へチ王座への道14話
目次
あらすじ
延礽君(ヨニングン)を代理聴政(テリチョンジョン、王の代わりに政務を行うこと)に推薦する上疏が国王景宗の知るところとなりました。腹を立てた景宗(キョンジョン)は延礽君に代理聴政を任せました。延礽君イ・グムは席藁待罪(ソッコテジェ)をして国王に謝罪し王命の撤回を求めました。しかし密豊君(ミルプングン)はさらに偽の告発文を朝廷に忍ばせたのでした。
回想シーン(昔)。
延礽君(ヨニングン)が剣術の稽古で密豊君(ミルプングン)を打ち負かす場面。延礽君が転倒した密豊君に手を差し伸べました。密豊君は延礽君の手を掴むと起き上がりました。
「アイゴ~。また兄上の勝ちだ。兄上に起こしてもらいたくてわざと転んだのです。次は私がこうします。」
密豊君は延礽君に冗談を言いました。
延礽君は刀の持ち方を密豊君に優しく教えてあげました。
夜の大殿(テジョン)前の石畳。
「耐えてください兄上。卑怯な奴らに負けないでください。」
異母弟、延齢君(ヨルリョングン)の幻が延礽君に語り掛けました。
「フォンや・・・。」
延礽君(ヨニングン)は弟の手に触れ、泣きながら頬に触れました。
夜が明けました。
「耐えてください兄上。お前はこの手で葬ってやる。このまま死んだら困る。」
密豊君(ミルプングン)がやって来て延礽君に囁きました。
「寂しくないように、私が、お前を殺してやる。」
延礽君は密豊君に言い返しました。
「主上殿下のおな~り~。」
尚膳(サンソン)の声がすると、景宗(キョンジョン)が現れました。
「殿下。」
延礽君(ヨニングン)は蒼白な表情で兄を見上げました。
「だけど私はお前を信じようとした。お前を政敵でなく弟として。だがお前は私に刃を向けようとした。王座を狙い逆心を抱いた!」
景宗(キョンジョン)は怒っていました。
朝廷。
国王と官僚たちが会議に出席していました。
「本日、儒生キム・ソニョン、儒生イ・キジンは十二名の逆徒とともにイ・グムのために王座を奪おうと謀反を企んだ。王を殺し王座を奪おうとした。余はこの事件の真相を明らかにするため特別に裁判するための機関である鞫庁(ククチョン)を設置する。」
右議政の趙泰耉(チョ・テグ)は景宗(キョンジョン)の王命を読み上げました。
李光佐(イ・グァンジャ)をはじめとする少論派も、ミン・ジノンを筆頭とする老論派もざわめきました。
司憲府(サホンブ)。
パク・ムンスと同僚が憲府(ホンブ)に駆け付けると領議政キム・チャンジュンの孫と吏曹判書(イジョパンソ)イ・イギョムの息子が連行されていました。
「あんた、一体何をしたんだ。」
パク・ムンスは指揮をとっていたウィ・ビョンジュに尋ねました。
「領相(ヨンサン、領議政)キム・チャンジュンの孫と吏判(イパン)イ・イギョムの息子が逆徒と徒党を組んで反乱を企てだのだ。誰を王にしようとしたのか明らかだ。」
ウィ・ビョンジュは言いました。
「ウィ・ビョンジュ!」
パク・ムンスは驚きました。
「いや。違う。執義(チビ)ナウリと呼べ。パク・ムンス。これからもそう呼ぶことになる。」
ウィ・ビョンジュは言いました。
漢城府(ハンソンブ)の門前。
延礽君(ヨニングン)は兵士に囲まれながら漢城府(ハンソンブ)まで歩いていました。
「世弟邸下。」
少論のチョ・ヒョンミョンが先回りして待っていました。
「私のことを思っていてくれるのだな。だが心配はいらぬ。私がどこまでやれるか必ず、証明してみせる。」
延礽君(ヨニングン)は言いました。
漢城府(ハンソンブ)の兵が慌ただしく動き待っていました。
推鞫廳(チュククチョン)という建物の前に王が鞠問するための場が設置されました。
延礽君の師匠、李光佐(イ・グァンジャ)は心配そうに様子を見守っていました。
