医心伝心(名不虚伝, 명불허전)2話
目次
あらすじ
チェ・ヨンギョンは患者のオ・ハラが消えたと聞いて病室に駆け込みました。若い医師とお手伝いの女が部屋にいました。ヨンギョンはお母さんと思っていた女性が「もうすぐ奥様がお見えになるのに」と不安そうに言ったのを聞いて、彼女が家政婦(シッター)であることがわかりました。そこにまだ40歳前後の派手な服を来た夫人が部屋に入ってくるなりキツイ態度で「どういうことなの?」とヨンギョンを責め始めました。
「一体どうして手術の前の日なのに患者がいなくなったのよ!それでも医者なの?こんなことになるなら・・・今すぐ捜しなさい。見つけられなかったら医者でいられなくしてやる!」
オ・ハラのお母さん(キム・ヘウン演)はヨンギョンの頬を力いっぱい叩きました。
ヨンギョンと若くてイケメンの研修医キム・ミンジェは黙って病室を出て行きました。
「あの子は数日前から入院していてお母さんは理事長の奥様のご友人で・・・。」
研修医のキム・ミンジェ(ソンジェ演)はヨンギョンに申し訳なさそうに説明しました。
「オ・ハラはいつからいなくなったのよ?」
ヨンギョンは言いました。
「それは30分くらい前からです・・・。」
ミンジェは答えました。
「なぜ今頃?心臓病の患者なのよ?」
「もちろんわかってます。歩く時限爆弾みたいなものです。例えは悪いですが・・・。」
そこに別の医者、カン・マンス(イ・ジェギュン演)が現れ「かくれんぼの手がかりが来た」と言いました。
ヨンギョンがスマホに届いた動画を見ると、そこには自分がクラブで踊っている様子が映っていました。カン・マンスはこの前オ・ハラがクラブにいたことをヨンギョンに教えました。すると、オ・ハラからヨンギョンのスマホにメッセージが届き、クラブで踊っていた時と同じ服で来るように指示がありました。
朝鮮時代。
「教えて。教えてくださいよ。」
鍼医の許任(ホ・イム)は水中に沈みながら弟子入りを切望した子供時代のことを思い出していました。
「これ(鍼)がそんなにめずらしい(신기, シンギ)か?」
賤民のおじさんはまだ子どものホ・イムに言いました。
「はい。不思議です。」
「研ぐ角度に気を付けろ。鍼と同じで自分の心も念入りに磨くのだ。医員(イウォン)は鍼と心を一つにせねばならぬ。医員(イウォン)が邪な心を抱けば鍼もそれに気づく。」
「・・・・・・!」
矢が刺さったまま水中に沈んでいたホ・イムは目を開けると浮かび上がって水を吐き出しました。
現代。
「まだ生きてる。五臓六腑(ごぞうろっぷ)も無事だ。」
ホ・イムは浅い川(清渓川)から起き上がると自分の体を確かめました。
「大丈夫かい?」
男の声がホ・イムの耳に届きました。
「大丈夫か?」
声がする方向にホ・イムが振り返るとそこには黒い皮膚の男と金髪の女が不思議そうにホ・イムを橋の上から覗き込んでいました。
ホ・イムは見たこともない姿の人間を見て尻餅をつきました。
「救急車を呼びましょうか?」
ホ・イムは男の声には耳にもくれず、辺りを見回しました。そこには髪も結わず短く伸ばした女、髪を短く切った男、見たこともない服を着た人々、そして木造ではない高い建物・・・を見てホ・イムは仰天しました。
「何だあの者たちは?ここはどこだ?ここはどこなのだ?」
ホ・イムは再び川から立ち上がると茫然と立ち尽くしました。辺りは騒がしく、車のクラクションなど聞いたこともない雑音であふれていました。ホ・イムは川から上がって橋の名前を目にしました。橋には毛廛橋(모정교, モジョンギョウ)と書かれていました。それはホ・イムが兵士に追い詰められて転落した橋と同じ名前でした。
夜の街。
「まさに驚天動地(きょうてんどうち)の世の中だ。一体ここはどこなのだ?王宮から橋まで走って来た。毛廛橋から落ちたならそこから恵民署(ヘーミンソ)までは5里も無い。」
ホ・イムは階段に腰掛けるとため息をつきました。そして再び橋に行くと「恵民署址」という石碑を見て衝撃を受けました。ホ・イムは石碑の「恵民署、廃止」という言葉を見て通りがかった人の声から「2017年」という言葉を聞いて頭を抱えました。
ホ・イムは通りでチェ・ヨンギョンとぶつかりました。
「おじさん。もしかしてこの子を見ませんでした?中学二年生の女性です。クラブの店員ですか?ありがとうございます。」
ヨンギョンはホ・イムにスマホに映し出されたオ・ハラの写真を見せました。ホ・イムがぼーっとしていたのでヨンギョンは行ってしまいました。ホ・イムはクラブにヨンギョンが入っていくところを見ていました。すると、突然男女のカップルの男性が倒れて女性が泣き叫び始めました。
クラブの中。
ヨンギョンはオ・ハラを捜しました。
「ソニル。この子見なかった?」
ヨンギョンはバーテンダーに尋ねました。ソニルは首を横に振りました。
クラブの前。
「誰なの?」
「医員(イウォン)です。この人を診てみます。」
許任(ホ・イム)は男の脈診をはじめました。
「脈が大きい。肺実症だ。肺が空気に押されて息が荒いので鍼を打つ。」
ホ・イムは女に言いました。女は茫然としていました。ホ・イムは筒から鍼を取り出しました。
