花郎(ファラン)
目次
終盤21話のあらすじ
ソヌ(ムミョン)は百済(南扶余)に行った時に臆病者のジディにかわり王と名乗り出てアロと新羅の民の命を救いました。真興王(チヌンワン)と結婚する予定のスンミョン(貞明)王女はソヌを見るとときめきを感じはじめソヌに接吻してしまいアロを憎みます。
アロは只召太后(チソテフ)により源花(ウォナ)に任命されキム・アンジの家から王宮に誘拐されました。只召太后(チソテフ)はアロを源花(ウォナ)として花郎(ファラン)の掌握に利用した後に殺して廃するつもりでした。
ムミョン(無名、犬鳥)はフィギョン公(只召の兄)に自分が父親でムミョンは聖骨(ソンゴル)だと告げられます。
只召太后(チソテフ)は親友の源花を殺そうとしましたが、女は身ごもっており只召(チソ)に懇願しました。
ナムモ王女の墓に参拝後アロは源花に任命され花郎を率いることになりました。風月主(プウォルチュ)のキム・ウィファは太后(テフ)に解任されました。
アロを守りたいムミョン(ソヌ)はキム・ウィファに会うと王になれば大事なものを守れるか尋ねます。
タンセとハンソンの父ソク・ヒョンジェはパク・ヨンシルの家を訪ね話があると言いました。パク・ヨンシルは王の首を取って来たら婚姻を結び姻戚になる話を聞いてやると言いました。ソク・ヒョンジェは四つん這いになり馬の台となりました。ヨンシルはソク・ヒョンジェの背中を踏みつけ馬に乗り外出しました。その様子を側室の息子のタンセが見ていました。ソク・ヒョンジェはタンセに花郎(ファラン)の中にいる王を殺すよう命じます。
仙門(ソンムン)という花郎が暮らす宿舎でムミョン(ソヌ)は実父のフィギョン公に王になれと言われたことについて考えていました。ハンソンは初めて祖父のソク・ヒョンジェに逆らうため兄のタンセを苦しめるなと手紙を書く決意をしたとソヌ(ムミョン)に打ち明けました。ハンソンは勇気あるソヌ(ムミョン)を尊敬して見習い自分も道を切り開きたいと言いました。
「共に歩いてやる。」
「本当か?約束だぞ!いえ~。本当だよな。」
「ああ。」
「約束だよ?」
ハンソンは無邪気に喜びました。
真興王(チヌンワン)の護衛のパオは、アロが就任式の前にナムモ王女の墓に参ることを真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)に伝えました。
「チュンジョン王に殺された王女か。」
「チュンジョン王は濡れ衣を着せられ存命との噂もあります。その折に実行しますか?」
「ナムモ王女の墓への参拝後にアロを連れ去れ。西域であれ遼の国であれ母上の手が届かぬところへ。それが私にできる最善の策だ。」
パク・パンリュは塀越しに恋人のスヨンと仲直りして口づけをしました。パンリュは宿舎の部屋に戻るとスヨンから貰った香袋を愛おしそうに眺めていました。その様子を見たキム・スホは苦しむだけだとパンリュの襟首を掴んで妹と別れるように求めました。
ハンソンは兄のソク・タンセ宛ての小包を花郎(ファラン)徒から受け取りました。ハンソンは祖父から兄に宛てた箱の中身を知りたがりました。何も知らないハンソンは通りがかったソヌ(ムミョン)を慕って駆け寄りました。
タンセは祖父からヨンシル公と手を結べなかったらハンソンとともに自害するつもりだと打ち明けられていました。
「この件がうまくいかなかったら次はハンソンが下馬石(ハマソク)となる。ソク氏の嫡子にそのようなことはさせられぬ。」
「私を脅すのですか?」
「これをお前の刀に塗れ。かすっただけで死ぬ。お前が王を殺せなければ、この毒は私とハンソンが飲む。」
タンセは箱の中の毒薬を手に取りました。
ソヌ(ムミョン)は一人剣術の稽古をしていました。ソヌ(ムミョン)は只召太后(チソテフ)がアロを人質に取っていずれ殺すだろうというフィギョン公の言葉を思い出していました。その時タンセが現れてソヌ(ムミョン)に手合わせを願い出ました。タンセは自分の剣に毒を塗っていました。
「すみません。」
タンセは謝りました。
「なぜそんなにかしこまるんだ?気楽にしろと何度も言っただろ。」
ソヌ(ムミョン)が言うとタンセはムミョンに剣をぶつけました。
「よけてください。剣に触れてはなりません。これが私にできる唯一の気遣いです。」
「勝算のある手合わせなのに何を深刻になってる。」
「隙があれば必ず私を殺してください。私もそうします。」
タンセはいつになく本気でした。
ソヌ(ムミョン)はタンセの様子がいつもと違うことに気が付きました。
「や~!」
タンセはソヌ(ムミョン)の衣を斬りました。
「一体なぜだ!」
ソヌ(ムミョン)は叫びました。
「話の続きは、あの世でしましょう。」
タンセはソヌ(ムミョン)に襲いかかりました。
ハンソンは二人が戦っているところに出くわすと、タンセへの手紙に「必殺(必ず殺せ)」という祖父の命令の意味に気が付きました。
「ダメだ!」
ハンソンは素手でタンセの刀を受け止めました。
「何の真似だ。」
「兄上こそなぜだ!」
「離せ!」
「離したら、ソヌさんを殺すだろ?」
「ハンソン!」
「おじいさまがくれたこの薬をなぜここに塗った。兄上。なぜだ。兄上はいい人なのに。」
ハンソンは崩れ落ちました。
「ダメだ。」
「一体何をした!」
ソヌ(ムミョン)はタンセに怒鳴りました。
「毒。毒です。猛毒。」
タンセは言いました。
ソヌはハンソンを抱きかかえると医務室に走りました。
タンセは座り込んで涙を流しました。
ソヌ(ムミョン)は急いで医務室に向かいました。
「アロさんが・・・なおしてくれるさ・・・・・・。ソヌ・・・・共に・・・歩んでくれるんだよね?兄上を・・・・・・恨まないで・・・・。」
「わかった。」
ソヌ(ムミョン)が答えるとハンソンは事切れました。
ソヌ(ムミョン)はハンソンを抱きかかえたまま講堂に入りました。
キム・ウィファと花郎徒(ファランド)たちが二人を取り囲みました。
「何があった。どうしてだよ!」
同室のヨウルは泣きました。
ソヌ(ムミョン)も涙を流しました。
ソヌ(ムミョン)も涙を流しました。
風月主(プウォルチュ)のキム・ウィファはハンソンの脈がないことを確かめました。
その夜、タンセは倉庫で酒を隠れて飲み干し割れた壺の破片を握り、自害を考えていました。
22話
「死にたいだろうが、死ぬな。俺にもわかる。その気持ちが。読め。爺さん宛てだが、お前に宛てた気がする。それから・・・気になるだろうが、お前は今でも俺の郎徒だ。」
ソヌ(ムミョン)はタンセに言うとタンセは涙をこぼしました。ソヌ(ムミョン)はハンソンが祖父に宛てた書簡を渡しました。タンセは泣きながらハンソンの手紙を読みました。
「おじい様。ハンソンです。仙門で元気にしています。初めは嫌々おじい様に従いここに来ましたが、今は楽しく過ごしています。道なき所も道になると大好きな友から学びました。一人、二人と地を踏み固め共に歩んでいけば険しい場所も道になります。文をしたためたのは、今後は私自身の罰は自分で受けるとお伝えするためです。兄上に罪はありません。身分など関係なく兄上は私の兄です。この世で一番信頼できる私の味方です。おじい様。私は大人になる術を学んでいます。誰にも頼らず自分の判断に責任をもって生きる術を。おじい様。共に歩んでくれる友にも出会いました。私は自由に生きます。家門や権力に囚われず、花郎として生きます。」
タンセは手紙を抱きしめ声をあげて泣きました。
「涙を流し、思う存分泣け。まだ神国には、花郎を揺さぶり意のままにしようとする連中がいるようだ。だが、二度と、二度と友を失うな。他人が築いた秩序を、そのまま受け入れてはならぬ。お前たちは駒ではなく、この世の誰よりも自由な花郎だ。花郎であることを、決して忘れるな。」
キム・ウィファはハンソンが入った棺を前に、花郎徒(ファランド)たちに言いました。ハンソンの友人たちはすすり泣きました。
ハンソンの祖父ソク・ヒョンジェは孫の位牌を見て泣きました。
只召太后(チソテフ)は花郎徒(ファランド)の死を知り皆がソヌが王だと信じるだろうと禁衛将(クミジャン)に言いました。禁衛将(クミジャン)のヒョンチュは民がソヌが王になることを期待すれば取返しのつかないことになるだろうと言いました。太后(テフ)の侍女、モヨンが角干(ヨンシル)の来訪を告げました。
角干パク・ヨンシルは只召太后(チソテフ)に退位を要求しました。角干の配下の大臣たちも部屋に入って来てソヌ(ムミョン)への譲位を迫りました。
街ではフィギョン公がマンマン村から戻って来たキム・アンジに会いました。キム・アンジは薬草がなく毒草まで使った自分が殺人者のようであり、村は戦場のようだったのに都は穏やかだと暗い表情を浮かべました。フィギョン公はアロが源花(ウォナ)に任命されたとキム・アンジに教えました。
「毒草を使ったと?それがまさに今の神国だ。疫病でも薬剤が手に入らぬマンマン村と変わらぬ。どうするつもりだ?天から薬剤が降るのを待つか?毒草を使うか?あの者を、私の息子を王にしなければならぬ。」
フィギョン公はキム・アンジに言いました。
夜。
王宮に軟禁されているアロは侍女とサイコロを振って仲良く遊んでいました。そこにスンミョン王女が現れました。
「すぐに打ち解けるとは。すばらしい才能だな。」
「耐え抜く方法を探しているだけです。」
「自分の兄の身を案じぬのか?」
「どういうことですか?私の兄になにかあったのですか?」
「陛下と誤解され襲われた。どうして安否を聞かぬのだ?」
「私の兄は無事なはずです。」
「どうしてそう思う。」
「信じてます。絶対に大丈夫だと。」
「兄を危機に追いやったときもそのように己を慰めたのか?」
「私を挑発して足をすくおうとしても無駄です。」
「何故だ。」
「生きます。それが兄を救う道だからです。」
「明日、ナムモ王女の墓へ行く。」
スンミョン王女は悔しそうに目を潤ませるとアロに言いました。
キム・アンジは只召太后(チソテフ)に会いました。太后(テフ)はなんとしてもこの座を守ると言いました。キム・アンジは自分の息子を王にすると言いました。
「賤民を母に持つ者が王になれると?」
「誤解なさってます。あの子は神国の王になる資格を持ってます。チュンジョン。あの子がチュンジョンとフィギョン公の息子で聖骨(ソンゴル)です。」