王宮の一角。
老論派の重臣たちはミン・ジノンを先頭として移動していました。
「今鞫庁(ククチョン)が作られています。裁判官と裁判長の選任は我ら老論の同意を得るべきでは?」
側近の一人が言いました。
反対側から少論派の大臣たちが趙泰耉(チョ・テグ)を先頭に歩いてきました。
「右相(ウサン、右議政)。少し話をしないか。」
閔鎭遠(ミン・ジノン)は趙泰耉(チョ・テグ)に談判しました。
部屋。
ミン・ジノンはチョ・テグと二人きりになりました。
「謀反の鞫庁(ククチョン)を設置したのはそなたの意向か殿下の御意向か?」
閔鎭遠(ミン・ジノン)は探りを入れました。
「どうした?」
チョ・テグは言いました。
「突然世弟(セジェ)を排除しようとしたのはなぜだ。」
ミン・ジノンは尋ねました。
「明らかに謀反だ。他の意図があると思うか?」
チョ・テグは正直に答えました。
「確かにそなたはそのような人ではない。」
ミン・ジノンは納得しました。
「そちこそ意外だ。なぜ代理聴政の上書の時から退いている。東宮殿を排除したかったのになぜだ。」
チョ・テグも疑問を呈しました。
「無理して拾い食いをすると腹を壊すではないか。無理やり世弟(セジェ)を引き下ろしたくてもこうして世弟(セジェ)を追いやるのはこのやり方が気に食わぬからだ。」
ミン・ジノンは言いました。
「(鞠問は)おぬしの考えでは!?」
チョ・テグはハッとしました。
「そなたは認めたくないだろうが、どこか怪しいと思わないか?」
ミン・ジノンは言いました。
「左相(チャサン)。」
チョ・テグは首をかしげました。
「よく考えてみろ。」
ミン・ジノンはそう言うと部屋から出て行きました。
司憲府(サホンブ)。
ウィ・ビョンジュは大司憲(テサホン=長官)に向かって鞫庁(ククチョン)の裁判官の人選をめぐり話し合っていました。部屋の外でチュ・ヨンハンたちが聞き耳を立てていました。老論の下っ端のチュ・ヨンハンは政局が混乱して誰の側につけばよいか悩みました。
「私を裁判官に任命してください。大司憲令監(テサホンヨンガム)のかわりに私を任命してください!私がこの謀反を突き止めました。」
ウィ・ビョンジュは大司憲に向かって怒鳴りました。
「そちがなぜ!資格があるのか!」
大司憲も怒鳴り返しましたがウィ・ビョンジュに説得されてしまいました。
「なら令監が世弟(セジェ)を直接取り調べるのですか。世弟が無罪になったらどうします。そのご様子では鞫庁(ククチョン)で謀反の追及すらできないではありませんか!」
ウィ・ビョンジュは言いました。
「貴様!ウィ執義(チビ)!!!」
大司憲は無能と言われて怒りました。
ユ掌令(チャンリョン)と持平(チピョン)たちは黙って二人のやり取りを聴いていました。
「貴様令監に向かって何を!」
ユ持平(チピョン)はウィ・ビョンジュを叱ろうとしました。
「そちがやるか?命をかけて?結局誰もやりたがらないくせに。危ないことは生贄に差し出された私に任せればよいのです。老論どもではなく南人に。私を鞫問官(ククモンガン, ※筆者の当て字)に任命してください令監。世弟(セジェ)を廃して私が再起する道を探ります。」
ウィ・ビョンジュはユ掌令(チャンリョン)を蹴ると、大司憲に紙を投げつけて任命を迫りました。
憲府(ホンブ)の一室。
パク・ムンスは部屋に入って来てチャンダルとアボンに呼びかけました。チャンダルとアボンは神妙な顔つきでウィ・ビョンジュがハン・ジョンソク監察の死を担当した記録の原本を読んでいました。
「以前見た物は捏造されたものでした。これが検視記録です。後頭部に裂傷があります。」
チャンダルはパク・ムンスに言いました。
