スキップしてメイン コンテンツに移動

ファン・ジニ(黄真伊)がピョクケス(碧溪守)を誘惑した詩、プヨン(芙蓉)が金履陽を誘惑した詩

実在したファンジニ(黄真伊)とピョクケス(碧溪守)、プヨン(芙蓉)

黄真伊(ファンジニ)

女性差別が強い李氏朝鮮中期の時代に妓生(キーセン)の黄真伊(ファンジニ)という才媛がいました。黄真伊(ファンジニ)は松都(ソンド)の妓生で芸妓名は明月(ミョンウォル)です。妓生の身分は賤民です。黄真伊(ファンジニ)と金芙蓉(キム・プヨン, 1812〜1861)は美貌と文才をもって文人墨客を手玉にとり虜(とりこ)にしていました。

目次

黄真伊(ファンジニ)

都城(トソン)に高貴でプライドが高い碧溪守(ピョクケス)という王族の風流人がいました。碧溪守(ピョクケス)はたかが妓生の黄真伊(ファンジニ)に夢中になってしまう両班(ヤンバン)の男たちを馬鹿だと思っていました。その噂を聞いた黄真伊(ファンジニ)は碧溪守(ピョクケス)に近寄ります。

碧溪守(ピョクケス)が付き添いを連れて松都(ソンド)に来た月の明るい夜に、満月台で黄真伊(ファンジニ)は待っていました。碧溪守(ピョクケス)が満月台に近づいて来た時に黄真伊(ファンジニ)は次のような詩を詠みました。

靑山裏碧溪水
一到滄海不復還
明月滿空山
暫休且去奈何

緑なす深山の 碧溪守(ピョクケス)よ
流れの早きを誇るなかれ
ひとたび海に到れば
帰ってこられないものを
明月(ミョンウォル)が山に満ちたれば
しばし休んでいってもよいのでは

碧溪守(ピョクケス)は思わず振り返り落馬すると、黄真伊(ファンジニ)はそんな碧溪守(ピョクケス)を小ばかにしたといわれます。碧溪守(ピョクケス)はすっかり黄真伊(ファンジニ)の虜になりました。

芙蓉(プヨン)

平安道(ピョンアンド)成川(ソンセン)に芙蓉(プヨン)という妓生がいました。成川に出張した都城(トソン)の金履陽が芙蓉(プヨン)を連れて猟に出ました。高官の金履陽(1755~1845、咸鏡道観察使→礼曹判書・吏曹判書→戸曹判書→弘文館提学)は芙蓉(プヨン)に自分が詠んだ詩を唱和するように命じました。

南山雪積 能走走

金履陽(キム・イヤン)は熊の四つ足を書き忘れてしまいました。

北村人帰 大吠吠

芙蓉(プヨン)は犬の点をわざと抜いて返しました。

南山(ナムサン)とは漢陽(ハニャン)の南方の山で北村(プクチョン)は都城(トソン)の中の両班の住居地域のことです。

金履陽は熊の列火を書き忘れたため能という字になりました。芙蓉(プヨン)もわざと犬を大にして書きました。

金履陽は「大きく吠えるとはどういうことだ」と芙蓉(プヨン)に尋ねました。
芙蓉(プヨン)は次のような詩を詠みました。

大監恵給 熊四足
小妾何惜 犬一耳

「大監(テガム)から四つの足を賜ったのに、妾のわたくしごときが犬の耳をひとつ忘れたからといって何を惜しみましょうか」

金履陽は芙蓉(プヨン)と別れる時が来ました。芙蓉(プヨン)の美貌と聡明さに魂を抜かれた金履陽は次のような詩を詠みました。
魂逐行人去 身空獨依門
驢遲疑我重 添載一人魂
「魂は別れる人とともに去ってしまい、虚ろなこの身を独り門にもたれて辛くも支えている(本より引用)。(プヨンが乗っている)馬は我の魂が芙蓉と一緒に載っているため重さに足取り遅くとまどう(といった感じでしょうか?)。」

芙蓉(プヨン)は薛校書の称号を受けたほどの才女です。芙蓉(プヨン)は(おそらく20代のときに)金履陽(キム・イヤン)にこうも言ったそうです。「心が通じれば歳に何の関係がありましょうか。(中略)三十歳の老人もいれば八十歳の青年もいるのです。」と。金履陽は芙蓉(プヨン)と多くの詩を交わしました(芙蓉相思曲、寶塔詩、層詩)。官職を退いた金履陽は芙蓉(プヨン)とおしどり夫婦のように仲睦まじく過ごしました。芙蓉(プヨン)は金履陽(キム・イヤン)が91歳で亡くなると(このときプヨン33歳)一切外部との交流を絶って金履陽が眠るテファ山麓に葬るよう遺言を遺して49歳で生涯を閉じました。金履陽は腐敗官僚が殺意を覚えるほど嫌がる田制改革や貨幣の改良に取り組んだ有能な官僚だったようですよ!平壤の練光亭で芙蓉と金履陽は愛を語り合ったのでしょうか?聡明なプヨンにとっても自分の心を理解できるのはキム・リヤンただ一人と思っていたのかもしれません。