キム・アンジが言うと只召太后(チソテフ)は愕然として尻もちをつきました。
夜が明けました。
アロとスンミョン王女は真っ赤な服に着替えてナムモ王女の墓に向かいました。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はキム・ウィファに会うとパク・ヨンシルは気に入らぬと言いました。キム・ウィファは臥薪嘗胆といい成功を期して苦難に耐えよと言いました。真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は花郎徒(ファランド)が傷つくことは望まず守りたいと言いました。
「どうやって守るのですか?敵と手を結ぶ度量もなく王の身代わりになった友も守れないのに、この仙門をどうやって守るのですか?」
ソヌ(ムミョン)は馬でどこかに向かいました。その様子を禁衛将(クミジャン)が確かめました。
アロは源花(ウォナ)ナムモ王女の肖像画に拝礼しました。
只召太后(チソテフ)は禁衛将(クミジャン)に密命を下していました。
「ナムモ王女とチュンジョンは我々のようだな。片親のみ貴族の娘。怖いようだな。」
スンミョン王女はアロに言いました。
「私が源花(ウォナ)になったのは陛下のお顔を見たからですか?王をかたったソヌの妹だからですか?」
アロはスンミョン王女に言いました。
「己を買いかぶりすぎだ。そなたが何者かは関係ない。利用できるからだ。お前が生きれば兄が生きると?むしろお前は兄の足を引っ張っている。お前がそばにいればソヌの身が危うい!広き世に出たくても、出られぬのだ。」
スンミョン王女はアロに言いました。
アロは危機に瀕した自分のために命を何度でも投げ打つソヌ(ムミョン)を想いました。
只召太后(チソテフ)はソヌ(ムミョン)に譲位して退位を迫る大臣たちの話を聴きながら体調を崩していました。扉が開き、真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)が王の身なりとなり部屋に入って来ました。
「私が神国の王、真興(チヌン)だ。」
王は自らの名を言いました。大臣たちは真興王(チヌンワン)に頭を下げました。
ソヌ(ムミョン)はアロに会いました。禁衛将(クミジャン)と兵は茂みの中からムミョンを殺す機会をうかがっていました。
「これは、夢なの?なぜここがわかったの?」
「俺がお前を、捜せないと思うか?俺は、離さない。」
ソヌ(ムミョン)はアロに歩み寄ると、アロはソヌをかばい矢を受けました。
「アロ。だめだ。あ~!」
ソヌ(ムミョン)はその場で泣き叫びました。矢が何本もソヌ(ムミョン)目掛けて飛んできました。
「早くお逃げください。生きなければ!」
真興王(チヌンワン)の護衛のパオが本来の身なりで現れ矢を斬り落としました。
ソヌ(ムミョン)はアロを抱えて逃げました。
禁衛将(クミジャン)のヒョンチュは駆け寄りました。
「お前がなぜ?」
ヒョンチュはパオに尋ねました。
「私?私は守りに来た。」
パオは言いました。
「誰の命令だ。」
「誰の命令だと?私に敬語を使え。十年先輩だ。」
「どけ。太后(テフ)様のご命令で王を僭称した輩を討つ!」
「誰が王だか!偽の王に仕え混乱しているな。二人を守れ。これが王命だ。これが王命だ!王に逆らうのか?覚悟はあるか?」
パオはヒョンチュの行く手を阻みました。
「お前から殺す。うっ・・・!あ!」
ヒョンチュがパオを斬ろうとすると、スンミョン王女はヒョンチュに矢を放ちました。
「禁衛将(クミジャン)は王命に従え。」
スンミョン王女はヒョンチュに命じました。
夜になりました。
キム・アンジは半ば放心しながら娘の身を案じソヌ(ムミョン)について考えていました。
ソヌ(ムミョン)がアロを抱えて家に戻って来ました。
「助けてください。」
ソヌ(ムミョン)はキム・アンジに乞いました。
キム・アンジはアロを部屋に運ばせるとソヌ(ムミョン)に部屋から出るように怒鳴りました。
「出ていけ。私はこの子の父であり医員だ!」
治療が終わり、キム・アンジは庭に出るとソヌ(ムミョン)の肩を強く握りました。
「治療は終わった。命をとりとめた。何があった。」
「太后(テフ)が俺を殺しに・・・矢が当たった。俺がいる限りアロはまた危険な目に遭う。太后(テフ)はアロを利用すると言った。」
「どうするつもりだ。」
ソヌ(ムミョン)は眠っているアロの頬に触れました。
「こんな姿は、お前に似合わない。早く目を覚ませ。俺みたいな奴は、生きてる価値がないと思ってた。お前と出会い、生まれたことに感謝した。俺の生きる理由がお前で、よかった。すまない。それから、愛してる。」
ソヌ(ムミョン)は涙を流すとアロに口づけをしました。ソヌ(ムミョン)は愛用していたサイコロをアロの横に置いて去りました。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は王座に座っていました。
「お前の失態はなかったことにしてやろう。静かに暮らせ。今までと同じように。私がお前を守る。離宮を用意した。そこに実を隠せ。大臣たちには私が説得する。」
只召太后(チソテフ)は真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はに言いました。
「失態ではない。」
彡麦宗(サムメクチョン)は母に言いました。
「失態ではないだと?」
「未熟な王に何ができる。力を持たぬ王がどうなると思う。傀儡だ。大臣たちに踊らされすべてを失う。王座も奪われ命も奪われるだろう!その浅はかな考えで!聖骨(ソンゴル)を途絶えさせるつもりか!」
「前から私は王です。今日はそれを示したまでのことです。」
「いいや。王ではない。私の陰に隠れていた。」
「はい。私は母上の陰に隠れていました。母上のおかげで生き延びました。その陰に守られ安堵した日もありましたが不幸でした。己の足で立つために、表に立ってやり遂げるために来たのです。私が夢見る神国をこの手で造るために。」
「航海するぞ。必ず。」
「その後悔とて私の責任です。私が、やり遂げます。」
フィギョン公は食事をしていると、息子のソヌ(ムミョン)が現れました。
「あなたが父なら、母、つまり、俺にも、母上が・・・そんな人がいるのですか?」
「チュンジョン。神国の源花(ウォナ)だった。たいそう美しく民に慕われた徳の高い人だった。源花(ウォナ)は神国の脅威だった。聖骨(ソンゴル)の子を身ごもったのなら、なおさらだ。ある日お前はあの人のお腹にいた。」
「俺は俺なのに、賤民の次は、半分になり、今は聖骨(ソンゴル)だと?今更どうしろと・・・父上。」
「苦労続きだったことは知ってる。だがお前に謝るつもりはない。名もなきまま王座とは無縁のまま自由に生きて欲しかった。それがお前を守る最善の策だった。ずっとお前を見守っていた。準備は整った。お前を王にする。お前は神国の誰よりも強く、誰よりも民の心を知っている。混乱する神国を変える新たな王。それは、お前だ。」
王宮。
只召太后(チソテフ)は侍女モヨンが持ってきた毒入りの茶を飲むと、焦燥しきった様子で伊飡(イチャン)のキム・スプ(スホの父)に命令を下しました。
パク・ヨンシルの家。
パク・ヨンシルは太后(テフ)の侍女モヨンを部屋に呼ぶと太后(テフ)の様子を尋ねました。モヨンは十年間毒薬を飲み続け得たおかげで症状が出ていると報告しました。
「顔なき王は世間でのたれ死に、只召(チソ)が持病で死ねば、私が王になったとしても誰も文句は言わぬであろう。彡麦宗(サムメクチョン)を殺す方法はまだ残されている。」
パク・ヨンシルは言いました。
キム・スプは息子のスホを部屋に呼びました。
「陛下が戻られた。お前が、すべきことがある。」
日中の仙門。
顔なき王が代わったとの噂が流れました。
「ジディが王だと?」
「私が真興(チヌン)と言ったそうだ。」
「じゃあケセ(犬鳥)は?」
ヨウルはもっとジディに親切にすればよかったと後悔しました。
スホは太后(テフ)が捨てた扇を眺めていました。
キム・ウィファは松の木の盆栽の手入れをしていると副弟(プジェ)のミジンブ(ミシルの父)が慌てて部屋に入って来ました。
「私は罷免された。はははは!」
キム・ウィファは盆栽を抱えて去りました。
ミジンブは風月主が解任されたのでしばらく詩経は休みだと花郎徒(ファランド)に説明しました。
只召太后(チソテフ)は娘のスンミョン王女に命令に逆らいソヌ(ムミョン)を助けたことについて叱りました。
「ですが王命でした。」
「王命?王命!我が命こそ王命だ。私が彡麦宗(サムメクチョン)を王にした!私の造った国だ!私が!」
只召太后(チソテフ)は妄言を吐いて倒れました。
「今日は大臣らと初めての会議では?行きませんと。」
「いや。答えよ。」
「実はアロ様が禁衛将(クミジャン)の矢に当たりました。命はあります。申し訳ありません陛下。」
多易書(タイソ)。
キム・ウィファは木馬にまたがり乱心していました。ピジュギは誰でも一度はクビになるとウィファを慰めました。ピジュギもまた巷で流行の歌をウィファに教えました。そこにソヌ(ムミョン)が現れました。
王宮。
真興王(チヌンワン)が大臣らと政治を行う部屋に行くとパク・ヨンシルだけが待っていました。パク・ヨンシルは大臣らを皆帰らせたと言い勝手に王座に座りました。
「こんなに楽だったとは。民との暮らしはどうでしたか?民に向けた正義や信義、哀れみなどを悟りましたか?俗世に慣れた王は決断力が鈍ります。私は、王を交代させようと思います。」
パク・ヨンシルは王座に寝そべりました。
多易書(タイソ)。
ソヌ(ムミョン)はキム・ウィファに自分は王の器として民の先より歩けるか尋ねました。キム・ウィファは行く手を阻む物がなければ何をしてもよいのかと返しました。
王宮の廊下。
「名分がなければ、名分で倒せばいい。」
パク・ヨンシルは息子に言いました。
誰もいない部屋。
「私は弱く、なすすべもなく、何の策もない。」
彡麦宗(サムメクチョン)は打ちひしがれていました。
そこに叔明(スンミョン)王女が現れました。
「誰も入れるなと言ったはずだ!」