チェ・ヨンギョンが人込みをかき分けると、そこにホ・イムが鍼を打とうとしていました。
「あなた正気なの?どいて。」
ヨンギョンはホ・イムの腕を掴むと倒れている男の様子を見ました。
「私は胸部外科医のチェ・ヨンギョンです。お連れの方ですか?」
ヨンギョンは女に尋ねました。
「はい。彼は私の友達です。」
女は答えました。
「状況を確認します。」
ヨンギョンは女に診察の許可を求めました。
「はい。オッパが元気に踊っていたのに突然倒れたんです。」
女は言いました。
ヨンギョンは聴診器を男の胸に当てました。
「救急車を呼んでください。緊張性気胸のようです。」
ヨンギョンは言いました。
「これはどういうことなの?」
女は言いました。
「胸腔に空気がたまり肺と心臓を圧迫しています。今すぐ空気を抜く必要があります。」
ヨンギョンは言うと鞄の中から手袋を取り出し鋏で道具を切りました。ホ・イムはヨンギョンの言葉と見たこともない道具に目を奪われました。ヨンギョンは男の脇を消毒して体にメスを入れチューブを肺に刺しました。すると肺から空気が抜ける音がして男は息をつきました。
「(まことに驚くべき女人(にょにん)だ。この医術は一体何なのだ?)」
ホ・イムはヨンギョンの業に見とれていました。
「いったん処置は終わりました。救急車が来たら病院へ行ってください。」
ヨンギョンは女に言いました。
ホ・イムが音に振り返ると救急車が現れました。ホ・イムは尻餅をついて驚きました。
ヨンギョンは救急隊員にシンへ病院に患者を運ぶよう指示しました。男と女は救急車に乗せられて行きました。
ホ・イムはオ・ハラを捜しに行こうとするヨンギョンに何者か尋ねました。
「そなた何者だ?」
「私はシンヘ病院の胸部外科医です。」
「妓女(キニョ、妓生の女)ではなく医女(イニョ)なのか?」
「私は医師です。だから急いでいるので・・・。」
「女人(にょにん)でも医者になれるのか?あの荷車のような物に病者を乗せたのは?」
ホ・イムは色々尋ねようとしました。
チェ・ヨンギョンはホ・イムの足を蹴ってミンジェに電話をして患者を受け入れる指示を出しました。
「待たれよ。もし。しばし待たれよ。尋ねたいことがある。」
ホ・イムはヨンギョンに付いていこうとしましたが、自転車に行く手を阻まれました。ホ・イムは車に驚きながら道を横断しようとしていると、バスに轢かれそうになりました。
ヨンギョンはその様子を目撃して過去のトラウマを思い出して意識を失いました。
「お前さん(イボ)。しっかりせぬか。」
ホ・イムはヨンギョンの診察を始めました。
「気性は荒いのに気が弱いとは・・・。この脈は、一体なぜ?」
ホ・イムは膝にヨンギョンを乗せると鍼を顔に打とうとしました。
「どうする気だ。」
「何をしている。」
「あの格好は何だ?」
「怪しくない?」
人が集まってきてホ・イムを見て騒ぎ始めました。すると先ほどの救急車が駆け付け隊員が「お連れの方ですか?」とホ・イムに尋ねました。ホ・イムはそうだと答えると救急車に乗せてもらえることを思い出し「そうです」と答えました。
ホ・イムは生まれてはじめて救急車に乗りました。救急車がハンドルを切るたびにホ・イムは壁に転がり目を回しました。
病院。
「オエッ。」
ホ・イムは救急車から地面に転がり降りて吐きました。
「先輩!先輩!あんなに強い人なのに。どこか悪いところはありませんか?」
キム・ミンジェが駆け付けチェ・ヨンギョンに声を掛けました。
「気を失っただけだ。私が治療すれば目を覚ますことができるのだがこの女性にまた叱られそうでやめておいた。ウェッ。」
ホ・イムはチェ・ヨンギョンを運んでいる隊員とキム・ミンジェに説明を終えると再び吐きました。
「お連れの方も来てください。」
隊員は朝鮮の医官の服を着たままのホ・イムに言いました。
「え?連れの人?」
キム・ミンジェはヨンギョンに彼氏がいたことを意外に思いました。
「私は乗り物に弱いのだ。病院とやらに行く道がこれほど険しいとは。オエッ。まさか病者をかような所まで運ぶとは。」
ホ・イムは呟き上を見上げると高いビルには「シンヘ病院」と書かれていました。
病院の中。
「外は暑かったのにここはなぜか涼しい風が吹いておる。病院?」
ホ・イムは物珍しそうに病院の廊下を見回し「救急センター」という文字を診たり、天井から吹いてくる冷風に手をかざして喜びました。
救急治療室。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェとカン・マンスが見守る中看護師から処置を受けました。カン・マンスはとうとうヨンギョンにもおかしなコスプレ趣味の彼氏がデキたのかとホ・イムを見て笑いました。
ホ・イムは医師が治療している場面を見学していました。見たこともない医療道具に目を丸くして驚いていました。
「どなた・・・?」
キム・ミンジェは恐る恐るホ・イムに尋ねました。
「私はあの女性の・・・連れだ。」
ホ・イムは眠っているヨンギョンを指して答えました。
「あなたとヨンギョン先輩はどんな関係です?