まとめ

韓国ドラマの「黄真伊(ファンジニ)」に実在したファン・ジニ、ピョクケス、プヨン。ドラマの中ではファン・ジニとプヨンは敵対関係にありプヨンはピョクケスと手を組んでファン・ジニに意地悪していました。ドラマではかなり過激でしたが、この詩にもファンジニがドラマで演じられているような知識と才能を武器として上から人を見下すような女性であったことが想像できそうですね。プヨンもレベルの高いユーモアを返すところが身分が高くずる賢い両班の男性との付き合いで磨かれていったコミュニケーション能力の高さが伺えます。高齢の男性が二十代後半ほどの若い女性に「歳が恋愛に何の関係がありましょうか」なんて言われるとコロリと魂を抜かれてしまうのですね!意外と両班の男性は純朴だったのでしょうか???ほとんどの人が詩も読めず漢字すら読めずロクに言葉も知らなかった時代ですから、女性としてはトップレベルの教養があったことがわかります。

歴史のところは「朝鮮の歴史と文化(姜在彦, 1993)」と조선의 풍류객 - 50년의 나이차를 초월한 사랑, 연천 김이양과 운초 김부용から引用しました。

関連記事

関連コンテンツ

このブログの人気の投稿

薯童謠(ソドンヨ)(全66話)1話~最終回あらすじとネタバレ感想まとめ

薯童謠(ソドンヨ)1話~最終回あらすじとネタバレ感想まとめ ソドンヨ 1話~66話 あらすじと感想 長文注意。薯童謠はよかったので感想もあらすじもしっかり書いてます!薯童謠とは新羅に伝わる童謡で物語がすすむにつれて意味がわかってきます。百済は三韓のうちのひとつを引き継ぎ前の国の王を倒す際にとある約束をしました。百済の技術師モンナス博士は仲間を連れて新羅に亡命します。そして新羅でしばらく過ごした後に・・・詳しくはソドンヨ各話あらすじをご覧ください。 薯童謠(ソドンヨ) 1話 薯童謠(ソドンヨ) 2話 薯童謠(ソドンヨ) 3話 薯童謠(ソドンヨ) 4話と5話  新羅へ亡命 薯童謠(ソドンヨ) 6話 薯童謠(ソドンヨ) 7話 薯童謠(ソドンヨ) 8話 薯童謠(ソドンヨ) 9話 薯童謠(ソドンヨ) 10話 11話 薯童謠(ソドンヨ) 12話 薯童謠(ソドンヨ) 13話 薯童謠(ソドンヨ) 14話 薯童謠(ソドンヨ) 15話 薯童謠(ソドンヨ) 16話 薯童謠(ソドンヨ) 17話 薯童謠(ソドンヨ) 18話 薯童謠(ソドンヨ) 19話 薯童謠(ソドンヨ) 20話 薯童謠(ソドンヨ) 21話  木羅須百済に帰国 薯童謠(ソドンヨ) 22話 薯童謠(ソドンヨ) 23話 薯童謠(ソドンヨ) 24話 薯童謠(ソドンヨ) 25話 薯童謠(ソドンヨ) 26話 薯童謠(ソドンヨ) 27話 薯童謠(ソドンヨ) 28話 薯童謠(ソドンヨ) 29話 薯童謠(ソドンヨ) 30話 薯童謠(ソドンヨ) 31話 薯童謠(ソドンヨ) 32話 薯童謠(ソドンヨ) 33話 薯童謠(ソドンヨ) 34話 薯童謠(ソドンヨ) 35話 薯童謠(ソドンヨ) 36話 薯童謠(ソドンヨ) 37話 薯童謠(ソドンヨ) 38話 薯童謠(ソドンヨ) 39話 薯童謠(ソドンヨ) 40話  武康太子の誕生 薯童謠(ソドンヨ) 41話 薯童謠(ソドンヨ) 42話 薯童謠(ソドンヨ) 43話  威徳王逝去 薯童謠(ソドンヨ) 44話  惠王即位 薯童謠(ソドンヨ) 45話 薯童謠(ソドンヨ) 46話 薯童謠(ソドンヨ) 47話 薯童謠(ソドンヨ) 48話  法王即位 薯童謠(ソドンヨ) 49話 薯童謠(ソドンヨ) 50話 ...