「自分で、王になりましたね。」
「そなたには、そう見えるか?」
「いいえ。」
「そうだ。その通りだ。私には力がない。」
「私だけではありません。皆がそれを知っています。お母さまも。お母さまが婚礼を急いでおられます。」
「婚礼?私とそなたの?」
「私も陛下との結婚が嫌でなりません!」
「聖骨(ソンゴル)を産み王権を守るためのおぞましい結婚を・・・!」
「私は、ソヌが欲しいです。兄上がお母さまを説得してください。兄上なら何とかすべきではありませんか?」
「・・・・・・。」
多易書(タイソ)。
「お前がよき王になれると聞いたか?そうかもしれん。道を行く三人のうち一人は今の王よりましかな。名分があれば謀反にならぬ。わかるな?名分なければ争い、争いが起これば民が疲弊するだろう。お前が望む王は、そのような王か?」
キム・ウィファはソヌに言いました。
「いや。俺が望む王は守るべき民と守るべき人を守れる王です。弱く、優しく、傷つけられ見放された人々を守れる王。教えてください。もし俺に名分があるなら、その人たちを守れるなら、なろうと思います。王に。」
パク・ヨンシルはフィギョン公の家に行きました。
フィギョン公はウイスキーを優雅に楽しんでいました。
「座ってください。私の息子を王にしたいですか?」
キム・アンジはアロに薬を飲ませていました。アロは眠ったまま目を覚ましませんでした。キム・アンジはソヌ(ムミョン)が聖骨(ソンゴル)とフィギョン公から聞かされたことを思いだしました。そして只召(チソ)により深手を負わされ家に来たチュンジョンの世話をしたことを思いだしました。
「運命。もう二度とお前を傷つけぬ。二度とあの人に、お前(アロ)を狙わせぬ。約束する。」
キム・スプの息子、スホは只召太后(チソテフ)に会いました。
「伊飡(イチャン、キム・スプ)め。余計なことを。」
只召太后(チソテフ)はスホを冷たくあしらおうとすると倒れそうになりました。スホは太后(テフ)の体を支えました。
「歩けるとわかっていますが今は花郎としてではなく護衛として参りました。」
「子どもに私が守れるのか?」
「私は子どもではなく大人です。陛下に胸が高鳴るのですから。禁衛将(クミジャン)が治るまで私がお守りします。」
多易書(タイソ)。
キム・ウィファはソヌの言葉を思い出していました。
「王を差し置いて王になるだと?」
夜のキム・アンジの家。
アロは目覚めると、ソヌ(ムミョン)の行方を尋ねました。
フィギョン公の家。
「まだ決断できぬようだな。お前が決めるのではない。神国に選ばれるのだ。マンムンと暮らしたマンマン村を忘れるな。今のお前の決断は、最も価値ある選択となる。ある方が会いたいとおっしゃっている。」
フィギョン公はソヌ(ムミョン)に言いました。
書庫。
「風月主をやめたそうですね。」
ソヌ(ムミョン)はウィファの後ろ姿と思いパク・ヨンシルに話しかけました。
「驚いたか?私が嫌いであろう。」
パク・ヨンシルは振り返りました。
「あんたが思うより、もっとあんたが嫌いだ。」
「これだから王と間違われるのだ。」
「なぜここに俺を呼び出した。」
「王に据えるためです。おや。フィギョン公から聞いていないのですか?」
「俺があんたの力を借りるとでも?」
「そうです。」
「なぜだ。」
「権力とはそういうものです。やるかやられるか。やられてばかりの人生だったはずです。ゆえに王になるのでは?選ぶべきでしょう。やるかやられるか。」
「いや。選択するのは俺だ。喉から手が出るほど王座を欲しがっているのは俺よりあんただ。権力はやるかやられるかだ。」
キム・アンジの家。
「どこにいるのよ。そばにいてよ。」
アロは庭でつぶやきました。
「まだ生きていたか。」
スンミョン王女と侍女が現れました。
「何の御用ですか?」
「私が怖いか?」
「立場を・・・立場を変えて考えてください。また死にかけました。」
「お前の兄は私が助けた。お前は兄を危機に晒し、私がお前の兄を助けた。」
「私に死ねと?」
「そうだ。お前の兄は尊い存在だ。私なら守れる!」
「申し上げたとおり私は生きます。何としてでも。それが兄の願いと知っているので。だからどんな言葉で私を揺さぶっても無駄です。兄は私が守ります。大切な人を、守って見せます。」
「お前の自信は口先だけだ。だが私の力でお前の兄を守れる。たとえ何があっても!!!」
パク・ヨンシルの家。
パク・ヨンシルは側近たちと話し合っていました。
王宮。
只召太后(チソテフ)は落ち着かない様子でした。スホは太后(テフ)の傍に立っていました。そこに彡麦宗(サムメクチョン)が現れました。スホは彡麦宗(サムメクチョン)に頭を下げました。
「顔色がよくありません。」
彡麦宗(サムメクチョン)は母に言いました。
「角干に侮られるとは。そなたがまいた種だ。王室を侮辱し聖骨(ソンゴル)から権力を奪うためだ!そなたのせいだ!!!」
「やってみます。」
「何を一体どうやって?スンミョンと婚礼しろ。」
「そのような結婚はしません。」
「格の違いを見せるのだ。あやつらとは別格だと思い知らせよ。それを示すのは聖骨(ソンゴル)同士の結婚のみだ。」
「花郎で対抗します。私の花郎で奴らを掌握します。」
「花郎。その花郎がいかなく存在か知らぬとは。ソヌは、フィギョン公の息子だ。あの子も聖骨(ソンゴル)だ。そなたと王座を争う者!そなたを脅かす政敵なのだ!!!」
ソヌ(ムミョン)はピジュギからアロが目覚めたと知らされキム・アンジの家に向かいました。
アロは自分はソヌ(ムミョン)の足手まといか気にしながら兄を待っていました。
「有犯空過?誰かに攻撃されても耐えろ?」
アロはソヌ(ムミョン)のサイコロに書かれている字を見てつぶやきました。
そこにソヌ(ムミョン)が現れアロを抱きしめました。
「大丈夫か?よかった。本当によかった。痛くないか?」
「痛い。傷口が押されて痛い。」
アロが言うとソヌ(ムミョン)はアロを見つめました。
「話がある。俺が何者かわかった。なぜ名前がないのか。どこから来たのか。どこへ行くべきか。だが・・・お前のためにならないかも。」
「私は、あなたを信じてる。だから自分を信じて。あなたは私がこの世で一番信頼できる人。進むべき道も、必ず見つける人だから。どんな選択をしても、誰が何を言おうとも、私は最後まであなたの味方よ。信じる道を歩いて。それが正しい道よ。」
アロはソヌ(ムミョン)を励ましました。
ムミョンはアロを抱きしめました。
王の執務室。
パオや都で流行っている歌を真興王(チヌンワン)に報告しました。
「ソヌ(ムミョン)を捜せ。」
キム・アンジの家。
ソヌ(ムミョン)は眠っているアロを見つめました。
「俺を信じると?」
ソヌ(ムミョン)はパオに連れられて王の間に上がりました。王座には誰もいませんでした。ソヌ(ムミョン)は王座を見つめフィギョン公の言葉を思い出していました。
「王座に座りたいか?」
真興王(チヌンワン)はソヌの首に剣を突きつけました。
「お前が本当に王座の主だと思うか?心の中で、お前を何度も殺した。俺の無二の親友を殺した、許せない奴だから。だがどうしてもお前を殺せなかった。お前が王だと確信した時も、王だと信じたくなかった。」
ソヌは真興王(チヌンワン)に剣を突きつけました。
「私を殺して終わるなら、殺せ。だが私を殺せば、終わるのか?それだけでは終わらぬはず。では権力者を殺せば終わるのか?いや。結局は他の者がその座について横暴を振るう。ならばまた殺すのか?お前と共に、神国を変えたかった。身分制度により命が失われぬ世にしたかった。この狭き神国を出て三国統一の夢を描きたかった。だがここで終わるなら、斬れ。」
真興王(チヌンワン)は剣を捨てました。
「これで俺たちの貸し借りも、無くなった。」
ソヌ(ムミョン)も剣を振るって王の腕輪を斬ると剣を収めました。
「これで、終わりなのか?」
真興王(チヌンワン)の手首から血が滴りました。
「俺たちは進む道が違う。」
「ならば、次に会う時は、敵同士だな。」
パク・ヨンシルの家。
「王を交代しなければ。」
パク・ヨンシルは言いました。
「ならば真興(チヌン)を倒し、別の王を立てますか?」
ヨンシルの側近は言いました。
「いや。王座には誰も立てない。王ではなく、聖骨(ソンゴル)という名分を備える傀儡を立てる。」
ヨンシルが言うと側近たちは動揺しました。
「百済で王を名乗った、フィギョン公の息子ソヌです。」
パク・ホは言いました。
「あの者がフィギョン公の息子ですか?いくら体が弱ったとはいえ太后(テフ)がだまってません。女一人で王を守った只召(チソ)ですから。」
側近の男は言いました。
「聖骨(ソンゴル)の後継なら、名分はあるのでは?」
側近の一人は言いました。
「だから奪うのだ。そなたは財産や権力をタダで手に入れたのか?」
ヨンシルは言いました。
「民には謀反と思われます。」
パク・ホは言いました。
「民はいくら虐げられても権力に媚びておもねるものだ。恐れるな。この神国を我々の物にしようという話だ。さすればそちらの栄華も続くではないか。」
ヨンシルは言いました。
王の部屋。
「パオ。夜が明け次第源花(ウォナ)アロを連れて来い。」
真興王(チヌンワン)はパオに命じました。
翌日のパク・ヨンシルの家。
「真興(チヌン)がアンジ公の娘を王宮に呼び寄せただと?出遅れたな。ソヌを動かす手ごまを逃してしまうとは。」
ヨンシルはパク・ホに言いました。
フィギョン公がソヌを連れて部屋に現れました。
「面白い光景だ。似ている気がする。」
ヨンシルは二人を見て言いました。
「神国の主を、代えなければ。あんたの力は借りない。花郎の力で成し遂げる。」
ソヌ(ムミョン)は言いました。
「私は何をすれば?」
ヨンシルはソヌに言いました。
「大臣らとともに俺を王に推してほしい。」
「(お前がいくらあがろうと、結局神国を手にするのは私だ。神国の主は今までもこの先も決して変わらん。)」
ヨンシルは言いました。
太后(テフ)の部屋。
真興王(チヌンワン)は母に譲位を求めました。太后(テフ)はスンミョン王女と婚礼するように言いました。
「冷徹でなければ王座は守れぬ。王は、友さえも殺さねばならぬ。下手に温情を施せば国は沈み民を死なせてしまう。だが、冷徹な君主は、処分が必要な者のみ潔く殺すことができる。さらなる犠牲を出さずに済む。」