「ウィ・ビョンジュ。これが真実なのか。ジョンソク兄者の死の真相を伏せようとしたのはこのためか!兄者の死に隠したい秘密があるということだ。」
パク・ムンスは憤りました。
「まさかウィ執義(チビ)がハン監察様を?」
アボンは気が付きました。
「ウィ・ビョンジュ。ジョンソク兄者の死をねつ造しただけでなくだけでなく、今度はもう一人の兄者世弟様をーーー!」
パク・ムンスは叫びました。
「アボン。奴らは俺たちが殺そう。」
チャンダルは言いました。
「行きましょう。邸下(チョハ)までがやられてしまいます!」
アボンは言いました。
漢城府(ハンソンブ)の鞫庁(ククチョン)。
少論と老論の領袖と重臣たちは鞫庁(ククチョン)の控室に入って顔を見合わせました。
ウィ・ビョンジュは部下を大勢引き連れて鞫庁(ククチョン)の場に現れ、官僚に名前を名乗りました。
取調室。
ウィ・ビョンジュが取調室に入ると世弟(セジェ)はいませんでした。
東宮殿。
延礽君(ヨニングン)はやつれた様子で東宮殿に戻りました。チャドンとハ尚宮は延礽君(ヨニングン)の脇を支えました。
漢城府(ハンソンブ)の鞫庁(ククチョン)控え室。
「一体どういうことだ?世弟(セジェ)が東宮(トングン)に戻っただと?」
趙泰耉(チョ・テグ)はチョ・ヒョンミンから報告を受けて驚きました。
「義禁府同知事(トンジサ)の私の判断です。今は調査を受けられないお体です。」
チョ・ヒョンミンは答えました。
「邸下(チョハ)は席藁待罪でお体を痛めておられます。東宮殿で治療を受けることが礼儀です。必要な処置です。」
李光佐(イ・グァンジャ)は説明しました。
「礼儀だと?世弟(セジェ)には今謀反の嫌疑があります。」
ウィ・ビョンジュが部屋に入って来ました。
「そうだ。まだ疑いの段階だ。まだ罪は証明されていない。」
李光佐(イ・グァンジャ)は言いました。
「認めるべきです。この告発書は何ですか?」
ウィ・ビョンジュは告発文を見せました。
ミン・ジノンは聡明な眼差しで様子を観察していました。
「告発書?そちが見つけたこれか。ところで、これのどこで反乱を企てた逆徒どもが東宮殿と共に企てたと書いてあるんだ?私は何度も読んだがどこにも書いてなかった。反乱を企てた者たちも、世弟(セジェ)様ご自身も否認しています。ここにあるのは主上殿下の毒殺を謀ったという証拠があるのみだ。世弟(セジェ)が関わった証拠はない。政治の行く末がかかっているのです。慎重に、慎重にならねばなりません。」
李光佐(イ・グァンジャ)はウィ・ビョンジュに言うと、趙泰耉(チョ・テグ)の顔を一瞥しました。
東宮殿。
「邸下(チョハ)。そのお体では無理でございます。」
延礽君(ヨニングン)は世弟(セジェ)の服に着替えて出かけようとしていました。チャドンは世弟を休ませようとしていました。
「ならば私が死ぬのを待っていろと?他の誰でもないフォンを殺した密豊君(ミルプングン)の思い通りにさせぬ。この戦には私が必ず勝ってみせる。」
延礽君(ヨニングン)は帽子をかぶりました。
寺。
「世弟の奴が最後のあがきを見せようとしている。少論と老論の何人かも味方についた。」
密豊君(ミルプングン)は寺に戻るとユニョンに言いました。
「ちょっと待って。あの人が来たの。タルムン。」
ユニョンは言いました。
すると、黒い服を着たタルムンが姿を見せました。
「ユニョンお前。連れてくると強気だったが本当に連れて来るとはな。」
密豊君は喜びました。
「中に入って。あの人と話しましょう。」
ユニョンは言いました。
部屋の中。
「ユニョンはやり手だな。あの顔と言葉でお前を丸め込んだ。ゴロツキを落とすのはラクか。世弟があんな姿になって考えを変えたんだろ。」
密豊君はタルムンに言いました。