ミンジェはホ・イムに質問しました。
「本当にヨンギョン先生の男彼(ナムチン)ですか?」
看護師の女はホ・イムに言いました。
「(ナムチン(男親)ならば親しい男か?あるいは男嚫(ナムチン)で親切な男か?とにかく・・・)そうだ。私はあの女性のナムチンだ。」
ホ・イムは答える前に考えました。
キム・ミンジェと看護婦は彼氏と聞いて驚きました。
しばらくしてチェ・ヨンギョンは目覚めました。後輩のキム・ミンジェはヨンギョンの胸に聴診器を当てて運ばれた経緯を説明しました。ヨンギョンは飛び起きると気胸の患者はどうしたのかとミンジェに尋ねました。ミンジェはヨンギョンの身体を心配しつつも「先輩の処置が適切だったので今は病室いいます」と答えました。ヨンギョンは次にオ・ハラについて質問しました。するとミンジェはオ・ハラを「先輩をこんな目に遭わせるなんてけしからん子だ」とヨンギョンをベッドに寝かしつけました。
「先輩の彼氏ですが、消えました。さっきまでいたんだけど。驚きましたよ。先輩の男を名乗った人がいて・・・命の恩人ですか?とにかく先輩の彼氏(ナムチン)と言うんです。」
ミンジェが言うと、ヨンギョンは起き上がり靴を履いて立ち上がりました。
病院の廊下。
ホ・イムは治療する女医や看護師たちを見て尻もちをつきました。
「自らの意思で医女(イニョ、看護婦)にも医員(イウォン、医師)にもなれとは・・・。」
オ・ハラの病室。
チェ・ヨンギョンはミンジェからオ・ハラがずっと屋上にいたと報告を聞いて彼女の様子を見に行きました。オ・ハラはスマホで遊んでいました。
「今回は大目に見るけどまたやったら・・・。」
ヨンギョンはオ・ハラのイヤホンを外して言いました。
「殺すのね。早く死ねて嬉しいわ。出てって。おばさんの顔は見たくない。」
オ・ハラはヨンギョンに言いました。
「心配しないで。死なないわよ。おばさんじゃなくて先生よ。あなたが私の患者でいるうちはどんな手を使ってでもあなたを救うのが私の任務よ。だから、私があなたを生かす。夜8時以降は水も飲まないで。早く寝てね。また明日。」
ヨンギョンは言うと部屋から出て行きました。
「ムカつく。クソ女。」
オ・ハラは呟きました。
病院の廊下。
看護師の女性たちはチェ・ヨンギョンに変な彼氏がいると噂をして笑っていました。
病院の廊下。
「私は何をしているのだ。」
ホ・イムは国王の治療の際に手が震えて捕らえられたことを思い出しました。
朝鮮時代の回想シーン。
ホ・ジュン(許浚)とユ・チャンソンら医官らはホ・イムを見下ろしていました。
「ネイノン。貴様はやはり王様に逆心を抱いて暗殺を企んでいたのだろう!」
ユ・チャンソンはホ・イムに言いました。
「逆心だなんてとんでもございません。なぜかできなかったのです。もう一度、もう一度機会を!」
ホ・イムは土下座して頼みました。
「ほほう。貴様が何をしたかまだ分からぬのか!者ども!ただちにこやつを捕らえよ!」
ユ・チャンソンは兵士に命じました。兵士はホ・イムを連行して行きました。
ホ・ジュン(許浚)は意味深な表情でホ・イムを見ていました。
現代の病院。
ホ・イムは鍼を手に突き刺し夢ではないことを確かめました。
「この私、ホ・イムが10年目にして・・・なのにお前がいなければ私は殿下(チョーナー)の医官になれたのだ。こんな奴に惑わされるとは。こやつめ。顔も見たくない。」
ホ・イムは鍼に話しかけると鍼を投げ捨てました。
チェ・ヨンギョンの自宅。
ヨンギョンは自室で手術の動画を見ながら彼氏のことが気がかりでした。
「はぁ。死なずに生き延びたが400年後の朝鮮に来るとは。初めて見る医術に女人(にょにん)も医員(イウォン)になれる驚天動地の世の中だ。一体どうすればよいのだ。お前さん、官奴婢なのか?賤民か?」
ホ・イムは病院の椅子に寝転んでいると、掃除のおばさんが現れ付近の床を拭き始めました。
「何のこと?私は正社員よ。」
おばさんはホ・イムに言いました。
「ならばここの医員(イウォン)、いや、医師を名乗る者たちの身分は何だ?」
ホ・イムは言いました。
「医師といえば賢くて偉い人よ。だからみんなが先生、先生と呼んでるわ。」
「ならば稼ぎは?」
「もちろんいいわ。ガッポリ稼げる。」
「ならば鍼を打つ医師は?」
「そこをどきなさい。私は忙しいのよ。」
おばさんは掃除に集中していました。
「まだお前を捨てるには早い。もう少し世の中の様子を見てみようではないか。おかしな真似はするなよ。矢が二本刺さったはずだが・・・。まあいいか。」
ホ・イムは稼げると聞いて希望を抱き、鍼を拾いました。
朝鮮時代の日中の王宮。
憎いホ・イムが川に落ちて消えたという話をユ・ジノは兵士から聞きました。ユ・ジノは王様の御前で手が震えていたホ・イムの話を聞いて愉快になりました。兵士はホ・ジュン(許浚)の罷免を求める上疏(じょうそ、上奏)が相次いでいるとユ・ジノに言いました。ユ・ジノはいい気味だ、胸のつかえが降りたと笑いました。
牢屋。
ホ・ジュン(許浚)は投獄されていました。そこに武官が現れホ・ジュンに命令を伺いました。この武官こそがホ・ジュンの命令でホ・イムに矢を放った黒装束の武人でした。
「よくやった。」
ホ・ジュンは若い武官に言いました。
「ならば令監(よんがむ)はどうなさいますか?」
「すべてはあの者に懸かっておる。あの者が死ぬか、私が死ぬか、待とうではないか。」
ホ・ジュンは意味深なことを言いました。
恵民署。
人々はホ・イムの治療を求めに集まっていましたがそこにはホ・イムがいませんでした。そこに内禁衛(ネグミ)の武官と兵士が現れホ・イムがいないか恵民署の中を捜索しました。マッケは乱暴に投げ出されたホ・イムの鍼筒を拾って嘆きました。
朝の病院。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェと一緒にベッドで寝ている彼氏のホ・イムを見に行き何者か話し合いました。ミンジェは鍼の先生と思い、ヨンギョンは客引きかと推測しました。