「王は、必ず誰かを殺さねばならぬのですか?」
「花郎徒(ファランド)は皆お前の味方だと思うか?花郎徒(ファランド)は皆ソヌを慕っている。命を懸けて民を救ったからだ。なのに、花郎徒(ファランド)がお前に従うとでも?」
「私の花郎にします。人を殺めずに済む手立てを考えます。」
多易書(タイソ)。
「まだ王になれずにいるようだな。」
キム・ウィファは頭を掻きながらソヌに言いました。
「はじめは道など存在しない。(私がそういったのを)覚えてますか?」
「つまり硬い土を砕き突き破って水を流すつもりか?」
「これ以上駒として生きられないので。己の秩序を築きます。」
「つまり謀反か?」
「力なき王は何も無し得ません。神国に必要なのは国を変える意志を抱く強き王です。力を貸してください。」
「私を謀反の陣頭に立たせるつもりか?」
「選択は風月主に任せます。仙門に戻り、花郎を率いてください。皆で成し遂げるためです。」
「何故私がそなたに力を貸さねばならぬと確信を?」
「同じ考えのはずです。神国の未来がかかってます。風月主。私の思いです。」
ソヌは書状をキム・ウィファに渡しました。
23話
「花郎の中の花郎はジディ様よ。王の中の王はソヌ様ね♪」
街の子どもたちが歌っていました。
ソヌ(ムミョン)は通りで歌を聴きました。
多易書(タイソ)。
ヨウルはハンソンの形見のガラスを手に取りました。ヨウルもまた町の子どもたちの歌を聴きました。
王宮。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は王の装束を身にまといました。
「どうだ?」
彡麦宗(サムメクチョン)はパオに尋ねました。
「真の王にございます。」
パオは感激しました。
「それであの者(ソヌ)は、無事か?どうした。どうしたと言っておる。」「今日は大臣らと初めての会議では?行きませんと。」
「いや。答えよ。」
「実はアロ様が禁衛将(クミジャン)の矢に当たりました。命はあります。申し訳ありません陛下。」
多易書(タイソ)。
キム・ウィファは木馬にまたがり乱心していました。ピジュギは誰でも一度はクビになるとウィファを慰めました。ピジュギもまた巷で流行の歌をウィファに教えました。そこにソヌ(ムミョン)が現れました。
王宮。
真興王(チヌンワン)が大臣らと政治を行う部屋に行くとパク・ヨンシルだけが待っていました。パク・ヨンシルは大臣らを皆帰らせたと言い勝手に王座に座りました。
「こんなに楽だったとは。民との暮らしはどうでしたか?民に向けた正義や信義、哀れみなどを悟りましたか?俗世に慣れた王は決断力が鈍ります。私は、王を交代させようと思います。」
パク・ヨンシルは王座に寝そべりました。
多易書(タイソ)。
ソヌ(ムミョン)はキム・ウィファに自分は王の器として民の先より歩けるか尋ねました。キム・ウィファは行く手を阻む物がなければ何をしてもよいのかと返しました。
王宮の廊下。
「名分がなければ、名分で倒せばいい。」
パク・ヨンシルは息子に言いました。
誰もいない部屋。
「私は弱く、なすすべもなく、何の策もない。」
彡麦宗(サムメクチョン)は打ちひしがれていました。
そこに叔明(スンミョン)王女が現れました。
「誰も入れるなと言ったはずだ!」
「自分で、王になりましたね。」
「そなたには、そう見えるか?」
「いいえ。」
「そうだ。その通りだ。私には力がない。」
「私だけではありません。皆がそれを知っています。お母さまも。お母さまが婚礼を急いでおられます。」
「婚礼?私とそなたの?」
「私も陛下との結婚が嫌でなりません!」
「聖骨(ソンゴル)を産み王権を守るためのおぞましい結婚を・・・!」
「私は、ソヌが欲しいです。兄上がお母さまを説得してください。兄上なら何とかすべきではありませんか?」
「・・・・・・。」
多易書(タイソ)。
「お前がよき王になれると聞いたか?そうかもしれん。道を行く三人のうち一人は今の王よりましかな。名分があれば謀反にならぬ。わかるな?名分なければ争い、争いが起これば民が疲弊するだろう。お前が望む王は、そのような王か?」
キム・ウィファはソヌに言いました。
「いや。俺が望む王は守るべき民と守るべき人を守れる王です。弱く、優しく、傷つけられ見放された人々を守れる王。教えてください。もし俺に名分があるなら、その人たちを守れるなら、なろうと思います。王に。」
パク・ヨンシルはフィギョン公の家に行きました。
フィギョン公はウイスキーを優雅に楽しんでいました。
「座ってください。私の息子を王にしたいですか?」
キム・アンジはアロに薬を飲ませていました。アロは眠ったまま目を覚ましませんでした。キム・アンジはソヌ(ムミョン)が聖骨(ソンゴル)とフィギョン公から聞かされたことを思いだしました。そして只召(チソ)により深手を負わされ家に来たチュンジョンの世話をしたことを思いだしました。
「運命。もう二度とお前を傷つけぬ。二度とあの人に、お前(アロ)を狙わせぬ。約束する。」
キム・スプの息子、スホは只召太后(チソテフ)に会いました。
「伊飡(イチャン、キム・スプ)め。余計なことを。」
只召太后(チソテフ)はスホを冷たくあしらおうとすると倒れそうになりました。スホは太后(テフ)の体を支えました。
「歩けるとわかっていますが今は花郎としてではなく護衛として参りました。」
「子どもに私が守れるのか?」
「私は子どもではなく大人です。陛下に胸が高鳴るのですから。禁衛将(クミジャン)が治るまで私がお守りします。」
多易書(タイソ)。
キム・ウィファはソヌの言葉を思い出していました。
「王を差し置いて王になるだと?」
夜のキム・アンジの家。
アロは目覚めると、ソヌ(ムミョン)の行方を尋ねました。
フィギョン公の家。
「まだ決断できぬようだな。お前が決めるのではない。神国に選ばれるのだ。マンムンと暮らしたマンマン村を忘れるな。今のお前の決断は、最も価値ある選択となる。ある方が会いたいとおっしゃっている。」
フィギョン公はソヌ(ムミョン)に言いました。
書庫。
「風月主をやめたそうですね。」
ソヌ(ムミョン)はウィファの後ろ姿と思いパク・ヨンシルに話しかけました。
「驚いたか?私が嫌いであろう。」
パク・ヨンシルは振り返りました。
「あんたが思うより、もっとあんたが嫌いだ。」
「これだから王と間違われるのだ。」
「なぜここに俺を呼び出した。」
「王に据えるためです。おや。フィギョン公から聞いていないのですか?」
「俺があんたの力を借りるとでも?」
「そうです。」
「なぜだ。」
「権力とはそういうものです。やるかやられるか。やられてばかりの人生だったはずです。ゆえに王になるのでは?選ぶべきでしょう。やるかやられるか。」
「いや。選択するのは俺だ。喉から手が出るほど王座を欲しがっているのは俺よりあんただ。権力はやるかやられるかだ。」
キム・アンジの家。
「どこにいるのよ。そばにいてよ。」
アロは庭でつぶやきました。
「まだ生きていたか。」
スンミョン王女と侍女が現れました。
「何の御用ですか?」
「私が怖いか?」
「立場を・・・立場を変えて考えてください。また死にかけました。」
「お前の兄は私が助けた。お前は兄を危機に晒し、私がお前の兄を助けた。」
「私に死ねと?」
「そうだ。お前の兄は尊い存在だ。私なら守れる!」
「申し上げたとおり私は生きます。何としてでも。それが兄の願いと知っているので。だからどんな言葉で私を揺さぶっても無駄です。兄は私が守ります。大切な人を、守って見せます。」
「お前の自信は口先だけだ。だが私の力でお前の兄を守れる。たとえ何があっても!!!」
パク・ヨンシルの家。
パク・ヨンシルは側近たちと話し合っていました。
王宮。
只召太后(チソテフ)は落ち着かない様子でした。スホは太后(テフ)の傍に立っていました。そこに彡麦宗(サムメクチョン)が現れました。スホは彡麦宗(サムメクチョン)に頭を下げました。
「顔色がよくありません。」
彡麦宗(サムメクチョン)は母に言いました。
「角干に侮られるとは。そなたがまいた種だ。王室を侮辱し聖骨(ソンゴル)から権力を奪うためだ!そなたのせいだ!!!」
「やってみます。」
「何を一体どうやって?スンミョンと婚礼しろ。」
「そのような結婚はしません。」
「格の違いを見せるのだ。あやつらとは別格だと思い知らせよ。それを示すのは聖骨(ソンゴル)同士の結婚のみだ。」
「花郎で対抗します。私の花郎で奴らを掌握します。」
「花郎。その花郎がいかなく存在か知らぬとは。ソヌは、フィギョン公の息子だ。あの子も聖骨(ソンゴル)だ。そなたと王座を争う者!そなたを脅かす政敵なのだ!!!」
ソヌ(ムミョン)はピジュギからアロが目覚めたと知らされキム・アンジの家に向かいました。
アロは自分はソヌ(ムミョン)の足手まといか気にしながら兄を待っていました。
「有犯空過?誰かに攻撃されても耐えろ?」
アロはソヌ(ムミョン)のサイコロに書かれている字を見てつぶやきました。
そこにソヌ(ムミョン)が現れアロを抱きしめました。
「大丈夫か?よかった。本当によかった。痛くないか?」
「痛い。傷口が押されて痛い。」
アロが言うとソヌ(ムミョン)はアロを見つめました。
「話がある。俺が何者かわかった。なぜ名前がないのか。どこから来たのか。どこへ行くべきか。だが・・・お前のためにならないかも。」
「私は、あなたを信じてる。だから自分を信じて。あなたは私がこの世で一番信頼できる人。進むべき道も、必ず見つける人だから。どんな選択をしても、誰が何を言おうとも、私は最後まであなたの味方よ。信じる道を歩いて。それが正しい道よ。」
アロはソヌ(ムミョン)を励ましました。
ムミョンはアロを抱きしめました。
王の執務室。
パオや都で流行っている歌を真興王(チヌンワン)に報告しました。
「ソヌ(ムミョン)を捜せ。」
キム・アンジの家。
ソヌ(ムミョン)は眠っているアロを見つめました。
「俺を信じると?」
ソヌ(ムミョン)はパオに連れられて王の間に上がりました。王座には誰もいませんでした。ソヌ(ムミョン)は王座を見つめフィギョン公の言葉を思い出していました。