「焦っておいでのようですが、要件をおっしゃてください。」
タルムンは言いました。
「ゴロツキのくせに強気だな。」
密豊君は言いました。
「あ~。実力よりも屈服をお望みですか?」
タルムンは言いました。
「気に入った。口を開けばカネばかり望む奴よりマシだ。ちょうどよいところに来た。すぐにその実力を見せてくれ。都城(トソン)をひっくり返す。今すぐ。俺の望み通りにする。」
密豊君は言いました。
タルムンは部屋から出て来ました。
「話は、できたの?」
ユニョンはタルムンに尋ねました。
「俺の得意な事を、頼まれた。俺もバカだ。お前を死なせたくない。お前に捨てられたけど。安心しろ。密豊君が望む、それ以上の成果を上げる。」
タルムンはそう言って帰りました。
アジト。
「時間がない。すぐに都城(トソン)中にばら撒け。市場、渡し場だけでなく都城中に撒け!何も言うな!指示に従え。責任は俺がとる。」
タルムンは語り部は配下の男たちに貼り紙を命じました。
クンテたちは文書を見て不安になりました。
街。
「ジョンソク兄者が死んだ日に当直だった監察がいる。その人に会う。」
パク・ムンスはアボンとチャンダルを連れて忙しそうに歩いていました。チャンダルは当時検視をした者に会ってくると言いました。アボンは壁の張り紙に人が集まっている様子を見つけました。
「どういう事だ。世弟邸下は先王の子じゃないとは?崔氏が王宮の外で作った子なのか?」
人々は噂していました。
パク・ムンスは紙を取って読みました。
「淑嬪チェ氏に、別の人のお腹の子がいたが、その子を王にしたそうだ。主上殿下とは兄弟ではない。王座を奪ったってへっちゃらさ。」
語り部は人々に噂を広めました。
「お前今何を言っている!邸下が先王の息子じゃないだって?ふざけた事を言うな!」
ソ・チャンダルは人をかき分けてやって来て弟分の語り部の襟首を掴んで怒鳴りました。
「ソ兄者。私にもどうすることもできなくて。本当です。」
語り部は言い訳をしました。
「どういしてですか?味方だったのにどうしてこんな時に世弟邸下を裏切るのですか?」
アボンも語り部に言いました。
「あ~。やりたくてやってるわけじゃない。タルムン兄者が何を考えているのか私にもわからぬ。」
語り部のオジサンは言いました。
アジト。
「言え。理由があるんだろ。こんなクソ(犬)みたいなことする理由が。」
パク・ムンスは入って来るなりタルムンの喉を抑えつけました。
「後ろ盾がダメになったので他に乗り換えました。」
タルムンは言いました。
「後ろ盾だと?お前って人は。邸下(チョハ)はお前を信じてた。」
パク・ムンスは言いました。
「いい。純粋だな。元来人間はなんでもできます。ん?」
タルムンは嫌味たっぷりに言いました。
「やーーーーー!お前のような最低な奴は怒る価値もない。昔のよしみで、見逃してやる。そうか。もういい。うせろ。早く。後ろ盾を逃すなよ。」
パク・ムンスは去ろうとしました。
「昔同志だったよしみで一つ教えてやろう。そんなに心配だったら東宮殿に会って解決策を探すんだな。え?都城(トソン)の掲示を読むしか能がない旦那さん。」
タルムンはパク・ムンスの背中に向かって言いました。
パク・ムンスはアジトから出てアボンとチャンダルと合流しました。アボンとチャンダルは都城(トソン)中に紙が張られていると言いました。
「行くぞ。もう邸下の味方は俺たちだけだ。」
パク・ムンスはうなだれたように去りました。チャンダルは店の前に唾を吐きました。
その様子をト・ジグァンの女武士ファウンが見張っていました。
妓楼。
酒を飲んでいる密豊君(ミルプングン)とト・ジグァンのもとにファウンが戻って来てセジェの監察が怒鳴っていたと報告しました。ト・ジグァンはタルムンが世弟(セジェ)を裏切ったと思いました。