薯童謠(ソドンヨ)最終回第66話恋の成就のあらすじとネタバレ感想

薯童謠(ソドンヨ)最終回 あらすじ 夜の百済王宮。 女性たちが華やかに舞い、貴族の男とメクトスたちは庭で酒と食事を楽しんでいました。 「こんなに楽しい日は生まれて初めてだ。ははは。」 メクトスは有頂天でした。 「親父、俺も結婚したいよ。」 ポムノはメクトスに言いました。 「何だと。」 「チョギとだよ。陛下がうらやましいよ。」 「父親を片付けてから結婚しろ。」 「あー!ちくしょう。」 「ところで陛下は男女の営みをご存知だろうか。事前に教育するのを忘れてたよ。」 メクトスは卑猥な想像をしていました。 「そんなの心配いりませんよ。(未経験の)俺でも知っています。」 トゥイルはメクトスに言いました。 「そうか?」 「今頃うまくやってますよ。」 「はっはっはっはっはっは。」 男たちは笑いました。 「紙に穴をあけてのぞきたいところだけど、陛下にそれはできないな。」 メクトスは笑いました。 寝所の控室。 「結髪(キョルバル)の用意はできた?」 モジンはウンジンとウスに言いました。三人は桃色に白地の縁取りの刺繍の絹を着て初夜の営みの準備をしていました。 「はい。」 「香油は?」 「用意しました。」 ウンジンはモジンに言いました。 「櫛は?」 「置きました。」 ウスが答えました。 「浄化水は?」 「用意しましたー。」 チョギは明るく言いました。 「分かったわ。」 三人は王の寝所を出ました。 「準備が整いました。」 寝所の前で控えていたボミョンが外に出てきたモジンに言いました。 「はい。では五歩下がるように。」 モジンは侍従と侍女たちに命じました。 ウンジンとチョギとウスは口に手を当てて照れ笑いして顔を見合わせました。 「陛下。初夜の儀式を始める時間です。今から申し上げる順序でなさいませ。」 モジンは寝所の中に向かって話しかけました。 「まず、生涯を共にすると誓う意味の結髪をしてください。」 ベッドの上には白地の縁に金の刺繍が施された衣に着替えたチャンと白い絹に薄桃色の縁取りの絹を着たソンファ公主が腰かけていました。二人の髪が少し切られて絹の敷物の上に赤い紐で結ばれ置かれていました。 チャンは置...

「薯童謠(ソドンヨ)」(全55話)第40話 武康太子の誕生 のあらすじとネタバレ感想

「薯童謠(ソドンヨ)」(全55話)第40話 武康太子の誕生 のあらすじとネタバレ感想 40話 武康太子の誕生 あらすじ 薯童謠[ソドンヨDVD フクチピョンの衛士部の兵士は国王殿の倉庫で王室の文章を探していました。ワングはすぐに状況を察知して威徳王に報告しました。威徳王は便殿会議を招集しました。威徳王はプヨゲ上佐平に譲位をすると言いました。4日後の卯の刻に譲位の儀式が執り行われます。 「お前は私の弟だ。私とは立場が違うが父上の死も見届け私の苦悩も目にしたことだろう。息子をすべて失った今私に欲はない。なのにまだ私を信用せず衛士部を国王殿に入れるのか。私がお前に王位を譲って死にゆく日まで安らかに過ごしたい。宮殿から衛士部の兵を撤収させてくれ。祠堂くらいしか出入りするつもりはない。兄としての最後の願いだ。」 プヨゲは一瞬何のことかわかりませんでしたが、プヨソンの仕業とわかりました。プヨゲはプヨソンを呼び兵を撤収させるように命じました。ウヨンは父の許可なくなぜこのようなことをしたのかと義兄のプヨソンを責めました。プヨゲはもう王に力がないので兵を下げるように息子に命じました。 プヨソンは兵を撤収し、今後の人事について決めようとフクチピョンとサテッキルに命じました。 威徳王はモンナス博士にチャンを連れてくるように、ワング将軍にはチャンドゥの確保を命じました。 「あれを準備しろ。そうだ。できるだけやってみる。息子に最後の意地を見せたい。だからチャンを連れてこい。内密に連絡し私が会いたがっていると伝えろ。チャンドゥの確保は指示したか?万一の事態に備え親衛隊のほかにも兵が要る。ほかにあてはないか?チャンの安全のために必要だ。慎重に動け。私が迷っていたせいであまり時間がない。気を引き締めて動くように。」 天の峠学舎の技術士たちは皆、逃げずに残るとモンナス博士に誓いました。逃げたがっていたメクトスも残ると言わされました。モンナス博士は第四王子の即位のために内密に準備を進めるように命じました。ウンジンたちは緊張しました。 チャンドゥは山に連れ出されてフクチピョンに処刑されようとしていました。 「罪人チャンドゥ、お前は第四王子の指示ではあるがお前は太子様の命を狙った。公開処刑をするべきだが譲位式も近いのでここで刑...