「王座に座りたいか?」
真興王(チヌンワン)はソヌの首に剣を突きつけました。
「お前が本当に王座の主だと思うか?心の中で、お前を何度も殺した。俺の無二の親友を殺した、許せない奴だから。だがどうしてもお前を殺せなかった。お前が王だと確信した時も、王だと信じたくなかった。」
ソヌは真興王(チヌンワン)に剣を突きつけました。
「私を殺して終わるなら、殺せ。だが私を殺せば、終わるのか?それだけでは終わらぬはず。では権力者を殺せば終わるのか?いや。結局は他の者がその座について横暴を振るう。ならばまた殺すのか?お前と共に、神国を変えたかった。身分制度により命が失われぬ世にしたかった。この狭き神国を出て三国統一の夢を描きたかった。だがここで終わるなら、斬れ。」
真興王(チヌンワン)は剣を捨てました。
「これで俺たちの貸し借りも、無くなった。」
ソヌ(ムミョン)も剣を振るって王の腕輪を斬ると剣を収めました。
「これで、終わりなのか?」
真興王(チヌンワン)の手首から血が滴りました。
「俺たちは進む道が違う。」
「ならば、次に会う時は、敵同士だな。」
パク・ヨンシルの家。
「王を交代しなければ。」
パク・ヨンシルは言いました。
「ならば真興(チヌン)を倒し、別の王を立てますか?」
ヨンシルの側近は言いました。
「いや。王座には誰も立てない。王ではなく、聖骨(ソンゴル)という名分を備える傀儡を立てる。」
ヨンシルが言うと側近たちは動揺しました。
「百済で王を名乗った、フィギョン公の息子ソヌです。」
パク・ホは言いました。
「あの者がフィギョン公の息子ですか?いくら体が弱ったとはいえ太后(テフ)がだまってません。女一人で王を守った只召(チソ)ですから。」
側近の男は言いました。
「聖骨(ソンゴル)の後継なら、名分はあるのでは?」
側近の一人は言いました。
「だから奪うのだ。そなたは財産や権力をタダで手に入れたのか?」
ヨンシルは言いました。
「民には謀反と思われます。」
パク・ホは言いました。
「民はいくら虐げられても権力に媚びておもねるものだ。恐れるな。この神国を我々の物にしようという話だ。さすればそちらの栄華も続くではないか。」
ヨンシルは言いました。
王の部屋。
「パオ。夜が明け次第源花(ウォナ)アロを連れて来い。」
真興王(チヌンワン)はパオに命じました。
翌日のパク・ヨンシルの家。
「真興(チヌン)がアンジ公の娘を王宮に呼び寄せただと?出遅れたな。ソヌを動かす手ごまを逃してしまうとは。」
ヨンシルはパク・ホに言いました。
フィギョン公がソヌを連れて部屋に現れました。
「面白い光景だ。似ている気がする。」
ヨンシルは二人を見て言いました。
「神国の主を、代えなければ。あんたの力は借りない。花郎の力で成し遂げる。」
ソヌ(ムミョン)は言いました。
「私は何をすれば?」
ヨンシルはソヌに言いました。
「大臣らとともに俺を王に推してほしい。」
「(お前がいくらあがろうと、結局神国を手にするのは私だ。神国の主は今までもこの先も決して変わらん。)」
ヨンシルは言いました。
太后(テフ)の部屋。
真興王(チヌンワン)は母に譲位を求めました。太后(テフ)はスンミョン王女と婚礼するように言いました。
「冷徹でなければ王座は守れぬ。王は、友さえも殺さねばならぬ。下手に温情を施せば国は沈み民を死なせてしまう。だが、冷徹な君主は、処分が必要な者のみ潔く殺すことができる。さらなる犠牲を出さずに済む。」
「王は、必ず誰かを殺さねばならぬのですか?」
「花郎徒(ファランド)は皆お前の味方だと思うか?花郎徒(ファランド)は皆ソヌを慕っている。命を懸けて民を救ったからだ。なのに、花郎徒(ファランド)がお前に従うとでも?」
「私の花郎にします。人を殺めずに済む手立てを考えます。」
多易書(タイソ)。
「まだ王になれずにいるようだな。」
キム・ウィファは頭を掻きながらソヌに言いました。
「はじめは道など存在しない。(私がそういったのを)覚えてますか?」
「つまり硬い土を砕き突き破って水を流すつもりか?」
「これ以上駒として生きられないので。己の秩序を築きます。」
「つまり謀反か?」
「力なき王は何も無し得ません。神国に必要なのは国を変える意志を抱く強き王です。力を貸してください。」
「私を謀反の陣頭に立たせるつもりか?」
「選択は風月主に任せます。仙門に戻り、花郎を率いてください。皆で成し遂げるためです。」
「何故私がそなたに力を貸さねばならぬと確信を?」
「同じ考えのはずです。神国の未来がかかってます。風月主。私の思いです。」
ソヌは書状をキム・ウィファに渡しました。
最終回あらすじ(24話)
王宮。
侍女のモヨンは太后(テフ)の飲み物に毒を混ぜていました。
「取り告げ。」
その様子を見ていたキム・スホはモヨンに言うと太后(テフ)の部屋に入りました。
モヨンは太后(テフ)とキム・スホに茶を淹れました。
「もうよい。下がれ。」
只召太后(チソテフ)はモヨンに命じました。モヨンは部屋の外に出て行きました。
「何か混ぜています。」
太后(テフ)が茶を飲もうとした時、キム・スホは茶碗を太后(テフ)から取り上げました。
「構わぬ。」
「毒の可能性が。」
「よこすのだ。」
「殿下に危険な物を差し上げられません。」
キム・スホは茶を捨てました。
只召太后(チソテフ)は茶を注いで飲もうとすると、キム・スホは太后(テフ)から茶碗を奪い、飲み干しました。
「すぐには効かぬ毒だ。体に蓄積され、症状がでる。」
太后(テフ)はスホに言うと咳き込みました。
「そうと知りながらなぜお飲みになったのです。」
「前から知っていた。」
只召太后(チソテフ)が口を押さえた手ぬぐいに血が付いていました。
「陛下。医員を呼びます。」
「騒ぎ立てるな。以前から出ていた症状だ。」
王宮の一室。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はアロのいる部屋に入りました。王に軟禁されているアロは驚いて立ち上がりました。
「こうでもせねばそなたに会えぬとは。傷を負ったそうだが、大丈夫か?」
「大丈夫です。でもここに来なければ、もっと早く癒えたはずです。」
「どうでもよい。どうせお前はここから出られぬ。そなたは人質なのだ。お前の兄が王座を脅かさぬための。」
「これは、陛下らしくありません。」
「私は所詮母上の子だ。私がどんな者なのかこれを機に知ることができるかもしれぬ。」
仙門。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は叔明(スンミョン)王女とパオとともに仙門(ソンムン)の門前に立っていました。
「陛下。本当に仙門を掌握なさるおつもりですか?」
スンミョン王女は言いました。
「私の花郎だ。はじめから私の物だ。今やらねば手に負えなくなる。」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は言いました。
「真興陛下であらせられる。門を開けよ。」
パオは門番の男に言いました。門番は扉を開きました。
仙門の庭で花郎(ファラン)徒と郎徒が整列して王を迎えました。
「あれは誰だ?」
「ジディ?」
「身なりが変われば人も変わるのか。まるで太后(テフ)だな。冷たく、無慈悲に見える。」
ヨウルはつぶやきました。
パク・パンリュは目を丸くして驚いていました。
「花郎徒(ファランド)共。礼を尽くせ。」
副弟(プジェ)のミジンブは皆に命じました。
花郎徒(ファランド)と郎徒は傅き王に礼をしました。
「私は、花郎の君主、真興(チヌン)だ。私が知る花郎は怠惰で、軟弱だ。良家の子息に過ぎぬ。だが今後の花郎は神国の王室のもとで強き精鋭として、生まれ変わるであろう。」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は、花郎徒(ファランド)と郎徒を侮辱しました。
「そこにいる王も同じだろう!軟弱で力がないのは、そちらも変わらぬ。」
ソヌ(ムミョン)が花郎徒(ファランド)の身なりで現れました。
「ソヌよ。礼を尽くせ。ソヌよ。礼を尽くせ!」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はソヌに命じました。
ソヌ(ムミョン)は動じませんでした。
「私は三日後に王位に就く。皆王室の親衛隊として王を守る花郎として王を守る花郎として務めを果たせ!」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は言いました。
「花郎は!自由だ。花郎は自ら動く時、神国の未来を思い描ける。聞いたことがあるはず・・・では?」
ソヌ(ムミョン)は言いました。
「今私に、反旗を翻すつもりか?」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は言いました。
「王を支えるかどうかは我々が決めることだ!!!選ばれる自信が、ないのですか?」
ソヌ(ムミョン)は言いました。
仙門の廊下。
「・・・・・・。」
ソヌ(ムミョン)はスンミョン王女に礼をしました。
「アロは・・・妹は無事だ。今王宮に。」
「知ってます。感謝します。そして、すまない。私はあなたにふさわしい男ではない。」
「すまなく思って当然だ。私のような女人(にょにん)に冷たくするとは。」
「俺はいい男ではないが、あなたはいい女です。だからあなたを想ってくれる人と一緒になってくれ。」
ソヌ(ムミョン)は去りました。
スンミョン王女は涙を流しました。
王宮。
「茶?今茶と申したか?」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はキム・スホに聞き返しました。
「以前からです。すでに血を吐かれました。」
キム・スホは真興王(チヌンワン)に言いました。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はキム・スホとともに母の部屋に行くと、モヨンが淹れたばかりの茶を母から奪い、投げて割りました。
