに意気投合して仲良くなって。
ソリンのお父さんのチョ・スンドゥクという男はケダモノみたいな男で娘を売り込んで一儲けを目論むロクデナシ。そんな親につらい思いをしているソリンはいっそボンサムにさらわれたほうがまだ自由があると思います。
さて次回の10話はどうなるのでしょうか。続きが楽しみです。
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