「起こすな。ホ医員(イウォン)は疲れてる。」
看護師がホ・イムの髪をカツラかどうか引っ張るとホ・イムは寝言を言ってまた眠りました。
「ホ医員(イウォン)。やっぱりホ・ジュンのコスプレだ。」
ミンジェは言いました。
「マッケや。夢を見たがなぜか気持ちが乱れた。夢である女人(にょにん)に会ったがかように美しい人は初めて見た。お前にも見せたかった。」
「その女人(にょにん)は、私?」
「そのようなはずがない。」
ホ・イムは寝言で返すとヨンギョンの口角が下がりました。
「は!夢ではない。ああ大丈夫か?突然いなくなったから心配したぞ。行き先を言うべきであろう。私はそなたの身が心配で夜も眠れなかったのだぞ。大丈夫か?」
ホ・イムは突然起き上がるとチェ・ヨンギョンに言いました。
「はっ?」
チェ・ヨンギョンは腹を立ててカーテンを閉めました。
病院のロビー。
ホ・イムはヨンギョンの後に続いていました。
「髪を何とかして。」
ヨンギョンはホ・イムに言いました。
「ああ。すまぬ。人の髪は結わえて天に向けるべきだ。寝ている間に風邪を通せば陽気が満ちる経絡が開く。人々の髪を見て驚いた。親から授かった髪を切るとは儒教の掟はどこへ行った。これでよいか?」
ホ・イムは髷(まげ)を結んで頭のハチマキ(網巾, 망건, マンゴン)を締めました。
「連れ、彼氏、なぜ嘘ついたの?」
チェ・ヨンギョンはご機嫌のホ・イムに言いました。
「ここの医師は稼ぎがよいそうだな。ならば・・・。」
「お礼が欲しいのね?」
「そう聞こえたか?はっはっは。当座のカネは必要だが普段は困っておらぬ。ここに来たのが急だったゆえに手持ちが無いのだ。」
「交通費も無い?そう。いくら欲しいの?」
チェ・ヨンギョンは赤い財布を出しました。
「ここの物価は知らぬが百万両ほど・・・。」
「百万ウォン?」
「多すぎるゆえ五十両でも・・・。」
「どこに勤めてるの?クラブはポポ?それともローズ?アテナ?」
「五十両・・・。」
「客引きさん。どこに勤めているかと聞いてるの。」
「私がどこに勤めているかといえば・・・。へ(恵)。」
「ヘラ?鍾路(チョンノ)のヘラ?はっ。遠くから来たわね。」
「遠くから来たがヘラでは・・・。」
「勤め先には連絡した?」
「できるわけ・・・。」
「ここまで来たら犯罪よ。ストーカーで通報するわ。」
ヨンギョンが言うと、ホ・イムは意味も分からず頷きました。
「お。ミンジェ。来て。」
「一体誰と話しているのだ?」
ホ・イムはヨンギョンのスマホを見て不思議そうに言いました。
「昨日助けてくれたので大目に見ます。つきまとうなら通報しますよ。わかりましたか?」
「ぐ~。あ。ここで飯はいくらだ?五両か?」
ホ・イムはグーグー言う腹を手で隠しました。
病院の食堂。
「食事代は払いますので昨夜のことは帳消しに。」
チェ・ヨンギョンはホ・イムを食堂に連れて行きました。
「チャラ?それはよい。お前さん、どこへ行くのだ。」
ホ・イムが言うもヨンギョンは食堂にホ・イムを置き去りにしていきました。
オ・ハラの病室。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェと共にストレッチャーを運んで来ましたが病室にオ・ハラがいませんでした。家政婦のおばさんはうたた寝をしていました。
病院の食堂。
ホ・イムは朝鮮時代と比べて豪華な食事を前によだれを垂らしていました。
「アイゴ。マッケの望みは。肉をおかずに白い飯を食べることだったな。はぁ。はぁ。」
ホ・イムは肉とご飯を一緒に食べました。
向かいの席にオ・ハラが座っていました。
「何だ。なぜ見てる。代金は払ったぞ。ピッ。」
ホ・イムはオ・ハラに言いました。
「・・・・・・。」
「一緒に、お前も一緒に食べるがよい。」
ホ・イムはオ・ハラにフォークを渡しました。オ・ハラの表情が緩みました。
オ・ハラはヨンギョンに写真を送りました。ヨンギョンはすぐに食堂に駆け付けるとホ・イムとオ・ハラがフォークを皿の肉に突き立てて戦っていました。
「食べてはならぬ。」
ホ・イムはオ・ハラと肉を奪い合っていました。
「何してるの?オ・ハラ。」
チェ・ヨンギョンは肉を食べようとするオ・ハラの手を掴みました。
「おなかいっぱい。おじさんサンキュ。」
オ・ハラは肉を一切れ口に入れると笑顔で去りました。
チェ・ヨンギョンはホ・イムを軽蔑するとオ・ハラを追いかけました。
病院の庭。
「何するのよ。」
チェ・ヨンギョンは追いかけて来たホ・イムに言いました。
「怒っているようだが、私が何かマズイことをしたか?」
ホ・イムは言いました。
「知りたいの?」
「もちろん知りたいさ。」
「手術を控えた患者にあなたが食事をさせたからよ!」
「何を言っているのだ。」
「今日すぐに手術しないと容態が悪化するかも!食べ終わったならすぐ帰って。今度見かけたら本当に通報するから。」
チェ・ヨンギョンは怒って行ってしまいました。
回想シーン。
勢いよく食べようとするオ・ハラをホ・イムは制止しようとしていました。ホ・イムはオ・ハラの手首を掴んだ瞬間、脈から心臓の状態を把握し、フォークを肉に突きたてました。
「待たれよ。おい。あの娘は肉を食べてはならぬゆえ私はなるべく食べさせぬようにしたのだ。心臓を患っておる。」
ホ・イムはチェ・ヨンギョンに釈明しました。
「嘘言わないで。」
ヨンギョンは言いました。
「手術が何かは知らぬが、私が空腹の子に食べさせたことが罪になるのか?どんな罰を受けるのだ?百叩きか?流刑か打ち首か?」
「はっ・・・。」
「待て。待たれよ。そんなに怒らないでくれ。どこかで少し話をしよう。そなたに・・・。」
「流刑、打ち首?何言ってるの?」