「パク・ヨンシルの指示か?このような支持をしたのは、パク・ヨンシルか?パオ!」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はモヨンの首に剣を突きつけました。モヨンは驚きました。
「何なりとお命じください。」
パオが部屋の中に馳せ参じました。
「すぐに殺せ。」
王はパオに命じました。
「お助けください!陛下。どうか陛下。命だけはお助けください!」
モヨンは懇願しました。
パオはモヨンの腕を引っ張って行きました。
「なぜですか。」
彡麦宗(サムメクチョン)は剣を捨てて床に崩れ落ちました。
「なぜだ。」
「毒と知りながら、なぜ拒まなかったのです。なぜ!!!」
「知った時には、既に手遅れだった。茶を拒んでも、奴らは他の手を使うはずだ。」
「逃げればよかったのです。太后(テフ)の座を、王座など捨てて、逃げればよかったのです。」
「逃げようとした。逃れたかった。だが・・・これが私の運命だ。守りたいものがあるのだ。強くなれ。それでこそ戦える。人の心など信じるな。王は、そうあるべきだ。」
只召太后(チソテフ)は息子に言うと、彡麦宗(サムメクチョン)は母の膝に顔を埋めて泣きました。
ある日。
風月主の服を来たキム・ウィファは嬉しそうに仙門の中を歩いていました。
回想シーン。
「風月主(プウォルチュ)として、仙門に戻れと?」
汚い身なりをしたキム・ウィファは彡麦宗(サムメクチョン)に言いました。
「そうだ。」
「つまり、太后(テフ)のご命令に逆らうのですか?」
「我が意は太后(テフ)の意。我が意は神国の意だ。」
キム・ウィファは思い出すと笑いました。
仙門の講堂。
「今日私がここにいるのは、お前たちが難題を与えられたと聞いたからだ。お前たちの選択が、新たな神国を築くことになると信じている。またそのような決断を下せるほどそなたたちは成長したはずだ。ある者はこれを謀反と呼び、またある者は責務と呼ぶやもしれぬ。選択するのはお前たちだ。この国の根本を変える花郎となるか、何も成しえぬ存在になるか選ぶのだ。そしてひとたび選んだら最期まで己を信じよ。お前たちは、花郎だ。己が花郎であることを、決して忘れてはならぬ。」
キム・ウィファは花郎徒(ファランド)たちに言いました。
ソヌ(ムミョン)もキム・ウィファの話を聴いていました。
王宮。
彡麦宗(サムメクチョン)はアロに会いました。
「何の御用ですか?」
源花(ウォナ)の服を着たアロは王に言いました。
「私は自分に問いながら生きて来ただと?諦めたことがないのは、私の目を見たらわかると?」
「はい。そう見えました。」
「それが誠なら幸いだ。お前の心は動いたことがないのに。私だけが揺らいでいるのだな。」
「・・・・・・。太后(テフ)殿下が本日譲位なさると聞きました。」
アロは目を伏せました。
「ああ。私は今日本当の王になる。今私のことを案じているのか?」
「王座とは孤独な座です。今以上に眠れなくなるのかと。」
「礼を言わねばならぬ。おかげで強くなれた。お前のおかげでここまで来られた。」
王と大臣らの会議室。
大臣らが王を待っていると、フィギョン公が現れパク・ヨンシルの右側に並びました。
花郎たちは正装して王宮に集まりました。
只召太后(チソテフ)が大臣らの前に現れ王座の隣に座りパク・ヨンシルを睨みました。
パク・ヨンシルとフィギョン公は目配せをしました。
「(頃合いよく来なければいいのに。)」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は白い絹に金の刺繍の服を着て太后(テフ)と大臣たちの前に現れ王座に座りました。
「我らがここに集まったのは、神国の・・・。」
キム・スホの父、キム・スプは言いかけました。
「待たれよ。ほんとうに、その座の主と思っていますか?我々の考えは違います。神国角干パク・ヨンシルは、聖骨(ソンゴル)であるフィギョン公の息子ソヌを、王に推挙します。」
パク・ヨンシルは言いました。
扉が開き、ソヌ(ムミョン)が花郎徒(ファランド)を率いて部屋に入って来ました。
「花郎徒(ファランド)は神国の新たな王を選びました。我々花郎徒(ファランド)は、神国を強くし民の意を酌み得る王様に、忠誠を誓います!」
キム・スホは言うと、ソヌ以外の花郎徒(ファランド)は皆傅きました。
只召太后(チソテフ)は動揺しました。
「花郎は!神国の民として!神国と神国の君主のため!忠誠を尽せ!真興陛下(チヌンンペーハー)、万歳(マンセー)!」
ソヌ(ムミョン)は大きな声で言うと剣を抜きました。
「真興陛下(チヌンンペーハー)、万歳(マンセー)!」
パク・パンリュを含む花郎徒(ファランド)たちは声を揃えて何度も言いました。
「陛下のお命を狙い謀反を企てたパク・ヨンシル!報いを受けよ!また、この者と同じ考えの者は前に出よ。花郎の剣が容赦せぬ!!!」
ソヌはパク・ヨンシルの首に剣を突きつけました。
パク・ヨンシルは首をうなだれました。
回想シーン。
ソヌ(ムミョン)は従弟の彡麦宗(サムメクチョン)の首に剣を突きつけました。
「お前とともに、この神国を変えたかった。身分制度により命が失われぬ世にしたかった。この狭き神国を出て三国統一の夢を描きたかった。」
彡麦宗(サムメクチョン)はソヌ(ムミョン)に言いました。
「お前の夢は、実現できるのか?」
「容易ではなかろう。だが何もせずにいるくらいなら、生きている意味がない。」
「もしも俺がお前の敵を排除したら、神国を変えられるか?」
「(これで王座はお前の物だ。思い通り国を変えろ。力の限りを尽くして。)」
ソヌ(ムミョン)は彡麦宗(サムメクチョン)に語り掛けました。
「(お前を失望させぬよう、最後までこの道を行くだろう。)」
彡麦宗(サムメクチョン)はソヌ(ムミョン)に語り掛けました。
ソヌ(ムミョン)は頷きました。
王宮の庭。
「私、神国の王、真興は、花郎徒(ファランド)とともに、民を第一に考え、強き神国の千年の計を立てる。」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は王剣を抜いて花郎徒(ファランド)に言いました。ソヌ(ムミョン)たち花郎徒(ファランド)は剣を掲げて王を称えました。
パオは感無量で涙しました。
只召太后(チソテフ)は誇らしげに息子を見ました。
王宮の池。
キム・ウィファは池の前に腰掛け思い出していました。
回想シーン。
「ならば、お前の考える王とはいかなる王だ。」
キム・ウィファはソヌ(ムミョン)に言いました。
「・・・民を楽しませ、苦難を引き受ける王。民は国を案ぜぬが・・・。」
ソヌは言いました。
回想シーン。
「君主は民を案ずる国を造る。それが私の考える王です。」
ジディはキム・ウィファに言いました。
「ふふふ。あいつらめ。」
キム・ウィファは二人の王子を慈しむと竿が折れました。
「確かに私は大物を釣り上げたようだな。」
王宮の一角。
「すみません。黙って事を起こして。」
ソヌはフィギョン公に謝りました。
「お前の選択を尊重しよう。お前が誇らしい。母もその姿を見たら喜ぶだろう。」
フィギョン公は息子に言いました。
真興王(チヌンワン)は従兄ソヌと過ごした日々を思い出しました。
「己の力で、ここまで来たのだな。手遅れにならず幸いだ。」
只召太后(チソテフ)は息子に言いました。
「これからは、私が背負います。神国という荷を。」
真興王(チヌンワン)は言いました。
「私がそなたを憎んでいたと思っていたのか?」
「私が、母上を憎んでいたと思っていましたか?分かっています。この神国と私を守るためだったと。私も守ります。母上とは違うやり方で。必ず。この神国を強き国にします。」
只召太后(チソテフ)は護衛のキム・スホとともに部屋に戻る途中で倒れました。
キム・アンジはキム・スホに容体を訪ねられ、死人と変わらぬと答えました。
「そなたに、話がある。」
キム・アンジが去ろうとすると只召太后(チソテフ)はキム・アンジの手を握りました。
キム・アンジは太后(テフ)の手を振りほどいて去ろうとしました。
「お傍にいてください。お願いです。」
二人の関係を察したキム・スホはキム・アンジを引き留め部屋の外で待ちました。
キム・スホの頬から一筋の涙が落ちました。
只召太后(チソテフ)はキム・アンジを見つめました。
「いっそ、あなたの手で殺してほしかった。以前、なぜ茶を飲むなと言わなかった。はあ。確かに、私を案じてくれた。忘れようとしたが、忘れられなかった。いくら努力しても、どうしても、あなたを離すことができなかった。」
「あなたを憎もうとした。殺そうともしました。ですが、できませんでした。」
「すまない。」
只召太后(チソテフ)は目を閉じました。
キム・アンジは目を潤ませて只召太后(チソテフ)の手を握りました。
アロのもとにパオが現れました。
「うまくいきましたか?」
「はい。陛下からこれを預かって来ました。」
パオはアロに書簡を渡しました。
ソヌもアロのもとへ駆け出しました。
ソヌ(ムミョン)はアロを抱きしめました。
「遅かったか?」
ソヌが言うとアロは首を横に振りました。
「これからは、一人にしない。約束だ。」
ソヌ(ムミョン)はアロに熱い口づけをしました。
ある日の多易書(タイソ)。
「こちらをご覧ください。王京(ワンギョン)の若君の情報が詰まった王京の貴公子調べ帳の第二巻です。どうします?説明を聞くには追加の銀塊が必要です。」
アロは副弟(プジェ)のミジンブを相手に商売をしていました。
「これで借金は完済ね。」
アロはミジンブから貰った金をピジュギに投げました。
「二人の貴公子の心を奪った伝説の女人(にょにん)なのに、以前と変わらぬようだな。」
「じゃあどう変わればいいの?」
「絹や金を身にまとい贅沢しても、よいのでは?」
「そうかしら?」
アロが言うとピジュギの養子となった元乞食の少年がアロに抱き着きました。
「待たせたわね。遊びましょ。」
「いつも私の子を。退屈なら恋愛しては?」
ピジュギは子どもを取り返しました。
「世話を頼んだのに。恋愛は一人じゃできないわ。一人にしない約束は?一人じゃ無理よ!」
アロは怒鳴りました。
スヨンの部屋。
「お父さまに気づかれるわ。」
スヨンはパク・パンリュを部屋に呼びました。