「実力だけでのし上がって来た者はいんなそうだ。人の皮をかぶった獣だ。民衆にも見放されて世弟(セジェ)は耐えられるだろうか。民衆も主上(チュサン)に味方したからな。」
密豊君(ミルプングン)は笑いました。
夜の漢城府(ハンソンブ)。
罪のない両班たちが拷問されうめき声を上げていました。
大司憲(テサホン=長官)たちは拷問の様子を見守っていました。
「なんてしぶとい奴らだ!世継ぎも作れぬ主上こそ大罪人だと言ったのは誰だ。」
ウィ・ビョンジュは熱した鏝(こて)を罪人の脚に押し付けました。
「そんなことを行ってません。」
罪人は犯行を否定しました。
「黙れ。証人がいる。」
ウィ・ビョンジュは言いました。
回想シーン。
ト・ジグァンの妓楼で飲む領議政の息子たち。彼らは妓女(キニョ、妓生の女)の前で景宗(キョンジョン)が子をなせないことを笑っていました。
何者かがキム・チャンジュンの孫の部屋に侵入して屏風の裏に箱を隠しました。
「お前らは主上を毒殺しようと企てた。反乱を企て王座を奪おうとした。世弟(セジェ)を王にしようと逆心を抱いた。逆徒の首謀者は世弟(セジェ)だ!そう吐くまで拷問を続けよ!」
ウィ・ビョンジュは箱の中にあった毒薬を証拠として示しました。
領議政の孫たちはさらに拷問されました。
王の部屋。
「連行された逆徒どもはまだ世弟(セジェ)の名を吐かぬのか。」
景宗(キョンジョン)は趙泰耉(チョ・テグ)に尋ねました。
「白状すれば死ぬとわかっているからでしょう。しかしあと少しです。」
趙泰耉(チョ・テグ)は言いました。
牢屋。
「左相(チャサン)。私たちが何をしたというのだ!」
領議政のキム・チャンジュンは投獄されていました。
「だが即位する前の東宮(トングン=景宗)をお二人が殺そうとした告発も含まれています。」
面会に来たミン・ジノンが厳しい口調で言いました。
「それは!そうだ。そのような話をしたことがある。だが言葉のあやだ。老論を思ってのことだ。」
イ・イギョムは弁解しました。
「老論を思っての事なら、秘密にすべきだったのです!」
ミン・ジノンは言いました。
「これまでは分不相応にそなたと張り合おうとした。私が無理なら孫だけでも助けてくれ。わが家門唯一の跡取りなのだ。」
キム・チャンジュンは泣きました。
「私の息子も助けてくれ。世弟(セジェ)を王にしようとしたなど事実でありません。大監(テガム)。」
イ・イギョムも泣きました。
ミン・ジノンは二人が謀反を企てたのではないと思いました。
夜中の取調室。
「どうして世弟(セジェ)邸下(チョハ)が?」
ミン・ジノンが戻ると大司諌(テサグァン)他、数人の重臣の他に延礽君(ヨニングン)が来ていました。
「謀反を疑われる私が夜分に鞫庁(ククチョン)に来てはおかしいか。ここに引きずり出そうとしていたのだろう。私が来たことが問題になるとは。私が聴取に応じよう。だがその前に左相(チャサン、左議政)と二人で話したい。」
延礽君(ヨニングン)は言いました。
少論の会議室。
李光佐(イ・グァンジャ)はチョ・ヒョンミンから世弟(セジェ)がミン・ジノンと話し合っている報告を受けました。
部屋。
「虎にはじめてかまれた時は恐怖でも、何度もかまれるとその恐怖も人生の友だと思うようになる。そろそろ獣を捕まえなければ。これ以上は我慢ならぬ。左相(チャサン、左議政)はこたびは妙に距離を置いている。なぜか。すぐに私を消せるのに大監(テガム)は静観している?それは知っているからだ。この事件の背後に密豊君(ミルプングン)がいると。下手に同じ舟に乗り失敗するかと慎重になっている。最後まで私の話を聞くがよい左相(チャサン、左議政)。私の話はこれからが本番だ。私の言う通りならしばし舟を乗り換えてはどうか。呉越同舟。私と政治をするのだ。春秋戦国時代、敵国の者同志が同じ舟に乗ったように利害が会えば一致団結する。それが政治ではないか?」