チェ・ヨンギョンはホ・イムを無視して行きました。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェとスマホで手術の連絡を取り合いました。そこに急病の患者がストレッチャーで運ばれてきました。患者は外傷を負って血だらけでした。チェ・ヨンギョンは過去を思い出して気分が悪くなり吐き気をもよおしました。その様子をホ・イムはしっかり見てました。
「一体どうして手術の前の日なのに患者がいなくなったのよ!それでも医者なの?こんなことになるなら・・・今すぐ捜しなさい。見つけられなかったら医者でいられなくしてやる!」
オ・ハラのお母さん(キム・ヘウン演)はヨンギョンの頬を力いっぱい叩きました。
ヨンギョンと若くてイケメンの研修医キム・ミンジェは黙って病室を出て行きました。
「あの子は数日前から入院していてお母さんは理事長の奥様のご友人で・・・。」
研修医のキム・ミンジェ(ソンジェ演)はヨンギョンに申し訳なさそうに説明しました。
「オ・ハラはいつからいなくなったのよ?」
ヨンギョンは言いました。
「それは30分くらい前からです・・・。」
ミンジェは答えました。
「なぜ今頃?心臓病の患者なのよ?」
「もちろんわかってます。歩く時限爆弾みたいなものです。例えは悪いですが・・・。」
そこに別の医者、カン・マンス(イ・ジェギュン演)が現れ「かくれんぼの手がかりが来た」と言いました。
ヨンギョンがスマホに届いた動画を見ると、そこには自分がクラブで踊っている様子が映っていました。カン・マンスはこの前オ・ハラがクラブにいたことをヨンギョンに教えました。すると、オ・ハラからヨンギョンのスマホにメッセージが届き、クラブで踊っていた時と同じ服で来るように指示がありました。
朝鮮時代。
「教えて。教えてくださいよ。」
鍼医の許任(ホ・イム)は水中に沈みながら弟子入りを切望した子供時代のことを思い出していました。
「これ(鍼)がそんなにめずらしい(신기, シンギ)か?」
賤民のおじさんはまだ子どものホ・イムに言いました。
「はい。不思議です。」
「研ぐ角度に気を付けろ。鍼と同じで自分の心も念入りに磨くのだ。医員(イウォン)は鍼と心を一つにせねばならぬ。医員(イウォン)が邪な心を抱けば鍼もそれに気づく。」
「・・・・・・!」
矢が刺さったまま水中に沈んでいたホ・イムは目を開けると浮かび上がって水を吐き出しました。
「まだ生きてる。五臓六腑(ごぞうろっぷ)も無事だ。」
ホ・イムは浅い川(清渓川)から起き上がると自分の体を確かめました。
「大丈夫かい?」
男の声がホ・イムの耳に届きました。
「大丈夫か?」
声がする方向にホ・イムが振り返るとそこには黒い皮膚の男と金髪の女が不思議そうにホ・イムを橋の上から覗き込んでいました。
ホ・イムは見たこともない姿の人間を見て尻餅をつきました。
「救急車を呼びましょうか?」
ホ・イムは男の声には耳にもくれず、辺りを見回しました。そこには髪も結わず短く伸ばした女、髪を短く切った男、見たこともない服を着た人々、そして木造ではない高い建物・・・を見てホ・イムは仰天しました。
「何だあの者たちは?ここはどこだ?ここはどこなのだ?」
ホ・イムは再び川から立ち上がると茫然と立ち尽くしました。辺りは騒がしく、車のクラクションなど聞いたこともない雑音であふれていました。ホ・イムは川から上がって橋の名前を目にしました。橋には毛廛橋(모정교, モジョンギョウ)と書かれていました。それはホ・イムが兵士に追い詰められて転落した橋と同じ名前でした。
夜の街。
「まさに驚天動地(きょうてんどうち)の世の中だ。一体ここはどこなのだ?王宮から橋まで走って来た。毛廛橋から落ちたならそこから恵民署(ヘーミンソ)までは5里も無い。」
ホ・イムは階段に腰掛けるとため息をつきました。そして再び橋に行くと「恵民署址」という石碑を見て衝撃を受けました。ホ・イムは石碑の「恵民署、廃止」という言葉を見て通りがかった人の声から「2017年」という言葉を聞いて頭を抱えました。
ホ・イムは通りでチェ・ヨンギョンとぶつかりました。
「おじさん。もしかしてこの子を見ませんでした?中学二年生の女性です。クラブの店員ですか?ありがとうございます。」
ヨンギョンはホ・イムにスマホに映し出されたオ・ハラの写真を見せました。ホ・イムがぼーっとしていたのでヨンギョンは行ってしまいました。ホ・イムはクラブにヨンギョンが入っていくところを見ていました。すると、突然男女のカップルの男性が倒れて女性が泣き叫び始めました。
クラブの中。
ヨンギョンはオ・ハラを捜しました。
「ソニル。この子見なかった?」
ヨンギョンはバーテンダーに尋ねました。ソニルは首を横に振りました。
クラブの前。
「誰なの?」
「医員(イウォン)です。この人を診てみます。」
許任(ホ・イム)は男の脈診をはじめました。
「脈が大きい。肺実症だ。肺が空気に押されて息が荒いので鍼を打つ。」
ホ・イムは女に言いました。女は茫然としていました。ホ・イムは筒から鍼を取り出しました。
チェ・ヨンギョンが人込みをかき分けると、そこにホ・イムが鍼を打とうとしていました。
「あなた正気なの?どいて。」
ヨンギョンはホ・イムの腕を掴むと倒れている男の様子を見ました。
「私は胸部外科医のチェ・ヨンギョンです。お連れの方ですか?」
ヨンギョンは女に尋ねました。
「はい。彼は私の友達です。」
女は答えました。
「状況を確認します。」
ヨンギョンは女に診察の許可を求めました。
「はい。オッパが元気に踊っていたのに突然倒れたんです。」
女は言いました。
ヨンギョンは聴診器を男の胸に当てました。
「救急車を呼んでください。緊張性気胸のようです。」
ヨンギョンは言いました。
「これはどういうことなの?」
女は言いました。
「胸腔に空気がたまり肺と心臓を圧迫しています。今すぐ空気を抜く必要があります。」