「こそこそ会うよりいっそ・・・。」
「養父である角干が落ちぶれてしまい、財産がないから反対されるのも当然よ。」
「ああ・・・。」
「その代わり、私の愛があるわ。」
スヨンはパク・パンリュに抱き着きました。
パク・パンリュは嬉しそうにスヨンを抱きしめました。その時扉が開き、スホとスヨンの父キム・スプが現れました。パク・パンリュは逃げ道を探しました。
王宮。
「昌太子(チャンテジャ)が?」
真興王(チヌンワン)はソヌ(ムミョン)に尋ねました。
「大伽耶(テガヤ)と連合して管山城を討つそうです。」
ソヌ(ムミョン)は王に言いました。
「今や用がある時しか会えぬな。」
「ここにいればいさかいに巻き込まれるだけだ。」
「お前が王になり解決すればいいのに。」
「本当に立派なお姿です。」
「ふざけたことを。半年ぶりにアロに会ったか?」
夜。
アロは寂しそうに庭に座っていました。
「文くらいよこしなさいよ。終わらせてやる!少しも惜しくないわ!」
すると背後からソヌ(ムミョン)がアロに抱き着きました。
「元気だったか?戻ったぞ。」
「物覚えが悪くて誰だか忘れたわ。」
「俺を忘れるわけがない。きれいだ。完璧だ。婚礼を挙げよう。俺はもう我慢できない。会いたかった。」
ソヌ(ムミョン)はアロに口づけして抱きました。
道を五人の若者(サムメクチョン、ソヌ、ヨウル、パンリュ、タンセ)が馬で走っていました。ソヌとジディは顔を見合わせました。
完。
「ソヌよ。礼を尽くせ。ソヌよ。礼を尽くせ!」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はソヌに命じました。
ソヌ(ムミョン)は動じませんでした。
「私は三日後に王位に就く。皆王室の親衛隊として王を守る花郎として王を守る花郎として務めを果たせ!」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は言いました。
「花郎は!自由だ。花郎は自ら動く時、神国の未来を思い描ける。聞いたことがあるはず・・・では?」
ソヌ(ムミョン)は言いました。
「今私に、反旗を翻すつもりか?」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は言いました。
「王を支えるかどうかは我々が決めることだ!!!選ばれる自信が、ないのですか?」
ソヌ(ムミョン)は言いました。
仙門の廊下。
「・・・・・・。」
ソヌ(ムミョン)はスンミョン王女に礼をしました。
「アロは・・・妹は無事だ。今王宮に。」
「知ってます。感謝します。そして、すまない。私はあなたにふさわしい男ではない。」
「すまなく思って当然だ。私のような女人(にょにん)に冷たくするとは。」
「俺はいい男ではないが、あなたはいい女です。だからあなたを想ってくれる人と一緒になってくれ。」
ソヌ(ムミョン)は去りました。
スンミョン王女は涙を流しました。
王宮。
「茶?今茶と申したか?」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はキム・スホに聞き返しました。
「以前からです。すでに血を吐かれました。」
キム・スホは真興王(チヌンワン)に言いました。
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はキム・スホとともに母の部屋に行くと、モヨンが淹れたばかりの茶を母から奪い、投げて割りました。
「パク・ヨンシルの指示か?このような支持をしたのは、パク・ヨンシルか?パオ!」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)はモヨンの首に剣を突きつけました。モヨンは驚きました。
「何なりとお命じください。」
パオが部屋の中に馳せ参じました。
「すぐに殺せ。」
王はパオに命じました。
「お助けください!陛下。どうか陛下。命だけはお助けください!」
モヨンは懇願しました。
パオはモヨンの腕を引っ張って行きました。
「なぜですか。」
彡麦宗(サムメクチョン)は剣を捨てて床に崩れ落ちました。
「なぜだ。」
「毒と知りながら、なぜ拒まなかったのです。なぜ!!!」
「知った時には、既に手遅れだった。茶を拒んでも、奴らは他の手を使うはずだ。」
「逃げればよかったのです。太后(テフ)の座を、王座など捨てて、逃げればよかったのです。」
「逃げようとした。逃れたかった。だが・・・これが私の運命だ。守りたいものがあるのだ。強くなれ。それでこそ戦える。人の心など信じるな。王は、そうあるべきだ。」
只召太后(チソテフ)は息子に言うと、彡麦宗(サムメクチョン)は母の膝に顔を埋めて泣きました。
ある日。
風月主の服を来たキム・ウィファは嬉しそうに仙門の中を歩いていました。
回想シーン。
「風月主(プウォルチュ)として、仙門に戻れと?」
汚い身なりをしたキム・ウィファは彡麦宗(サムメクチョン)に言いました。
「そうだ。」
「つまり、太后(テフ)のご命令に逆らうのですか?」
「我が意は太后(テフ)の意。我が意は神国の意だ。」
キム・ウィファは思い出すと笑いました。
仙門の講堂。
「今日私がここにいるのは、お前たちが難題を与えられたと聞いたからだ。お前たちの選択が、新たな神国を築くことになると信じている。またそのような決断を下せるほどそなたたちは成長したはずだ。ある者はこれを謀反と呼び、またある者は責務と呼ぶやもしれぬ。選択するのはお前たちだ。この国の根本を変える花郎となるか、何も成しえぬ存在になるか選ぶのだ。そしてひとたび選んだら最期まで己を信じよ。お前たちは、花郎だ。己が花郎であることを、決して忘れてはならぬ。」
キム・ウィファは花郎徒(ファランド)たちに言いました。
ソヌ(ムミョン)もキム・ウィファの話を聴いていました。
王宮。
彡麦宗(サムメクチョン)はアロに会いました。
「何の御用ですか?」
源花(ウォナ)の服を着たアロは王に言いました。
「私は自分に問いながら生きて来ただと?諦めたことがないのは、私の目を見たらわかると?」
「はい。そう見えました。」
「それが誠なら幸いだ。お前の心は動いたことがないのに。私だけが揺らいでいるのだな。」
「・・・・・・。太后(テフ)殿下が本日譲位なさると聞きました。」
アロは目を伏せました。
「ああ。私は今日本当の王になる。今私のことを案じているのか?」
「王座とは孤独な座です。今以上に眠れなくなるのかと。」
「礼を言わねばならぬ。おかげで強くなれた。お前のおかげでここまで来られた。」
王と大臣らの会議室。
大臣らが王を待っていると、フィギョン公が現れパク・ヨンシルの右側に並びました。
花郎たちは正装して王宮に集まりました。
只召太后(チソテフ)が大臣らの前に現れ王座の隣に座りパク・ヨンシルを睨みました。
パク・ヨンシルとフィギョン公は目配せをしました。
「(頃合いよく来なければいいのに。)」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は白い絹に金の刺繍の服を着て太后(テフ)と大臣たちの前に現れ王座に座りました。
「我らがここに集まったのは、神国の・・・。」
キム・スホの父、キム・スプは言いかけました。
「待たれよ。ほんとうに、その座の主と思っていますか?我々の考えは違います。神国角干パク・ヨンシルは、聖骨(ソンゴル)であるフィギョン公の息子ソヌを、王に推挙します。」
パク・ヨンシルは言いました。
扉が開き、ソヌ(ムミョン)が花郎徒(ファランド)を率いて部屋に入って来ました。
「花郎徒(ファランド)は神国の新たな王を選びました。我々花郎徒(ファランド)は、神国を強くし民の意を酌み得る王様に、忠誠を誓います!」
キム・スホは言うと、ソヌ以外の花郎徒(ファランド)は皆傅きました。
只召太后(チソテフ)は動揺しました。
「花郎は!神国の民として!神国と神国の君主のため!忠誠を尽せ!真興陛下(チヌンンペーハー)、万歳(マンセー)!」
ソヌ(ムミョン)は大きな声で言うと剣を抜きました。
「真興陛下(チヌンンペーハー)、万歳(マンセー)!」
パク・パンリュを含む花郎徒(ファランド)たちは声を揃えて何度も言いました。
「陛下のお命を狙い謀反を企てたパク・ヨンシル!報いを受けよ!また、この者と同じ考えの者は前に出よ。花郎の剣が容赦せぬ!!!」
ソヌはパク・ヨンシルの首に剣を突きつけました。
パク・ヨンシルは首をうなだれました。
回想シーン。
ソヌ(ムミョン)は従弟の彡麦宗(サムメクチョン)の首に剣を突きつけました。
「お前とともに、この神国を変えたかった。身分制度により命が失われぬ世にしたかった。この狭き神国を出て三国統一の夢を描きたかった。」
彡麦宗(サムメクチョン)はソヌ(ムミョン)に言いました。
「お前の夢は、実現できるのか?」
「容易ではなかろう。だが何もせずにいるくらいなら、生きている意味がない。」
「もしも俺がお前の敵を排除したら、神国を変えられるか?」
「(これで王座はお前の物だ。思い通り国を変えろ。力の限りを尽くして。)」
ソヌ(ムミョン)は彡麦宗(サムメクチョン)に語り掛けました。
「(お前を失望させぬよう、最後までこの道を行くだろう。)」
彡麦宗(サムメクチョン)はソヌ(ムミョン)に語り掛けました。
ソヌ(ムミョン)は頷きました。
王宮の庭。
「私、神国の王、真興は、花郎徒(ファランド)とともに、民を第一に考え、強き神国の千年の計を立てる。」
真興王(チヌンワン)彡麦宗(サムメクチョン)は王剣を抜いて花郎徒(ファランド)に言いました。ソヌ(ムミョン)たち花郎徒(ファランド)は剣を掲げて王を称えました。
パオは感無量で涙しました。
只召太后(チソテフ)は誇らしげに息子を見ました。
王宮の池。
キム・ウィファは池の前に腰掛け思い出していました。
回想シーン。
「ならば、お前の考える王とはいかなる王だ。」
キム・ウィファはソヌ(ムミョン)に言いました。
「・・・民を楽しませ、苦難を引き受ける王。民は国を案ぜぬが・・・。」
ソヌは言いました。
回想シーン。
「君主は民を案ずる国を造る。それが私の考える王です。」