延礽君(ヨニングン)はミン・ジノンと二人きりで話しました。
「呉越同舟とは。私に邸下(チョハ)がそのようなことをおっしゃるとは驚きです。ですが間違っておいでです。私からすれば今は絶好の好機です。邸下(チョハ)が王になられることを望みません。誰かが邸下(チョハ)を消してくれるというのにどうして邸下(チョハ)と政治をするのですか。」
ミン・ジノンは言いました。
「あなたは政事(チョンサ)と国(グク)を憂いているからだ。違うか。私を殺すことはできてもそのせいで国が乱れることは望んでいないのでは?あなたという人は、ミン・ジノンはそういう人だ。だから今宵、我々はこうして向かい合っている。道は違えど同志ではないか。少なくともそちはこのくらいの政事はわかる人だ。どうする?統制の効かない密豊君(ミルプングン)を王座に就くのを見守っているだけか、まずは私と同じ舟に乗り、あとから突き落とすか。」
延礽君(ヨニングン)はミン・ジノンに言いました。
ミン・ジノンが部屋から出て来ました。待っていた大提学(テジェハク)たちは様子を尋ねました。
「(ここまで成長したか。世弟が。)」
ミン・ジノンは心でつぶやきました。
夜中の東宮殿。
延礽君(ヨニングン)が戻って来るとチャドンは心配そうに成果を尋ねました。延礽君(ヨニングン)はミン・ジノンが提案に乗る可能性は薄いと言いました。
その時、世弟(セジェ)に目通りを願うパク・ムンスが兵士に遮られていました。
「ムンスや!なぜここに?今私に会いに来てはならぬのに。」
延礽君(ヨニングン)は言いました。
「いいえ。今こそ邸下(チョハ)に会うべきなのです。私は邸下(チョハ)の弟分ですから。」
パク・ムンスは真剣な様子で言いました。
世弟(セジェ)の部屋。
パク・ムンスはタルムンが都城(トソン)中に噂を広めたことを延礽君(ヨニングン)に報告しました。
延礽君(ヨニングン)は母を侮辱され、自分が王の子ではないと中傷されている文を読みました。
妓楼。
タルムンは密豊君(ミルプングン)に呼ばれて妓楼を訪れました。
上機嫌の密豊君(ミルプングン)はタルムンに酒を注ぎました。
世弟(セジェ)の部屋。
延礽君(ヨニングン)はパク・ムンスにタルムンを恨むべきではないと言いました。
「タルムンは我々とは別の責任(乞食の救済)を負っている。」
延礽君(ヨニングン)は言いました。
パク・ムンスはウィ・ビョンジュがハン・ジョンソクの死をねつ造したと報告しました。
延礽君(ヨニングン)は世渡りが下手だなとパク・ムンスに言いました。
「人は、生まれたまま生きるのです。」
パク・ムンスはそう答えると帰ろうとしました。
「文字の書けるタルムンがあえて別の字を書いた。」
その時、延礽君(ヨニングン)はタルムンが書いた張り紙に秘密が隠されていることに気が付きました。延礽君(ヨニングン)はハ尚宮(チョホン)にチャドンをすぐ呼んで来るよう命じました。
回想シーン。
「ひとつ忠告しておこう。都城(トソン)中の張り紙を読むしか解決策はなさそうだが。」
タルムンはパク・ムンスに言いました。
パク・ムンスはタルムンの言葉を思い出しました。
妓楼。
「私の者になったようだな。開けてみろ。」
密豊君(ミルプングン)はタルムンに箱を渡そうとしました。
「私の望みはカネではありません。」
タルムンは断りまた。
「だがお前にも望みがあるのだろう?」
密豊君(ミルプングン)は言いました。
「そうです。私にも望みがあります。」
タルムンは答えました。