ヨンギョンは言うと鞄の中から手袋を取り出し鋏で道具を切りました。ホ・イムはヨンギョンの言葉と見たこともない道具に目を奪われました。ヨンギョンは男の脇を消毒して体にメスを入れチューブを肺に刺しました。すると肺から空気が抜ける音がして男は息をつきました。
「(まことに驚くべき女人(にょにん)だ。この医術は一体何なのだ?)」
ホ・イムはヨンギョンの業に見とれていました。
「いったん処置は終わりました。救急車が来たら病院へ行ってください。」
ヨンギョンは女に言いました。
ホ・イムが音に振り返ると救急車が現れました。ホ・イムは尻餅をついて驚きました。
ヨンギョンは救急隊員にシンへ病院に患者を運ぶよう指示しました。男と女は救急車に乗せられて行きました。
ホ・イムはオ・ハラを捜しに行こうとするヨンギョンに何者か尋ねました。
「そなた何者だ?」
「私はシンヘ病院の胸部外科医です。」
「妓女(キニョ、妓生の女)ではなく医女(イニョ)なのか?」
「私は医師です。だから急いでいるので・・・。」
「女人(にょにん)でも医者になれるのか?あの荷車のような物に病者を乗せたのは?」
ホ・イムは色々尋ねようとしました。
チェ・ヨンギョンはホ・イムの足を蹴ってミンジェに電話をして患者を受け入れる指示を出しました。
「待たれよ。もし。しばし待たれよ。尋ねたいことがある。」
ホ・イムはヨンギョンに付いていこうとしましたが、自転車に行く手を阻まれました。ホ・イムは車に驚きながら道を横断しようとしていると、バスに轢かれそうになりました。
ヨンギョンはその様子を目撃して過去のトラウマを思い出して意識を失いました。
「お前さん(イボ)。しっかりせぬか。」
ホ・イムはヨンギョンの診察を始めました。
「気性は荒いのに気が弱いとは・・・。この脈は、一体なぜ?」
ホ・イムは膝にヨンギョンを乗せると鍼を顔に打とうとしました。
「どうする気だ。」
「何をしている。」
「あの格好は何だ?」
「怪しくない?」
人が集まってきてホ・イムを見て騒ぎ始めました。すると先ほどの救急車が駆け付け隊員が「お連れの方ですか?」とホ・イムに尋ねました。ホ・イムはそうだと答えると救急車に乗せてもらえることを思い出し「そうです」と答えました。
ホ・イムは生まれてはじめて救急車に乗りました。救急車がハンドルを切るたびにホ・イムは壁に転がり目を回しました。
「オエッ。」
ホ・イムは救急車から地面に転がり降りて吐きました。
「先輩!先輩!あんなに強い人なのに。どこか悪いところはありませんか?」
キム・ミンジェが駆け付けチェ・ヨンギョンに声を掛けました。
「気を失っただけだ。私が治療すれば目を覚ますことができるのだがこの女性にまた叱られそうでやめておいた。ウェッ。」
ホ・イムはチェ・ヨンギョンを運んでいる隊員とキム・ミンジェに説明を終えると再び吐きました。
「お連れの方も来てください。」
隊員は朝鮮の医官の服を着たままのホ・イムに言いました。
「え?連れの人?」
キム・ミンジェはヨンギョンに彼氏がいたことを意外に思いました。
「私は乗り物に弱いのだ。病院とやらに行く道がこれほど険しいとは。オエッ。まさか病者をかような所まで運ぶとは。」
ホ・イムは呟き上を見上げると高いビルには「シンヘ病院」と書かれていました。
病院の中。
「外は暑かったのにここはなぜか涼しい風が吹いておる。病院?」
ホ・イムは物珍しそうに病院の廊下を見回し「救急センター」という文字を診たり、天井から吹いてくる冷風に手をかざして喜びました。
救急治療室。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェとカン・マンスが見守る中看護師から処置を受けました。カン・マンスはとうとうヨンギョンにもおかしなコスプレ趣味の彼氏がデキたのかとホ・イムを見て笑いました。
ホ・イムは医師が治療している場面を見学していました。見たこともない医療道具に目を丸くして驚いていました。
「どなた・・・?」
キム・ミンジェは恐る恐るホ・イムに尋ねました。
「私はあの女性の・・・連れだ。」
ホ・イムは眠っているヨンギョンを指して答えました。
「あなたとヨンギョン先輩はどんな関係です?
ミンジェはホ・イムに質問しました。
「本当にヨンギョン先生の男彼(ナムチン)ですか?」
看護師の女はホ・イムに言いました。
「(ナムチン(男親)ならば親しい男か?あるいは男嚫(ナムチン)で親切な男か?とにかく・・・)そうだ。私はあの女性のナムチンだ。」
ホ・イムは答える前に考えました。
キム・ミンジェと看護婦は彼氏と聞いて驚きました。
しばらくしてチェ・ヨンギョンは目覚めました。後輩のキム・ミンジェはヨンギョンの胸に聴診器を当てて運ばれた経緯を説明しました。ヨンギョンは飛び起きると気胸の患者はどうしたのかとミンジェに尋ねました。ミンジェはヨンギョンの身体を心配しつつも「先輩の処置が適切だったので今は病室いいます」と答えました。ヨンギョンは次にオ・ハラについて質問しました。するとミンジェはオ・ハラを「先輩をこんな目に遭わせるなんてけしからん子だ」とヨンギョンをベッドに寝かしつけました。
「先輩の彼氏ですが、消えました。さっきまでいたんだけど。驚きましたよ。先輩の男を名乗った人がいて・・・命の恩人ですか?とにかく先輩の彼氏(ナムチン)と言うんです。」
ミンジェが言うと、ヨンギョンは起き上がり靴を履いて立ち上がりました。
病院の廊下。
ホ・イムは治療する女医や看護師たちを見て尻もちをつきました。
「自らの意思で医女(イニョ、看護婦)にも医員(イウォン、医師)にもなれとは・・・。」
オ・ハラの病室。
チェ・ヨンギョンはミンジェからオ・ハラがずっと屋上にいたと報告を聞いて彼女の様子を見に行きました。オ・ハラはスマホで遊んでいました。
「今回は大目に見るけどまたやったら・・・。」
ヨンギョンはオ・ハラのイヤホンを外して言いました。
「殺すのね。早く死ねて嬉しいわ。出てって。おばさんの顔は見たくない。」
オ・ハラはヨンギョンに言いました。