ジディはキム・ウィファに言いました。
「ふふふ。あいつらめ。」
キム・ウィファは二人の王子を慈しむと竿が折れました。
「確かに私は大物を釣り上げたようだな。」
王宮の一角。
「すみません。黙って事を起こして。」
ソヌはフィギョン公に謝りました。
「お前の選択を尊重しよう。お前が誇らしい。母もその姿を見たら喜ぶだろう。」
フィギョン公は息子に言いました。
真興王(チヌンワン)は従兄ソヌと過ごした日々を思い出しました。
「己の力で、ここまで来たのだな。手遅れにならず幸いだ。」
只召太后(チソテフ)は息子に言いました。
「これからは、私が背負います。神国という荷を。」
真興王(チヌンワン)は言いました。
「私がそなたを憎んでいたと思っていたのか?」
「私が、母上を憎んでいたと思っていましたか?分かっています。この神国と私を守るためだったと。私も守ります。母上とは違うやり方で。必ず。この神国を強き国にします。」
只召太后(チソテフ)は護衛のキム・スホとともに部屋に戻る途中で倒れました。
キム・アンジはキム・スホに容体を訪ねられ、死人と変わらぬと答えました。
「そなたに、話がある。」
キム・アンジが去ろうとすると只召太后(チソテフ)はキム・アンジの手を握りました。
キム・アンジは太后(テフ)の手を振りほどいて去ろうとしました。
「お傍にいてください。お願いです。」
二人の関係を察したキム・スホはキム・アンジを引き留め部屋の外で待ちました。
キム・スホの頬から一筋の涙が落ちました。
只召太后(チソテフ)はキム・アンジを見つめました。
「いっそ、あなたの手で殺してほしかった。以前、なぜ茶を飲むなと言わなかった。はあ。確かに、私を案じてくれた。忘れようとしたが、忘れられなかった。いくら努力しても、どうしても、あなたを離すことができなかった。」
「あなたを憎もうとした。殺そうともしました。ですが、できませんでした。」
「すまない。」
只召太后(チソテフ)は目を閉じました。
キム・アンジは目を潤ませて只召太后(チソテフ)の手を握りました。
アロのもとにパオが現れました。
「うまくいきましたか?」
「はい。陛下からこれを預かって来ました。」
パオはアロに書簡を渡しました。
「私を恨んだか?お前を角干から守るため閉じ込めたのだ。お前に会えば離したくなくなりそうで書状をしたためた。行け。待たずに。あの者のもとへ。」アロはソヌのもとへ駆けだしました。
ソヌもアロのもとへ駆け出しました。
ソヌ(ムミョン)はアロを抱きしめました。
「遅かったか?」
ソヌが言うとアロは首を横に振りました。
「これからは、一人にしない。約束だ。」
ソヌ(ムミョン)はアロに熱い口づけをしました。
ある日の多易書(タイソ)。
「こちらをご覧ください。王京(ワンギョン)の若君の情報が詰まった王京の貴公子調べ帳の第二巻です。どうします?説明を聞くには追加の銀塊が必要です。」
アロは副弟(プジェ)のミジンブを相手に商売をしていました。
「これで借金は完済ね。」
アロはミジンブから貰った金をピジュギに投げました。
「二人の貴公子の心を奪った伝説の女人(にょにん)なのに、以前と変わらぬようだな。」
「じゃあどう変わればいいの?」
「絹や金を身にまとい贅沢しても、よいのでは?」
「そうかしら?」
アロが言うとピジュギの養子となった元乞食の少年がアロに抱き着きました。
「待たせたわね。遊びましょ。」
「いつも私の子を。退屈なら恋愛しては?」
ピジュギは子どもを取り返しました。
「世話を頼んだのに。恋愛は一人じゃできないわ。一人にしない約束は?一人じゃ無理よ!」
アロは怒鳴りました。
スヨンの部屋。
「お父さまに気づかれるわ。」
スヨンはパク・パンリュを部屋に呼びました。
「こそこそ会うよりいっそ・・・。」
「養父である角干が落ちぶれてしまい、財産がないから反対されるのも当然よ。」
「ああ・・・。」
「その代わり、私の愛があるわ。」
スヨンはパク・パンリュに抱き着きました。
パク・パンリュは嬉しそうにスヨンを抱きしめました。その時扉が開き、スホとスヨンの父キム・スプが現れました。パク・パンリュは逃げ道を探しました。
王宮。
「昌太子(チャンテジャ)が?」
真興王(チヌンワン)はソヌ(ムミョン)に尋ねました。
「大伽耶(テガヤ)と連合して管山城を討つそうです。」
ソヌ(ムミョン)は王に言いました。
「今や用がある時しか会えぬな。」
「ここにいればいさかいに巻き込まれるだけだ。」
「お前が王になり解決すればいいのに。」
「本当に立派なお姿です。」
「ふざけたことを。半年ぶりにアロに会ったか?」
夜。
アロは寂しそうに庭に座っていました。
「文くらいよこしなさいよ。終わらせてやる!少しも惜しくないわ!」
すると背後からソヌ(ムミョン)がアロに抱き着きました。
「元気だったか?戻ったぞ。」
「物覚えが悪くて誰だか忘れたわ。」
「俺を忘れるわけがない。きれいだ。完璧だ。婚礼を挙げよう。俺はもう我慢できない。会いたかった。」
ソヌ(ムミョン)はアロに口づけして抱きました。
道を五人の若者(サムメクチョン、ソヌ、ヨウル、パンリュ、タンセ)が馬で走っていました。ソヌとジディは顔を見合わせました。
完。
感想
花郎(ファラン)1話の最終回までの視聴感想です。韓国ドラマ「花郎(ファラン)」はたいへん面白かったです。ソヌ(ムミョン)やマンムン、ジディの登場人物の設定が謎であることがこのドラマを面白くしています。キム・アンジという真骨(チンゴル)の貴族が、どこから収入を得ているのかわかりませんが、無料で民に医療の世話をしてあげているという福祉活動家という設定も当時の時代にはあり得ない価値観なので現代的で面白かった。キム・アンジと只召太后(チソテフ)が過去に恋愛関係があって、キム・アンジは太后(テフ)が自分の妻と息子のマンムンを殺したことが憎くて、でも人として恨み切れないところに葛藤を抱えているところが人間らしくて、しかもまだ若いのにアロの父でイケメンで(笑)
ソヌ(ムミョン)の見た目はそれほどイケメンじゃないのに、身なりを整えると目つきの悪い貴公子になっているところや、パク・パンリュ(ト・ジハン演)はリアルではブサメンなのに花郎の姿になるとイケメンに見える不思議!キム・スホは見た目が本当に美形ですね。キム・スホを演じているのはチェ・ミンホという俳優さんです。ト・ジハンは成形してるのかな?昔とではずいぶんと目つきが違いますよね。ハンソンは本当にかわいい弟役といった感じで純粋な子どもを演じていました。タンセはハンソンとは逆でしっかりせざるを得ない立場で真面目にやってきたものの、異母弟を殺すという取返しのつかないことをしてしまいました。キム・スホは西洋の騎士みたいに忠誠心が厚く勇気があって太后(テフ)に恋までして、まるでマダムキラーという役割がぴったりでした。ジディは志を秘めたまま、力がないので逃げ隠れしながら生きている王になるには軟弱な男。人と比べると決して軟弱すぎるというわけじゃなく強いほうだけど、王族の汚さに立ち向かえるだけの知性も人を使う力もないまま王になりました。しかしソヌ(ムミョン)が花郎徒(ファランド)と郎徒を束ねて真興王(チヌンワン)の助けとなることで、真興王(チヌンワン)は若い力を得て反対派の首領が失脚することで政治がしやすくなったみたいですね。
さて、史実はどうなんでしょうか。真興王(チヌンワン)は叔明公主(異父妹)と結婚したそうですね。叔明公主(スンミョンコンジュ)は誰から生まれたのかというと、苔宗と只召太后(チソテフ)との間に生まれた娘なのです。つまり、只召太后(チソテフ)は苔宗と立宗という二人の聖骨(ソンゴル)の親戚と結婚というのか?とにかく結ばれたということです。ちなみにチソテフの夫の一人、立宗というのは、父の法興王の兄弟ですから、父方のおじさんと結ばれたということなんですよ!!!おえ~っ。その叔明公主(スンミョンコンジュ)は真興王(チヌンワン)の妻だけだったのか?というと、そうじゃなくて叔明公主(スンミョンコンジュ)もまた二花という貴公子との間に子をもうけて菩利という王子を産んでおりまする。真興王(チヌンワン)もまた思道皇后を皇后に迎えています。真興王(チヌンワン)の曾孫がキム・チュンチュという武烈王と善徳女王です。ミシル(美室)はミジンブの娘で何と真興王(チヌンワン)の孫と結ばれていますね。
新羅の王室の家系図はたいへんややこしい!そしてどんな恋愛していたの???と謎です!!!
ゴシップといえばですね、スンミョン王女が真興王(チヌンワン)の妃となる前から風月主の二花と通じ合っていて、結婚後も二花と宮中で通じていることから静粛太子の血統が疑われ、その後二花と結婚して、さらに四人の子をもうけたという経緯があるそうです。この二花という男はチソとも通じていたということですから、当時の交尾感覚は何でもアリだったことがわかります。
じゃあソヌ(ムミョン)は実在したのかどうかというと・・・そもそもフィギョン公というのが家系図に見当たりませんでした。チュンジョンというソヌの母ですが、おそらくは俊貞という源花(ウォナ)をモデルとしているようです。俊貞はライバルの源花(ウォナ)南毛公主を殺した女として歴史に残っています。この俊貞はパク・ヨンシル(朴英失)に仕えていたそうです。そのパク・ヨンシルの娘ですが、7歳の真興王(チヌンワン)と結婚した思道皇后なのですよ!!!ということはパク・ヨンシルは実際に失脚していないのでは???
そういうことで、新羅の王室はややこしいですね。
実はファランも実際に軍事組織であったというわけじゃないそうで軍隊とは別だったみたいです。私が思うに王侯貴族の息子たちは戦場に行かないように、このような花郎という戦場に行かない組織で政治家になる勉強をするやわめの学校みたいなものだったんじゃないかと思います。学習院みたいな感じかな。それものはず、有力者の跡継ぎに死んでもらってはパパが困りますからね。善徳女王の花郎のイメージは韓国でも定着しているそうですが、あれはねつ造された花郎像らしいです。
ファラン、面白かったですよ。
レビュー
面白さ:★★★★★
コミカル:★★★★★
爽快感:★★★★☆
胸キュン:★★☆☆☆
恋愛の難易度:★☆☆☆☆