その時、扉が開き、ト・ジグァンが「あの者が来ました」と報告しました。
「待っていろ。そちの望みは後で聞いてやる。」
密豊君(ミルプングン)は部屋から出て行きました。
タルムンは密豊君(ミルプングン)の跡を尾行しました。
密豊君(ミルプングン)とト・ジグァンは清国の商人と話していました。商人は売り渡した毒には解毒剤が無いと話していました。
その様子をタルムンが盗み聞きしていました。
ト・ジグァンは人の気配に気が付きファウンに命じました。
ト・ジグァンは場所を変えるべく密豊君(ミルプングン)たちを案内しました。
タルムンが密豊君(ミルプングン)の跡を尾行しているとクンテがタルムンを呼びました。
「早く戻ってください。これは罠です。ト・ジグァンに気づかれました。ト・ジグァンの手下が戻りました。早く!」
クンテはタルムンに言いました。
妓楼。
ファウンが扉を勢いよく開けるとタルムンは落ち着いてツマミを食べていました。
真夜中の都城(トソン)の街。
パク・ムンスとチャドンは都城(トソン)中の張り紙を集めて東宮殿に戻りました。
世弟(セジェ)の部屋。
延礽君(ヨニングン)たちは漢字を集めて暗号を解読しました。
「これは密豊君(ミルプングン)という意味だ!タルムンは私を裏切ったわけではない。あの者は今、私のために動いている。」
延礽君(ヨニングン)は気が付きました。
早朝の漢城府(ハンソンブ)。
「あ~チクショウ!誰も白状しないのか!続けろ!やれーーー!」
ウィ・ビョンジュは疲れ切っていました。
民家。
「監察から兵曹に栄転したのに粗末な家に住んでいるな。」
パク・ムンスはアボンとともに屋敷に行きました。
「誰です?」
男がパク・ムンスに声を掛けました。
検視室。
チャドンは検視官に文書を見せました。男はウィ・ビョンジュに頼まれて二種類の検視記録を書いたと言いました。
民家。
パク・ムンスは男から事情を聴きました。
かつて司憲府(サホンブ)の監察だった男はウィ・ビョンジュのはからいで兵曹に移ったが会ってもらえなくなり没落したと打ち明けました。
パク・ムンスは男に、ハン・ジョンソクが死んだ日に誰が一緒にいたか尋ねました。
鞫庁(ククチョン)。
ウイ・ビョンジュは逆徒を世弟(セジェ)と対面させて証言すべきだと大臣たちに言いました。
李光佐(イ・グァンジャ)たちは証拠が出てないと反対しました。大司諌(テサグァン)はウィ・ビョンジュの意見を支持しました。
「どうお考えか。左相(チャサン、左議政)。」
趙泰耉(チョ・テグ)はミン・ジノンに尋ねました。
ミン・ジノンは昨夜の延礽君(ヨニングン)との話を思い出しました。
「ここで時間を費やしても無意味だ。やはり世弟(セジェ)邸下(チョハ)に尋ねるのが正当だろう。」
ミン・ジノンは言いました。
ミン・ジノンはチョ・テグと部屋で二人きりになりました。
「もうすぐ主上殿下がおいでになる。もうすぐ尋問がはじまるでしょう。」
趙泰耉(チョ・テグ)は言いました。
「そうでしょう。世弟(セジェ)の罪状を明らかにせねば。」
ミン・ジノンは答えました。
「今回のそちは関わらぬと思っていたが。」
チョ・テグは尋ねました。」
「朝廷が混乱している。ここで見過ごすことはできぬ。」
ミン・ジノンは答えました。
仁元大妃(イヌォンテビ)お部屋。
「私には世弟(セジェ)に何もしてやれぬが、せめてそれを贈りたい。先王の遺品だ。父の遺品を子に渡すのは当たり前ではないか。それは世弟(セジェ)の物だ。受け取りなさい。噂が嘘であることは私が誰よりもわかっている。だから汚名をそそいで戻って来なさい。」
仁元大妃(イヌォンテビ)は延礽君(ヨニングン)に眼鏡を贈りました。
「大妃ママ・・・。」
延礽君(ヨニングン)は胸が熱くなりました。