「心配しないで。死なないわよ。おばさんじゃなくて先生よ。あなたが私の患者でいるうちはどんな手を使ってでもあなたを救うのが私の任務よ。だから、私があなたを生かす。夜8時以降は水も飲まないで。早く寝てね。また明日。」
ヨンギョンは言うと部屋から出て行きました。
「ムカつく。クソ女。」
オ・ハラは呟きました。
病院の廊下。
看護師の女性たちはチェ・ヨンギョンに変な彼氏がいると噂をして笑っていました。
病院の廊下。
「私は何をしているのだ。」
ホ・イムは国王の治療の際に手が震えて捕らえられたことを思い出しました。
朝鮮時代の回想シーン。
ホ・ジュン(許浚)とユ・チャンソンら医官らはホ・イムを見下ろしていました。
「ネイノン。貴様はやはり王様に逆心を抱いて暗殺を企んでいたのだろう!」
ユ・チャンソンはホ・イムに言いました。
「逆心だなんてとんでもございません。なぜかできなかったのです。もう一度、もう一度機会を!」
ホ・イムは土下座して頼みました。
「ほほう。貴様が何をしたかまだ分からぬのか!者ども!ただちにこやつを捕らえよ!」
ユ・チャンソンは兵士に命じました。兵士はホ・イムを連行して行きました。
ホ・ジュン(許浚)は意味深な表情でホ・イムを見ていました。
現代の病院。
ホ・イムは鍼を手に突き刺し夢ではないことを確かめました。
「この私、ホ・イムが10年目にして・・・なのにお前がいなければ私は殿下(チョーナー)の医官になれたのだ。こんな奴に惑わされるとは。こやつめ。顔も見たくない。」
ホ・イムは鍼に話しかけると鍼を投げ捨てました。
チェ・ヨンギョンの自宅。
ヨンギョンは自室で手術の動画を見ながら彼氏のことが気がかりでした。
「はぁ。死なずに生き延びたが400年後の朝鮮に来るとは。初めて見る医術に女人(にょにん)も医員(イウォン)になれる驚天動地の世の中だ。一体どうすればよいのだ。お前さん、官奴婢なのか?賤民か?」
ホ・イムは病院の椅子に寝転んでいると、掃除のおばさんが現れ付近の床を拭き始めました。
「何のこと?私は正社員よ。」
おばさんはホ・イムに言いました。
「ならばここの医員(イウォン)、いや、医師を名乗る者たちの身分は何だ?」
ホ・イムは言いました。
「医師といえば賢くて偉い人よ。だからみんなが先生、先生と呼んでるわ。」
「ならば稼ぎは?」
「もちろんいいわ。ガッポリ稼げる。」
「ならば鍼を打つ医師は?」
「そこをどきなさい。私は忙しいのよ。」
おばさんは掃除に集中していました。
「まだお前を捨てるには早い。もう少し世の中の様子を見てみようではないか。おかしな真似はするなよ。矢が二本刺さったはずだが・・・。まあいいか。」
ホ・イムは稼げると聞いて希望を抱き、鍼を拾いました。
朝鮮時代の日中の王宮。
憎いホ・イムが川に落ちて消えたという話をユ・ジノは兵士から聞きました。ユ・ジノは王様の御前で手が震えていたホ・イムの話を聞いて愉快になりました。兵士はホ・ジュン(許浚)の罷免を求める上疏(じょうそ、上奏)が相次いでいるとユ・ジノに言いました。ユ・ジノはいい気味だ、胸のつかえが降りたと笑いました。
牢屋。
ホ・ジュン(許浚)は投獄されていました。そこに武官が現れホ・ジュンに命令を伺いました。この武官こそがホ・ジュンの命令でホ・イムに矢を放った黒装束の武人でした。
「よくやった。」
ホ・ジュンは若い武官に言いました。
「ならば令監(よんがむ)はどうなさいますか?」
「すべてはあの者に懸かっておる。あの者が死ぬか、私が死ぬか、待とうではないか。」
ホ・ジュンは意味深なことを言いました。
恵民署。
人々はホ・イムの治療を求めに集まっていましたがそこにはホ・イムがいませんでした。そこに内禁衛(ネグミ)の武官と兵士が現れホ・イムがいないか恵民署の中を捜索しました。マッケは乱暴に投げ出されたホ・イムの鍼筒を拾って嘆きました。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェと一緒にベッドで寝ている彼氏のホ・イムを見に行き何者か話し合いました。ミンジェは鍼の先生と思い、ヨンギョンは客引きかと推測しました。
「起こすな。ホ医員(イウォン)は疲れてる。」
看護師がホ・イムの髪をカツラかどうか引っ張るとホ・イムは寝言を言ってまた眠りました。
「ホ医員(イウォン)。やっぱりホ・ジュンのコスプレだ。」
ミンジェは言いました。
「マッケや。夢を見たがなぜか気持ちが乱れた。夢である女人(にょにん)に会ったがかように美しい人は初めて見た。お前にも見せたかった。」
「その女人(にょにん)は、私?」
「そのようなはずがない。」
ホ・イムは寝言で返すとヨンギョンの口角が下がりました。
「は!夢ではない。ああ大丈夫か?突然いなくなったから心配したぞ。行き先を言うべきであろう。私はそなたの身が心配で夜も眠れなかったのだぞ。大丈夫か?」
ホ・イムは突然起き上がるとチェ・ヨンギョンに言いました。
「はっ?」
チェ・ヨンギョンは腹を立ててカーテンを閉めました。
病院のロビー。
ホ・イムはヨンギョンの後に続いていました。
「髪を何とかして。」
ヨンギョンはホ・イムに言いました。
「ああ。すまぬ。人の髪は結わえて天に向けるべきだ。寝ている間に風邪を通せば陽気が満ちる経絡が開く。人々の髪を見て驚いた。親から授かった髪を切るとは儒教の掟はどこへ行った。これでよいか?」
ホ・イムは髷(まげ)を結んで頭のハチマキ(網巾, 망건, マンゴン)を締めました。
「連れ、彼氏、なぜ嘘ついたの?」
チェ・ヨンギョンはご機嫌のホ・イムに言いました。
「ここの医師は稼ぎがよいそうだな。ならば・・・。」
「お礼が欲しいのね?」
「そう聞こえたか?はっはっは。当座のカネは必要だが普段は困っておらぬ。ここに来たのが急だったゆえに手持ちが無いのだ。」
「交通費も無い?そう。いくら欲しいの?」
チェ・ヨンギョンは赤い財布を出しました。
「ここの物価は知らぬが百万両ほど・・・。」
「百万ウォン?」
「多すぎるゆえ五十両でも・・・。」
「どこに勤めてるの?クラブはポポ?それともローズ?アテナ?」
「五十両・・・。」
「客引きさん。どこに勤めているかと聞いてるの。」
「私がどこに勤めているかといえば・・・。へ(恵)。」
「ヘラ?鍾路(チョンノ)のヘラ?はっ。遠くから来たわね。」
「遠くから来たがヘラでは・・・。」
「勤め先には連絡した?」
「できるわけ・・・。」
「ここまで来たら犯罪よ。ストーカーで通報するわ。」
ヨンギョンが言うと、ホ・イムは意味も分からず頷きました。
「お。ミンジェ。来て。」
「一体誰と話しているのだ?」
ホ・イムはヨンギョンのスマホを見て不思議そうに言いました。
「昨日助けてくれたので大目に見ます。つきまとうなら通報しますよ。わかりましたか?」
「ぐ~。あ。ここで飯はいくらだ?五両か?」
ホ・イムはグーグー言う腹を手で隠しました。
病院の食堂。
「食事代は払いますので昨夜のことは帳消しに。」
チェ・ヨンギョンはホ・イムを食堂に連れて行きました。
「チャラ?それはよい。お前さん、どこへ行くのだ。」
ホ・イムが言うもヨンギョンは食堂にホ・イムを置き去りにしていきました。
オ・ハラの病室。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェと共にストレッチャーを運んで来ましたが病室にオ・ハラがいませんでした。家政婦のおばさんはうたた寝をしていました。
病院の食堂。
ホ・イムは朝鮮時代と比べて豪華な食事を前によだれを垂らしていました。
「アイゴ。マッケの望みは。肉をおかずに白い飯を食べることだったな。はぁ。はぁ。」
ホ・イムは肉とご飯を一緒に食べました。
向かいの席にオ・ハラが座っていました。
「何だ。なぜ見てる。代金は払ったぞ。ピッ。」
ホ・イムはオ・ハラに言いました。
「・・・・・・。」
「一緒に、お前も一緒に食べるがよい。」
ホ・イムはオ・ハラにフォークを渡しました。オ・ハラの表情が緩みました。
オ・ハラはヨンギョンに写真を送りました。ヨンギョンはすぐに食堂に駆け付けるとホ・イムとオ・ハラがフォークを皿の肉に突き立てて戦っていました。
「食べてはならぬ。」
ホ・イムはオ・ハラと肉を奪い合っていました。
「何してるの?オ・ハラ。」
チェ・ヨンギョンは肉を食べようとするオ・ハラの手を掴みました。
「おなかいっぱい。おじさんサンキュ。」
オ・ハラは肉を一切れ口に入れると笑顔で去りました。
チェ・ヨンギョンはホ・イムを軽蔑するとオ・ハラを追いかけました。
病院の庭。
「何するのよ。」
チェ・ヨンギョンは追いかけて来たホ・イムに言いました。
「怒っているようだが、私が何かマズイことをしたか?」
ホ・イムは言いました。
「知りたいの?」
「もちろん知りたいさ。」
「手術を控えた患者にあなたが食事をさせたからよ!」
「何を言っているのだ。」
「今日すぐに手術しないと容態が悪化するかも!食べ終わったならすぐ帰って。今度見かけたら本当に通報するから。」
チェ・ヨンギョンは怒って行ってしまいました。
回想シーン。
勢いよく食べようとするオ・ハラをホ・イムは制止しようとしていました。ホ・イムはオ・ハラの手首を掴んだ瞬間、脈から心臓の状態を把握し、フォークを肉に突きたてました。
「待たれよ。おい。あの娘は肉を食べてはならぬゆえ私はなるべく食べさせぬようにしたのだ。心臓を患っておる。」
ホ・イムはチェ・ヨンギョンに釈明しました。
「嘘言わないで。」
ヨンギョンは言いました。
「手術が何かは知らぬが、私が空腹の子に食べさせたことが罪になるのか?どんな罰を受けるのだ?百叩きか?流刑か打ち首か?」
「はっ・・・。」
「待て。待たれよ。そんなに怒らないでくれ。どこかで少し話をしよう。そなたに・・・。」
「流刑、打ち首?何言ってるの?」
チェ・ヨンギョンはホ・イムを無視して行きました。
チェ・ヨンギョンはキム・ミンジェとスマホで手術の連絡を取り合いました。そこに急病の患者がストレッチャーで運ばれてきました。患者は外傷を負って血だらけでした。チェ・ヨンギョンは過去を思い出して気分が悪くなり吐き気をもよおしました。その様子をホ・イムはしっかり見てました。
感想
医心伝心2話の感想です。何と許任(ホ・イム)が現代にタイムスリップ!医者が朝鮮時代にタイムスリップしたドラマはドクターJinで見ましたが、その逆は初めてです。魔法の鍼筒がタイムスリップアイテムとなっていて、ホ・ジュン(許浚)は何か知ってるようですね。話はアホらしくて面白いです。話が単純なのでそんなに細かい感想はないのですが。
キム・ナムギルはコミカルな役も見せてくれるのですね。素晴らしい役者さんです。一人芝居をするドラマって結構珍しいと思いますが、チャールズ・チャップリンを連想してしまいます。もしかしたらキム・ナムギルはチャップリンを参考にしているのかもしれません。キム・ナムギルが表現していることは、見た目はバカらしいのですが、朝鮮から見た現代韓国の良さもまたひとつの表現であるように思います。脈診という技術がどれほど当たっているのかは分かりませんけど、当時の病名も現代と繋がっているので理解が早いという設定は面白いと思いました。
そしてチェ・ヨンギョンはどうやらPTSDを患っているようですね。そんなにバッタリ倒れる病気は無いと思うのですが、交通事故を連想するような場面があると激しく緊張して具合が悪くなってしまうという症状なんですね。さすがにそれは鍼では治せないのでは?それとも深刻な病を抱えているのでしょうか。
オ・ハラという生意気な小娘、重病のあの子が物語に大きく関係してそうです。
あまり解説するようなところがありませんが、続きを見ていこうと思います。
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