鞫庁(ククチョン)。
延礽君(ヨニングン)が出頭しました。
「セジェ邸下。結局、聴取を受けることになりましたね。」
ウィ・ビョンジュは嫌味たっぷりに世弟(セジェ)に言いました。
ミン・ジノンは自分から延礽君(ヨニングン)と二人きりで話したいと言いました。
建物の裏手。
「私の説得はそなたには通じぬと思ったが。」
延礽君(ヨニングン)はミン・ジノンに言いました。
「説得ですと?そのようなことが政治で可能ならばどうして血の嵐が吹き荒れるのですか。政治とは報復です。血が血を呼び永遠の復讐。それが政治です。」
ミン・ジノンは言いました。
鞠問の場。
景宗(キョンジョン)が現れました。皆は拷問をやめ、立って王を迎えました。景宗(キョンジョン)は王座に座りました。
パク・ムンスは急いでいました。
「兄者!兄者!見つけました!」
クンテは慌ててタルムンに報告しました。
鞫庁(ククチョン)。
縄に縛られたキム・チャンジュンとイ・イギョムが連れて来られました。
「セジェ邸下。私たちに罪はないのです。謀反などとんでもございません!」
イ・イギョムは無実を訴えました。
趙泰耉(チョ・テグ)は二人を跪かせるよう命じました。
「世弟(セジェ)は本当に弁明しないのか?言え!この場で罪を認めるならば、余は命だけは助けてやろう!」
景宗(キョンジョン)は怒っていました。
「私は、逆心を抱いたことも、反乱を企んだこともございません!ゆえに罪を認めることができないのです。殿下。」
延礽君(ヨニングン)は答えました。
「そうならばやむを得ぬ。余が自ら罪を問う。裁判長よ初めよ!世がここで罪人どもと世弟(セジェ)に尋問する。」
景宗(キョンジョン)は言いました。
「おそれながら殿下。私めミン・ジノン。尋問の前にひとつ申し上げてもよいですか。おそれながら私は本日行われる尋問は受け入れられません。世弟(セジェ)は、なんの疑いもないからです。私はこの事実を以前から存じておりました殿下。」
ミン・ジノンは発言しました。
ウィ・ビョンジュは動揺しました。
ミン・ジノンは延礽君(ヨニングン)を見つめました。
感想
韓国ドラマ「ヘチ」14話の感想です。今回はすごく面白かったです。立派なサスペンス時代劇でした!密豊君(ミルプングン)の企みを、タルムンが突き止めて延礽君(ヨニングン)に明かしました。延礽君(ヨニングン)も密豊君(ミルプングン)の仕業であることはわかっていたようです。パク・ムンスは何も知らなかったようですが、ウィ・ビョンジュがハン・ジョンソクを殺した可能性を突き止めました。
今回は熱血漢の戦いとなっていたのでヨジの出番はなかったようですね。
一番面白かったのが延礽君(ヨニングン)とミン・ジノンの会話です。一対一で政敵同士が腹を割って話し合う場面は、前々回あたりで趙泰耉(チョ・テグ)と閔鎭遠(ミン・ジノン)の会話がありました。
今回は若き延礽君(ヨニングン)がベテランの政治家ミン・ジノンと政治について話し、ミン・ジノンが延礽君(ヨニングン)を「話のわかる男だ」と認めました。
政治は政敵をやっつけることではないとミン・ジノンも考えていましたが現実にあるのは血で血を洗う残酷な日々でした。いつしかミン・ジノンもこの茶番劇に心を閉ざしていたことがわかります。
今回は大人の話が出て来てドラマの格が上がったように思います。
チョホンもチャドンもすべてわかったかのような大人の演出でしたね。
(今回は政治(チョンチ)と政事(チョンサ)、劇中でもそう言っていたので二つの使い分けをしました。誤りではないと思います。)
続きが楽しみです。
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